第12話  生活の始まり


 業者さんが来てからは、ずっと忙しかった。


 朝から冷蔵庫、テレビ、タンス、クローゼット、洗濯機、電子レンジ、空気清浄機と、次から次へと物が運ばれては「どこそこに置いてください」とお願いしていた。


 今日、予定されていたものは家に届き、その全てが終わった晃輔たちが時計を見ると、もう少しで十九時を回るとこだった。



「疲れたー!」



 今日お願いしていた物が全て届き、ほとんど片付いたところで、あおいはソファに座ってぐったりしていた。


 どちらかというと、ソファに寝そべっているの方が正しい表情な気がした。



「「はぁ……」」



 晃輔とななも二人揃ってため息をつく。

 あおいはソファに、晃輔たちはリビングの椅子に座っている。


 

「やっと終わったな……」



 晃輔が疲れたように告げる。



「そうね……」



 それだけ言って、ななは黙ってしまった。


 ななとの会話がまともに続かない。ななも疲れているようだ。当然だとは思う。


 あれだけの量を一日で捌くのは、男の晃輔でも疲れるのだから。



「だねー!」



 そう言うあおいは、若干疲れているようだが、意外と元気そうだった。



「ありがとな、手伝ってくれて」


「全然大丈夫! 楽しかったから!」



 晃輔があおいに感謝を言うとあおいは、ぴょん、とソファから飛び上がる。



「まだまだ、あおいは元気そうね……」



 ななは、ソファーから飛び上がったあおいを見て、疲れたように呟いた。



「だな……」


 

 それは晃輔も同じことを思った。



「流石は女神様だな……」


「えへへ~、女神様なんて照れちゃうな〜」



 そう言って、あおいはベシベシと晃輔を叩く。


 あんまり痛くない、加減してくれてるな、とそんなことを思う晃輔。



「ようは、体力オバケって意味だよ」


「ええー!」



 バシッ!



 あおいは驚いたのか、よくわからないが、思いっきりと晃輔を叩いた。



「痛!」


「あ、ごめん! こー兄!」



 そう言って、あおいは自分が叩いた場所をさすってくる。



「いや、大丈夫だ……」


「今のは晃輔が悪いわね」


「そーだよ! いきなり」



 何故か、ななとあおいの二人から責められる事態となった。



「悪い……それより、あおい、お前は家に帰らなくていいのか?」



 晃輔は叩かれた痛みを我慢しつつ、無理やり話題を変える。


 このままだとめんどくさくなりそうな気がしたためだ。


 それに、これ以上あおいの帰りが遅くなると、ななとあおい二人の両親、千歳ちとせさんと晧平こうへいさんに心配をさせるし、流石にそんなことは無いとは思うが、もしかしたら、何か言われるとかは、晃輔的にはできれば避けたい。



「そうね。あおい、そろそろ帰りなさい」


「お姉ちゃんまで……でも……うん、そろそろ帰ったほうがいいのかも。あんまり遅いとお姉ちゃんたちの家に遊びに行けなくなっちゃうし……」



 時計を見て悲しそうな表情をしたあおいは、素直に帰りの支度を始める。



「また、いつでも来ていいから」



 なながあおいにそう告げる。



「ほんと?」


「あぁ」


「やったー!!」



 ぴょん、とジャンプをするあおい。まるで、犬みたいな喜びの方だなと思う。


 今はまだ、下の部屋には人がいないからいいけど、下に人が住み始めたら近所迷惑になりそうだ。


 あおいはパッパと支度を終わらせて玄関の方へ向かう。



「じゃあね! お姉ちゃん! こー兄!」


「あぁ」


「気を付けて」



 あおいの姿が見えなくなるのを確認してから、玄関の扉を閉める。



「じゃあ、改めてよろしくな」


「ええ、こちらこそよろしくね」



 こうして家電類も揃ったので、本格的に晃輔たちの生活が始まったのだった。


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