通行禁止

天川裕司

通行禁止

タイトル:通行禁止


ある日の仕事帰り。

いつものように帰り道を歩いていると、

「あれ?…あそうなんだ」

歩道橋横の道が通行禁止に。


いつもそこを通って帰るのだが、

通行禁止になっていたので

その横にある歩道橋を渡り、

向こうの道から少し大回りして

帰らねばならないことになってしまった。


「う〜めんどくさいなぁ」

なんて思いながら仕方なく、

とりあえず歩道橋の階段を上って行くと、

前に1人女の人が歩いている。


この人も多分私と同じように

歩道橋横の道を歩こうとして

通行禁止だったので、

歩道橋から向こうに渡ろうと

してるんだろうなぁ…

なんて思いながらその人についていく形で

歩いて行くと…


「えっ?!な、なにこれ?」

歩道橋の途中から向こうの道が無い。


「……は…はあ?」

となったが、前を歩いてる女の人はそのまま

道の無い歩道橋を向こうに渡ってゆく。


「ど、どうやって歩いてるの…」

ちゃんと見ると…いやどう見てもその人は

空中を歩いてるようにしか見えない。


「ちょ…ちょっと待ってよ…!」

急いで引き返そうとした時、

すでに後ろから

何人もの男女がついて来ており、

全く気付かなかった私は急いで

その男女をかき分けようとしたのだが…


男女「…行こうよ、向こうに行こうよ…」

男女「早く…早く歩いてよ…」

と私を前へ前へと押しやろうとして来る。


「や…やめて!やめてよぉ!!」

そこで私は本当に恐怖して

何とかこの人混みを抜け、

元の日常へ戻ろうとした。

でも力が強く、なかなか戻れなかった私は、

どうしようもなくなり

歩道橋の上から身投げする形に…


「キャアァア…!!」

雷鳴のように空耳のような

ものすごい声が

私の周りで響いたかと思えば…


プアーン!…

「……え?…あたし…」

私は歩道橋の前に立って居る。

「……確か、あそこから私、落ちて…」

そう思って歩道橋を見上げたが

さっきまでの壮絶なものは何も無い。


ふと後ろを振り返ると、

「……あれ…?」

さっきまで居た警備員が居ない。

確かにさっきまで、

赤く灯った誘導棒を振って

そこに居たのに。


これは数日前の事だったが、

もしあのまま行ってたら…


それにあの道は…あの警備員は…

私の後ろから知らずうちに

ついて来ていたあの多勢の男女は…

一体何だったの?


日常でも、知らずうちに変な世界に

紛れ込むことって確かにあるんだ…

とその時思った。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=cHKPJAgvScw

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通行禁止 天川裕司 @tenkawayuji

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