第10話



 …それ以外って何よ



 「護衛」に関すること以外…?



 大体ね、誘拐なんて起きるはずがないの。


 ここ、宮崎だよ?


 み・や・ざ・き。


 ここら辺にそんな大層な犯罪を犯す奴なんていない。


 誘拐をするつもりなら、とっくにされてるっての。


 誰が誘拐する前に「誘拐する」なんて言うの?


 ご丁寧すぎるでしょ。



 「確かに一理あるな。だが、俺にとっては誘拐されるかどうかは問題ではない。“雇われているかどうか”だ。雇われている以上、契約の内容に従い、キミを護ることに徹する」


 「だーかーらッ!」



 護る必要なんてないんだってば。


 私の言ってること理解できてないの!?


 窓の外見てみなよ。


 あの青い海。


 閑散とした町並み。


 あんな長閑な田園風景の中に、“誘拐犯”なんていると思う?


 誰が見たって、ここが平和な町だってわかるよ。


 万引きだって、滅多なことじゃ起こんないんだから。



 「心配するな。迷惑はかけない」


 「いや、すでに迷惑なんだけど??」


 「どこがだ?後ろに座っているだけだが」


 「それが“目障り”なの」


 「ほう。では、前を向いていた方がいいのではないか?」


 「あのね、そういう問題じゃなくて」


 「では、具体的には?」


 「具体的にぃ!?あんたが近くにいること自体目障りだって言ってんのよ!」


 「具体性に欠けるな。心配しなくても、俺はキミの学校生活を邪魔したりはしない。あくまで護衛に徹するだけだ。…ふむ、そうだな。俺のことは「防弾チョッキ」だと思ってくれればいい。そうすれば、いちいち気に触ることもないだろう」



 例えがややこしすぎんのよ。


 防弾チョッキ!?


 そんなもん、一生着ることないっつーの。




 

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