第5話 結婚×アイシャさんの真実×新婚初夜
食事のあと、二人で冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの前に着くとアイシャさんの顔が曇った。
「あのフドラくん、本当に良いの?」
「俺もそうしたいと思ったから、応募したんだから、確認は要らないよ」
「そう? だけど私かなり周りから嫌われているよ……本当に良いの?」
アイシャさんの顔が悲しそうな顔に変わった。
「アイシャさんが好きな俺が、アイシャさんと結婚出来るんだから、良いに決まっているじゃない」
「そうだね、分かった……フドラくんありがとう」
アイシャさんは少しだけ元気になったみたいだ。
冒険者ギルドに入りカウンターに並ぶ。
周りの冒険者から陰口が聞こえてきた。
『あれ、アイシャじゃねーか? 魔王の女になった奴が良く顔を出せるな』
『本当に、私だったら死を選ぶわ』
『魔王に色仕掛けして生き残ったんだよね、あーあっ本当にみっともない』
こいつ等……半殺しにするか?
そう思ったが、アイシャさんが俺の袖を引くので我慢する事にした。
すぐにさっきの受付嬢が対応してくれた。
『二人で来られたという事は、ギルド婚の手続きとパーティ申請ですね。こちらに記入お願いいします』
小声で対応してくれた。
きっと、俺がパーティメンバーになり、アイシャさんと結婚するとまた騒ぎになりそうだからこんな対応をしてくれたのだろう。
そう言えばバルドさんもアイシャさんに同情的だった。
案外全員から嫌われているわけじゃないのかも知れない。
「それじゃ、アイシャさん、記入しようか?」
「うん……あのフドラくん。本当に後悔しない?」
「しないよ…… 寧ろ嬉しいよ」
「ありがとう……」
二人して書類を書きこみ提出した。
本来なら、此処で祝いを兼ねて、冒険者ギルドに併設された酒場で全員に奢ったりするのが通例だが、この状況じゃ出来ないな。
陰口を叩く人間がお祝いの言葉なんかいう訳が無い。
『これで手続きは終了です。 もし決まっているならパーティの名前を教え下さい。 決まってないなら後日で構いません』
「アイシャさんどうする?」
「私は拘りは無いからフドラくんが決めて良いよ」
「アイシャさんはこれからメンバーを増やしたりしたい?」
「フドラくんがいれば充分だよ」
実質、夫婦二人のパーティならこれで充分だな。
「それじゃ、アイドラで登録をお願いいします」
二人の名前を合わせただけの名前。
これで充分だ。
アイシャさんはなんとなく嬉しそうに顔を赤らめた。
『はい、アイドラですね。 はい登録完了です』
手続きが終わると俺達はそそくさと冒険者ギルドを立ち去った。
今回は受付嬢が機転を利かしてくれたから事なきを得たが、何時までもこのままじゃ不味いな。
いっそうの事誰か見せしめに……そうも考えたが、隣で嬉しそうにしているアイシャさんを見て今日はやめておく事にした。
◆◆◆
アイシャさんの家に帰ってきた。
「結婚しちゃったね」
「そうだね」
アイシャさんは凄く嬉しそうに笑っている。
「それでね、フドラくんには、しっかりと私の事話しておこうと思うの……良いかな?」
アイシャさんの顔が真剣な顔に変わり目に悲しみが浮かんでいるような気がした。
「別に話しにくいなら言わなくても構わないよ」
誰だって話したくない事の一つや二つある。
アイシャさんの場合はきっと『魔王の愛人』だった時の話だ。
「ううん、聞いて、フドラくんは私の夫だもん……聞いて欲しいの」
そう言ってアイシャさんは話し始めた。
黙って聞いていると、少し愛人とは違うようだった。
魔王ルシファードはなかなか子供が出来ずに悩んでいた。
アイシャさんの話では魔王と言う存在は、他の魔族と違い、魔族だろうが獣だろうが天使だろうが妊娠される事が出来るそうだ。
確かに、前の世界だと、悪魔には羊の頭を持った者や天使のような羽を持った者もいる。
そう考えたらあり得る事だ。
だが、魔王ルシファードは色々な相手と交わっても子をなす事が出来なかった。
そんな中で人間の女、アイシャさんを捕らえた。。
アイシャさんは……犯されるのではなく注射器の様な物で魔王の精子を子宮に注ぎ込まれたのだそうだ。
そして、アイシャさんは妊娠した。
「その時にね、魔王の子供が死なないようにね、クスリを使われたり魔法を掛けられたのよ」
「そうだったんだ……」
「うん、だけど、多分フドラくんの思うような悲惨さは無いよ? 最初魔王の精子を注入された時は牢屋だったけど、妊娠してからは貴族のような部屋に移され手厚く扱われたから、ただ、魔王の子供、人間じゃない種族がお腹に宿っている恐怖はあったけどね」
そうアイシャさんは言っているけど、捕らえられた状態で異種族を妊娠して、周りに味方が無いなかでの生活。
これが苦痛じゃないわけがない。
「あの……それで……」
「それで出産して魔王の話は終わり。 それからの扱いも悪く無かったけど、やはり周りが全員魔族というのは苦痛だから返して欲しいとお願いしたら返してくれた。これでおしまい」
「それじゃ愛人じゃないんじゃ……」
「そうね、肉体関係もないわけだけから、正確には違うよね。 正しくは魔王の子供を産んだ女、そんな感じかな……あはははっ……魔王ルシファードとはSEXはしていないから、ちゃんとした初めての相手はフドラくんかな……」
「それって処女のまま妊娠して出産したって事?」
「うん、あれは、本当に痛くて地獄だったよ……」
男の俺には考えられない程の苦痛だった筈だ。
「……」
「そんな顔しないの。 多分、魔王の子を妊娠しなければ、あのまま牢屋で死んだかもしれない。 そう考えたらついていた。そう考える事にしたの……それでね、これは帝国の王族と大臣以外誰も知らない秘密。絶対に誰にも言わないでね」
「言わないよ……」
「私が産んだ子に『サタンプリンス』の刻印があったのよ?」
悪魔王子?
「悪魔の王子……」
「そう、次期魔王になる存在が私の産んだ子なのよ。だから魔王ルシファードから『サタンプリンスマザー』の功績を貰ったの」
「それって……」
「地位ではないけど『魔王を産んだ母親』という功績が貰えて、魔族は基本的に敵にならないのよ。 実際に過去に次期魔王を産んだヤギは死ぬまであらゆる敵から守って貰っていたらしいし、次期魔王を産んだ天使は天界から守って貰っていたみたいよ……私は帰ってきたから守られていないけど、魔族は敵に今後ならないのよ」
「すごい話ですね」
「だけど、私は王女だったから、帝王である父には話さない訳にはいかなくて、魔王の子供を産んだ事、そしてその子が次期魔王に将来なる事を話したのよ。その結果、私は王族をから外される事になったのよ」
「だけど、情報は人間側に伝わってないのに『魔王の愛人』という話しになったのは何故だろう」
今の話なら誰も知らない筈だ。
「うん、帝国にも王国にも魔族を見張る密偵がいてね、魔王城で優雅に暮らす私を見てそういう話しになったみたい。もしかしたら父である帝王も、私が話す前に情報を聞いていたのかも知れない」
魔王の子供を妊娠した状態で大切に扱われていたから……愛人。
そう思われたのか……
「なんて言ってよいかわからない……」
「そうだよね、フドラくんも話されても困るよね。それでね私、魔王からは莫大な謝礼、父である帝王から手切れ金を貰ったから、凄く金持ちなの。 だから働きたく無くなったら言って、多分一生遊んで暮らしても使いきれない程のお金があるからね」
「お金には興味が無いよ。それより、アイシャさんの初めてが俺って言うのが凄く嬉しい。俺も初めて抱いた相手はアイシャさんだから」
「そう……嬉しいんだ、良かった」
なら、なんでエロいんだ。
「あの、それならなんで……凄く聞きずらいけど、そのエロいのかな」
アイシャさんの顔が赤くなった。
「私がなんでエッチなのか聞きたいのかな? 私にもわからないけど、魔王の子供を安全に産むために飲んだ薬か掛けられた魔法の影響なんだと思う……少なくとも魔族に捕らわれる前は私、ビキニアーマーは来ていたけど、こんな性欲はなかったから……多分だけどね」
「そうなんだ……」
急にアイシャさんの顔が悲しそうな顔に変わった。
「それでね、私魔王の子を産んじゃったから、もう赤ちゃんが出来ないんだって……黙っていてゴメンなさい」
なんて言ってあげれば良いのか……
「俺、結構な焼きもちやきだから、もしかしたら子供にも焼きもちを焼くかもしれない……ずうっとアイシャさんの一番でいたいから、それで良かったかも」
「そう。本当にフドラくんは変っているね」
そういうアイシャさんは笑っているから、これで正解だったんだ。
「確かに、そうかもね」
「それじゃ話し合いも終わったし、フドラくん、夜の営みを頑張ろうか? 今日はフドラくんが頑張ってくれるのよね?」
「勿論、さっきから食事のせいか、下半身がその……」
「あら、凄い事になっている……そう言えば新婚初夜だね」
「新婚だから、仕方ないよね……それじゃアイシャさん、シャワー浴びようか?」
「そうだね、フドラくん、一緒に入らない?」
「うん、入ろう」
多分、今夜も眠れなくて、明日もきっと寝不足だ。
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