第6話 店舗近くでタバコ

「やばっ! まさか店舗の事務所に忘れ物するなんて」


 裕斗はバタバタと走りながら、自宅から職場の飲食店に向かう。


 時刻は21時。


 裕斗が仕事を終えてから、すでに3時間が経過している。


「ん? 」


 店の裏側から事務所に入ろうとすると、人気のない狭い場所から細い煙が上がっているのが裕斗の目に入る。


(ん? なんだ?)


 裕斗は近くの壁に隠れ、怪訝そうな顔で視線を向ける。


(え!? は!?)


 裕斗の目に衝撃的な光景が映った。


「いやぁ〜、タバコうめぇなぁ〜」


 なんと堂本が事務所の外で、美味しそうにタバコを吸っている。


(堂本は俺と同級生だよな。ってことは17歳。未成年で喫煙している……そういうことだよな?)


 裕斗は堂本が気分よくタバコを吸う姿を目に留めながら、思考を巡らせる。


(ちょっと待て!? これは奴の悪行を証拠に収めるチャンスなんじゃないか?)


 裕斗は1つの閃きが頭に浮かび、ズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。


(この堂本が喫煙している姿を証拠として収めれば、かなりでかい。これでおそらく奴を追い詰めて復讐できる)


 裕斗は勝手に脳内で堂本に対する復讐の妄想を膨らませながら、ワクワクと興奮を感じる。


(堂本にバレたら元も子もない。素早く写真に収めないと)


 裕斗はスマートフォンのカメラ機能を起動し、シャッター音が鳴らないように設定する。


 そして、音を立てずに静かにスマートフォンを堂本に向けた。


 堂本は未だに美味しそうにタバコを吸っている。喫煙に集中しており、裕斗に気づく様子はない。


(よし! 今だ!!)


 裕斗はスマートフォンのカメラのシャッターボタンを押した。


 スマートフォンはシャッター音を立てずに写真を撮影する。


(ど、どうだ? しっかり撮れてるか?)


 裕斗はドキドキしながらスマートフォンのアルバムを開き、先ほど撮った写真を確認する。


 結果として、無事に堂本が喫煙している姿は画像として裕斗のスマートフォンに保存されていた。


(よし! よし!! やったぞ!! これで俺の復讐は完成だ!!)


 裕斗は思わずスマートフォンの画面を見つめながら、ガッツポーズをした。それほど喜びをこの瞬間に得た。


(あとは、忘れ物を事務所から回収して終了だ。はぁ〜、今日はなんて良い日なんだ〜)


 裕斗は最近では味わえなかった最高の気分を感じながら、事務所に通じるドアを開けた。


「すいません。お疲れ様で〜す!」


 普段よりも元気で明るい裕斗の声が職場の厨房に響き渡った。

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