第5話


 「絶対動かないから」


 「…そうか、それは仕方がない」


 「仕方がないじゃなくて、そこはみんなの邪魔になるでしょーが」


 「それについてはなんとかしよう。それより、キミは女子高生なのだろう?」


 「そうだけど…?」


 「もう少し言葉遣いはなんとかならないのか?俺の知る限りでは、もう少しお淑やかな性格だと聞いていたが」



 転校初日に席替え要求してくる非常識野郎にだけは、言われたくない。


 ってか、私のこと知ってんの?


 ますます怖いんだけど



 「とにかく、あんたの思い通りにはさせない」


 「キミは一介の生徒だろう。そんな権限はないと思うが」


 「そのセリフをそっくりそのまま返すよ。なんでヨシキが言うこと聞いてんのか知らないけど、あんたに席を変える権限はない」


 「だが現に、前の生徒は移動してくれているぞ?」


 「…それについてはあとでヨシキと話す。私の後ろに座らないで?言いたいことはそれだけ」


 「断る」


 「はあ!?」


 「俺がなぜこの学校に転校してきたか。それはキミを護るためだ」


 「は!??」


 「説明はあとでする。とにかく今は、先生の言うことを聞いてくれないか?」



 …私を、…護る?


 何言ってんの?


 護るって、一体何から…?


 っていうかなんで?



 唐突に言われたその言葉は、思い当たる節のない非日常的な言葉だった。


 睨み合いを続ける私たちをよそに、チャイムの音が鳴る。


 ヨシキは何事もなかったかのように教室を後にしていった。


 担任の風上にも置けない奴だな…


 校長に何言われてるのか知らないが、この状況を放置してどっか行くなよ。


 彼は憮然としたままだった。


 表情ひとつさえ変えず、まっすぐ見つめ返してくる。



 状況に納得がいかなかった私は、校長室に直行することにした。


 担任がダメならこの学校の“長”に物申す。


 それしかないと思ったからだ。

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