第6話



 ◇◇◇




 バンッ



 職員室に乗り込み、勢いよく木製の扉を開ける。


 1限目はもう始まっていた。


 けど、そんなこと言ってらんない。



 職員室に乗り込んだ私を見て、ヨシキは驚いていた。


 校長室に直行する私を見て慌てて近づこうとしてきたけど、関係なかった。


 あんたはもう役に立たない。


 校長に何か言われたんでしょ?


 だったら直接聞きに行くまでよ。



 ドアを開いた先には、部屋の中央に設置された机に座る校長がいた。


 白髪頭に、メガネ。


 穏やかな面持ちの先生だ。



 「どうしたんだね…?」



 勢いよく入りすぎたせいか、血相を変えて私の顔を見た。


 ノックくらいすればよかったか…


 いや、そんなことよりも!



 「校長、どういうことですか?!」


 「ちょっと三神君ッ」



 ヨシキは黙ってて。


 聞きたいことはシンプル。


 あの転校生は「何」って話。


 知らないとは言わせないよ?


 ヨシキが言ってたんだから。



 「あの堂島龍生って奴、なんなんですか!?」


 「…あ、ああ、それはだな」



 明らかに動揺している。


 何か事情があることは間違いなかった。


 机に近づき、ずいっと圧力をかける。



 「意味がわかんないことになってるんですけど!」


 「…というと?」


 「急に席替えを要求してきたんですよ?!そんなことあり得ます??」


 「…席替え?」


 「ヨシキ先生。校長に説明して!」


 「…えっと」



 たじろってる場合じゃないって。


 アイツが言ってたじゃん。


 “校長に言われてるでしょ”って。



 「…その、堂島君がどうしても三神君の後ろに座りたいと」


 「なるほど」



 ヨシキの言葉を聞き、少しだけ頷く校長。


 普通の大人だったら、なんでそんなことになってるのか疑問に思ってくれるよね?


 席替えだよ?


 まさか、座りたいところに座っていいって言ったわけじゃないよね?



 「三神さん、落ちついてください」


 「落ち着いてます」


 「堂島君は、ある事情で転入してきたんだ」


 「…ある事情?」


 「お父さんから何も聞いていないか?彼のことで」



 …親父から?


 何も聞いてないよ。


 そもそも、ここ1年は連絡も取ってない。


 絶縁状態なんだ。


 家のことで、色々とあってさ。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る