第4話 テンプレよ
「それでは、ごめんあそばせ」
「なんか、そんな漫画みたいなこと言うお嬢様っていんのね……それじゃ」
お嬢と入れ替わるように梨姫ちゃんが来てくれた。
正直、梨姫ちゃんは私たちと違う学校だし、そもそもリューマ君繋がりで知り合った女の子だから、まだお嬢たちに正式に紹介してない。
だから、私やリューマ君のいないところで、お嬢と梨姫ちゃんが僅かでも会話しているところを見ることになるとはね。
と言っても、互いに友達というわけでもないし、何か盛り上がって話をするような場面でも場所でもないから、最低限の会話だけしてお嬢は行っちゃった。
そして梨姫ちゃんは……
「なんか、随分とお花やらお菓子やら……高坂……あんたって人気者なのね……じゃあ、私なんかがお花なんか持ってこなくても良かった? っていうか、あんたって花より団子みたいなキャラだったし、ぶっちゃけもらっても嬉しくないか……」
と、言いながらもちゃんと綺麗なお花を供えてくれる梨姫ちゃん。
「……リューマの奴も来たんでしょうね……しばらく引きこもって泣いてりゃいいのに……無理して……で、自分は大丈夫アピールしようと無理して笑ってんでしょうね……キモ……ほんっと、そういうところが昔からムカつく……物わかりの良い大人ぶって……」
梨姫ちゃんは幼馴染で、一緒の空手道場にも通ったりしていたみたい。
美人だけど、梨姫ちゃんはけっこう口調も強くて性格も厳しく、特にリューマ君には容赦がない。
だから、私がリューマ君の彼女になって、初めて彼女と会った時とか、メッチャコワかった……だけど……
「……物分かりがいい……と思ってたのに、初めてだった。あの堅物野郎が……病院であんたに……もうどうしようもないっていうのに、『逝くな』って……縋りついて……十年以上の付き合いで初めてよ……あんなあいつを見たのは……」
だけど、私には分かってる。
「正直、あんたのことは私はあいつの彼女として全然認めてないし、イビリ散らかしてやろうとか、別れさせてやろうとか思ったりしたけど……ッ……でも、なんかあんたとは趣味でフツーに仲良くなっちゃって……リューマ関係なしで友達としてなら認めてやろうと思って……楽しくて……」
この子、本当は純粋で……
「夏コミ……一緒に『合わせ』しようって……約束破ってんじゃないっつーの……私さ……けっこー……ううん……すごく……楽しみにしてた……完璧なコスできるようにトレーニングして……あんたの分のトレーニングメニューも作ろうと色々考えて……一緒に衣装代稼ぐためにバイトとか……私も初めてだった……学校の友達にも教えてない私の趣味……笑うどころか一緒に楽しもうって……そんなふうに接してくれた……友達は……」
友達思いで……
「だからって、急に私にあいつを託すとか勝手に言って逝ってんじゃないわよ! べ、別に私はあいつのこと好きでも何でもない、た、ただの腐れ縁よ。あんな面白みのない融通の利かない堅物天然空回り野郎なんて、そ、そりゃ、一途で真っすぐで意志が強くて、昔から変わらなくて、そりゃぁ私のパパもママも昔からリューマと私を結婚とか言って、ま、パパとママが言うから仕方なくだったし……でも、私はそんな気は全然なくて――――」
そして、こいつはただのツンデレ女! そう、まさにツンデレ幼馴染なのだよ!
いやさ、リューマ君のことをずっと好きで素直になれなくて、だから彼女の私を最初は超敵視してたんだよね。
ことあるごとに幼馴染思い出マウント取ろうとしてきたり、家族公認アピールしようとしたりと。
ただ、リューマ君はそういう自分に向けられる恋心には非常に鈍ちんというまさにツンデレ幼馴染ヒロイン泣かせの男の子だったことで、その気持ちはリューマ君にはまったく伝わってなかったり、なによりもソレはソレとしてとある事情で私は梨姫ちゃんとはフツーに友達になったわけだけど……
「とにかく、まあ安心しなさいよ。友達のあんたに言われたんだから仕方ないわ……あいつは私に任せなさいよ。ほんとは嫌だけど、仕方なくなんだからね」
このもはや太古の異物とかしたツンデレ幼馴染ヒロインまでもが私の遺言を勝手に解釈しおって!!!!
「じゃあ、見守ってよね……高坂……」
いやさ、かわいんだけどさ、もっと素直に開き直れば絶対にヒロインレース勝てたと思うし、私じゃ勝てなかったと思うんだけど、でもさ、でもさ、ちょっとその展開は早くね!?
「さてと……あいつ、今日は道場には……来ないかもね。じゃあ、あいつの家にご飯でも作りに行って……ああ、でも今週は大会に備えて……いや、大会なんか……って、ダメよね。あいつはそういうのを気にするわけだから……今は一人で落ち着く時間も必要だろうし、少し間を置いて、その間にサクッと優勝して……」
いずれにせよ、なんか私が死んだら負けヒロインたちが立ち上がりやがったんだが、マジでどうしよう?
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