第10話 停学処分
「なんだよいきなり呼び出しなんて」
堂本は苛立ちを覚えた態度を露にしながら校内放送で指定された会議室に向かう。制服のズボンのポケットに両手を突っ込みながら堂々とした態度で廊下を進む。
しばらく廊下を真っ直ぐ進むと、堂本は会議室前に到着する。
「なんですか~? いきなり呼び出しなんて」
堂本は非常識にもノックをせずにだるそうに頭を掻きながら会議室に入る。
「…大事な話がある。だから呼び出した」
会議室内には堂本の担任が険しい表情で席に座っていた。
「それがなんなんですか? 俺、別に悪いことなんてしてないですよ? 」
「ほぅ? ならこれは何だ? 」
堂本の担任(裕斗の担任でもある)はクリアファイルに入った2枚の写真を取り出す。
「え…。は!? 」
堂本は担任が見えるように机に並べた写真達を目にし、驚きの声を漏らす。
「お前がアルバイトとして働く飲食店から連絡があって提供された情報だ。お前はアルバイト先の賄いのルールを破るだけでなく、喫煙もしているようにこの画像から見えるが、どうなんだ? 」
「えっと。これは…」
堂本は急な自身の悪行の収められた写真に動揺を隠せない。正当な理由を口にしようとするが、すぐに途切れてしまう。そして最終的に下を向いてしまう。
「これは決定的な証拠だ。おそらく今日中に連絡が来ると思うが。店のアルバイト先の解雇は避けられないだろう。それと学校内の処分ももちろん存在する。流石に未成年での喫煙は学校としても見逃せん。そのため、お前は1ケ月間の停学処分だ」
担任は厳しい口調で堂本に処分を告げる。
「っ!? バカな!! まだ俺がやったなんて認めないはずだ! それなのに停学処分はおかしくないか? 」
堂本は担任からの処分に納得がいかず、声を荒げて反論する。
「これは私の判断ではない。校長先生と話し合った結果での処分だ。今回は甘い処分だ。未成年で喫煙して退学にならなかっただけでもマシだと思え。とにかく、お前は今から帰れ。さっさと教室で帰りの支度を始めろ」
「くっ」
堂本は担任の迫力に圧倒される。
そして、担任に全く相手にされなかったため、観念して怒りをぶつけるように雑に会議室のドアを閉めて自身のクラスの教室へと向かった。
☆☆☆
「堂本君どうしたんだろう? 」
「なんか変だよね? 急に帰る準備なんか始めて」
クラスメイト達が会議室から帰還して帰りの支度に着手する堂本に視線を注ぐ。
一方、堂本はクラスメイト達の視線を集中的に受け、イライラした様子で舌打ちをしながら学生カバンに教科書やノートを仕舞う。
堂本は教室から逃げるように高速で帰りの支度や終える。未だにクラスメイト達からの疑うような視線は途絶えない。
堂本は勢いよく立ち上がり、雑にイスを机に仕舞うと逃げるように走って教室を後にした。
(よし! よし! 実に滑稽だ)
一方、堂本の一部始終を知っており見ていた裕斗は嬉しそうに笑いを抑えながら、彼の背中が見えなくなるまで視線を向け続けた。
堂本を見下しつつ、嘲笑うかのように。
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