ただただ前向きに踊る弱者男性

エリー.ファー

ただただ前向きに踊る弱者男性

 私は弱者男性です。

 自他ともに認める弱者男性です。

 本当に、強者女性に殴られながら生きています。

 もちろん、比喩です。

 物理的に殴られたことはありません。

 でも、殴られるより痛い感じがあります。

 不思議です。

 自分の人権がまともに機能しているのか疑問です。

 しかし、誰も同情しません。

 何故でしょうか。

 私が何かしたのでしょうか。

 社会の中で、自分なりに必死に生きて来ただけなのに、ある日、急に社会の中に弱者男性というラインが引かれ、それより後ろだと、勝手に弱者男性だとレッテルを貼られる。

 怖い話です。

 恐ろしい話です。

 しかし。

 不思議なのです。

 なんだか、慣れてきました。

 というか。

 言葉で、何か伝えられる、ということはあるのでしょうが。

 それ以外の実害が特にないのです。

 別に、お金は稼げるし。

 料理はおいしいし。

 趣味の散歩はできるし。

 電車の定期代が、弱者男性は高くなる、といったこともありません。

 何か不都合があるか。

 特にないのです。

 おそらく、それが一番の問題なのだろうと思うのですが。

 でも、別に構わないのです。

 実際、弱者男性同士のコミュニティもありますし、そこでは、色々と話せます。

 世知辛いとか。

 冷たい目で見られることもあるとか。

 でも、それが、本当に私の心を傷ものにするか、と問われると疑問なのです。

 別に平気なのです。

 心が強いわけではないでしょう。

 昔、鬱病だったし、今も鬱病のような感じがあります。

 トラウマもありますし、たまに思い出して非常に辛くなることもあります。

 でも、大丈夫なのです。

 まぁ、自殺してしまった方とは話せないので、これが、問題として社会的にみて大きなものなのか、小さなものなのかは分かりません。

 でも、いいような気がします。

 生きているし。

 弱者男性は、弱者を喉に詰まらせて死ぬわけではありませんし。

 ただ、余り、強い言葉を使って、私たちを攻撃して欲しくはありません。

 その願いだけは確かに存在しているのです。

 私は、今、私のことを知ろうとしています。

 そして、結果として、私たちを弱者男性と呼ぶ、人たちのことを考えることがあります。

 おそらく、その人たちも、日々のストレスを抱えているのでしょう。

 その時に、自分たちなりの正義を抱えて、誰かに八つ当たりをしたいのではないでしょうか。

 きっと、それが、弱者男性という言葉だったのだろうと思います。

 そう考えると、とても心が澄んでいく気がします。

 というのは。

 ほとんどの人がそうだからです。

 出来る限り、自分よりもレベルの低そうな人間、事象、社会の穴、等々。

 そういうものを見つけて安心したがる。

 生物の根源的な欲求と言えるのかもしれません。

 私には、私の作り出した世界があるので、弱者男性という言葉によって簡単に崩壊することはありませんが。

 おそらく。

 おそらく、ですよ。

 おそらく、なんですが。

 私たちを攻撃する人たちは、自分なりの確固たる世界を持っていなかったのではないでしょうか。何かを言われて、割と簡単に傷ついてしまうような人たちで、自分たちが傷ついた方法で、他者を傷つけにかかっているのではないでしょうか。

 自分たちの防御力の低さを、体力の低さを誤魔化す方法が、他者への攻撃であった、ということなのではないでしょうか。

 弱者男性としての視点が、社会に役立つ日が来るとは思えませんが。

 それでも、ここに私の言葉を遺します。

 私は、自殺してしまうかもしれません。

 もしかしたら、天寿を全うするかもしれません。

 弱者女性と話をしてみたら、彼女たちと話が合うかもしれません。

 お互いにとっての、都合の良い存在で居続けるために、何か道を探るかもしれません。

 奏でられた言葉によってでしか、打ち合わされた態度でしか、叩きつけられた社会的な役割でしか、見えない世界もあるのかもしれません。

 そして。

 もしかしたら。

 幸福にも。

 不幸にも。

 私が強者男性になってしまう日が来るのかもしれません。

 その時。

 私はこの時の思いを持って生きることができるのでしょうか。

 いや。

 無理でしょう。

 私は綺麗さっぱり忘れて、誰かを傷つけるでしょう。

 きっと、弱者女性から強者女性になった方も同じでしょう。

 そうですね。

 そうに決まっています。

 だって、強さの正体は弱さへの無理解ですから。






 女性の自殺者数が三年連続で増加しているそうである。

 他意はない。

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