第3話
この手紙があなたの手に渡る頃、私はもうこの世にはいないでしょう。
私がこの決断に至った理由を、どうか理解してほしいとは言いません。先生は、きっといつもみたいに私には思いつかない言葉をささやかれるだろうから。
人生の中で、私は多くの喜びと悲しみを経験しました。先生との出会いもその一つです。共に過ごした日々、笑い合った瞬間、私は決して忘れません。死ぬその瞬間までは必ず、と断言できます。それから先のことは分かりません。
私がこの世界を去ることを選んだのは、将来への希望を失ったからではなく、過去の重荷から解放されるためです。(私は自分の名前だからこそ、“未来”という表現を好みません。いつも将来やこの先と言い換えていました。だから、重圧感を抱いていたのかもしれません)
私から先生に託すことの出来る財産はなにもありません。ごめんなさい。大切なお時間を頂戴して教えていただいた数々の知識を、社会で発揮することもこうなっては不可能です。でも、私は満足しています。私が人として生きることが出来た証だと感じているからです。
最後に、私からの願いがあります。先生は生きてください。先生も消えそうなオーラがどこかあります。
でも、私が存在した証を家族とは別の人に、心の中に少しでも残して今後の人生を送ってもらいたいんです。わがままですが、お許し下さい。
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