第5話 成仏するまで

『いやあ……君は凄い男の子と付き合っていたんだね……あんなかわいい子たちに加え、お嬢様にまで好かれている男の子と……』


『そうっすね……つか、私はもう何で彼に好かれてたのかが、今になってよく分かんなくなってきました……』



 引き攣った顔で笑っている隣の幽霊のおじさんに私も項垂れながらそう言うしかなかった。

 妹。学園一の優等生。超絶お嬢様。ツンデレ幼馴染。なんで、この四人が同時に私の彼氏を寝取る宣言してるの!?



『嫌だなぁ……せめて成仏してからにして欲しいなぁ……していない間に、イチャイチャされたり……ましてや結婚とか……子供を見せにくるとか、そういうことあるかなぁ!?』


『あ~、あると思うよ? 成仏は個人差があるみたいで私もなんとも言えないけど、ほら、向こうのお爺さんは娘が結婚の報告に来たり、孫を連れてきたりとかってあるみたいだよ?』


『うおおおお、嫌だぁぁぁぁぁあ! そんなの耐えられないよぉぉぉぉお! なんとかできないのぉ!?』



 既に死んでいる私に何もできないし、リューマくんの幸せを考えたらってのもあるけど、心がどうしても許せないんだもん。

 何とかできないかな……せめて私が成仏するまで……リューマくんには私を好きなままで……


『なんとかか……まぁ、成仏するまでの間……』

『え!? 何かあるんですか!?』

『わわ、お、落ち着いて。いや、あまり……その……おすすめはしないんだけど……』


 そのとき、私は幽霊のおじさんの言葉に反応して、勢いよく詰め寄ってた。


『私たちは死んでしまっているので、この世の物とか人に干渉はできない……でも、『エクトプラズム』という魔法の一種で……ほんの一瞬だけ現実に干渉できるみたいなんだ』

『え……そんなことが!?』

『ああ。それでたまに肝試しにくる人とかを驚かしたりとか……かわいい女の子のスカートをめく……色々とあって、それで……』

『つまり、それをうまく使えば、皆の邪魔できたり怖がらせたり……うらめしや~! っていうのもできる!?』

『あんまり頻繁にはできないみたいだけどね……』

『よーし! そういうことなら、さっそく邪魔してくる! うおおおおおおおお、彼氏をまだ寝取られてたまるかぁぁぁぁあ!』


 なんと、幽霊にそんな力が……っていうか、幽霊の目撃情報とかひょっとしてそういう……まぁ、いいや。

 どうせ死んじゃってる私にできることなんて限られているし、死んだんだし、自分の気持ちに忠実に死後のライフを送ってやるんだから!

 そう心に決めて私は墓場から飛び出して……


『っていうか、墓場から幽霊って出れたんだ……なら、これからはリューマくんの家に侵入できたり、部屋も、お風呂も……のぞき放題!? でへ、でへへへへ』


 あれ? なんか少し楽しくなってきたような……ん? いや!

 目的を忘れちゃダメだ。

 何故なら、私の彼氏を寝取ろうとするメギツネたちを見つけたからだ!


「えっと、あの……どうしたのだ、みんな」


 うおおおおい、困った顔している私の彼氏を取り囲んで……


「ちょっと、いい加減にしてください。先輩は傷ついているんです。今は姉さんの妹として私が……姉さんに託されたのは私です!」

「何を言っているの? 親友の私が託されたのよ?」

「あら? 好敵手たるワタクシですわ」

「なんなのこいつら、キモ……リューマ、ほら、さっさと行くわよ」


 この野郎、覚悟しろ!

 どさくさに紛れて四方向からリューマくんにくっついて、密着したり、おっぱい当てたり、四人密着して……四密は許さないから!



『くらぇぇぇえ! よくわかんないけど、えくとぷらずま~~~~!』


「「「「ッッッ!!??」」」」


「えっ、あっ!?」



 そのとき……私の放った何かしらはイタズラな風となって、三人のスカートを捲って……妹ピンク!? 親友白!? お嬢紐!? 幼馴染縞々

 

『あああああ、違う違う! こんなラッキーエッチな風……うわ、リューマくんが顔を背け……いや、これでいいのかな? これで四人が、今の見た? エッチ! 変態! もう知らない! なんて四人が怒れば……』


 すると、スカートを抑えた四人は顔を赤らめながら……


「ふふ……先輩に見られちゃいました♡」

「んもう、リューマくん……見たわね♡」

「おほほほ、見ましたわね♡」

「ばか、へんたい、ムッツリ……キモ!」


 こいつらなんか誘惑できた?! 的なことを……このビッチどもめぇ! 私の感動を返せええ!



「ちが、今のは……その……」


「んもう、先輩ったら……でも、いいです。先輩なら……。ふふ、さぁ、学校へ行きましょう?」


「ほら、行くわよ。別に怒ってないし、気にしてないし……こんなのであなたが少しでも気がまぎれるなら……これからいくらでも……」


「ふふん、責任……取ってもらいますわよ?」


「学校なんか無理して行かないで、今日ぐらいサボるわよ、リューマ」



 そして、もはや私の気持ちなんて一切分からない四人は、私の彼氏と一緒に登校しようとしている。

 その瞬間、私の中で成仏するまでにやることが決まった。



『幸せになるのは……もうちょっと待っててね、リューマくん……私がまだ成仏しない間は……彼女なんて作らせないんだから! 勝負だよ、ニア! 麗音ちゃん! お嬢ッ! 梨姫ちゃん!』



 大好きな彼氏を寝取られないように、怨霊となって邪魔しちゃうんだから!


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