第2章 修行編19 ボス戦、勝利アイテムゲット
高見「天川、今日はここまでにしとくわ」
そう言って全身の力を抜く。
京一「え?」
あまりにあっさりと宣言されたため拍子抜けしてしまう。
高見「お前も、あの二人も、あと、フェンス外の琴野も解放すっから、お前らもう今日は帰っていいぞ」
淡々と告げる。
芳「え、高見さんいいんすか? アイツらこのまま逃がしても」
するとオシャレ坊主に刈り込んだ芳が反応した。
まさか獲物を何事もなくこのまま解放するとは思わなかったのだ。
高見「ああ、解放していい」
高見はそう言いながらシャツを再び着る。
それから京一に向き直ると、こう告げた。
高見「天川、お前、明日も夕方になったらここに来いよ」
それから、ポケットの中からなにやら黒いものを取り出し、京一に投げ渡した。
シャッ!
投げる瞬間、金属の擦れる音がした。
何か黒い物体が緩やかな軌道で手元に伸びてくる。
京一はそれを受け取った。
ジャッ!
ズシリとする感覚。
そして冷たい感触。
それらが手の平に広がる。
京一「……え?」
アルマイト加工でツヤ消しされたソレは、長さ10cm、幅3cmくらいの軽量金属製の物体だった。
グリップのようなものに挟まれて、その間に鈍く光る銀色の鏡面が見える。
何だろう?
不思議そうに眺めている京一に、高見が答えを告げる。
高見「グリップの部分を開いてみろ」
京一「あ、はい」
言われるがままに、黒いグリップを開く。
パカリ。
するとそれは二つに割れて、クルリと180度回転した。
ギラリ。
内側中央から光る何かが出現した。
京一「っ!」
それを見た瞬間、京一はギョッとした。
グリップの内側から現れたモノは、銀色に輝くナイフであった。
それが上空の青空に反射して青く輝いている。
高見「バタフライナイフだ。お前にやるよ。持っとけ」
そう告げると高見は踵を返す。
京一「……」
手元のバタフライナイフをまじまじと見つめる。
なぜそんなモノを投げ渡されたのだろう?
理由が全く分からない。
先ほどまでの勝負で火照った身体が、急速に冷めてゆく。
まるで手元のナイフに体温を奪われていくようだ。
京一「あの……明日もここに来いってことは、また勝負ですか? その……」
高見「もうアイツを賭けろなんて言わねーよ」
そう言ってフェンスの外で心配そうな顔をしている蓮華を指差す。
京一「あ……そうですか」
その言葉を受けて京一はホッとする。
良かった。
これで蓮華も卓球部の二人も解放してもらえる。
なんとかやり過ごせた。
でも自分はどうなのか?
明日もこの場所に来いということは、再び何かを賭けた勝負をやらされるってことだ。
元々コーチにそう指示されているし、3on3をやること自体に問題はない。
だが高見という不気味な男の意図を図りかねる京一は、心の中の不安が拭えない。
京一「……」
再び手元のナイフに視線を落とす。
高見「心配するな。もうお前を狩ったりしない。単純に今日の1 on 1が面白かった。またやろーぜ、ここで」
そう告げると、高見は京一に背を向けこの場を去ってゆく。
高見「おい、お前ら今日はもう帰るぞ。腹減ったからCAGE(クラブの名前)で涼子に飯食わせてもらう。芳、隣でひっくり返っている竜二を起こして伸悦と後からCAGEへ来い」
芳「あ、はい。高見さん」
あっけにとられたままの芳はそう返事することが精いっぱいだった。
高見「おい伸悦。お前さっきからあのガキずっと見てるけどその辺にしとけ。アイツにだけは手をだすなよ」
伸悦「……はい」
返事に覇気がない。
フンと鼻で笑うとこう告げた。
高見「手遅れだな、お前は」
☆-----☆-----☆-----☆-----
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます