第2話 冒険者ギルドにて

パーティを追放された俺は近くの冒険者ギルドに来ている。


あいつ等の事だから『パーティからの離団届け』とか放っておきそうだったので、あの後書類にしっかり書かせた。


受付に並び、受付嬢に書類を提出した。


「……えっ、フドラさんパーティを抜けるんですね」


「はい」


なんだか、受付嬢の目がキラッと光った気がした。


「それじゃ、こちらのパーティ募集の……」


勇者パーティ所属の俺は、あのパーティさえ離れれば幾らでも次がある事を知っていた。


S級からみて落ちこぼれでも、A級の中では優秀。


B級やC級に落せば幾らでも欲しがるパーティはある。


A級の俺は単独でオーガ数体なら狩れる。


オーガ一体辺り大体報酬と素材合わせて金貨1枚(約10万円)位にはなる。


それを5体狩れば50万円。


日給で50万円、場合によっては100万円を稼ぐことが俺には出来る。


こんな稼ぎがよくて有能な人間、欲しいパーティは山ほどある筈だ。


だから、悲壮感は全く無い。


円計算が出ているのは俺が転生者だからだ。


尤も、虫食いとして記憶が少しあるだけで、碌な知識は無い。


ただ、遠い世界日本の記憶が偶に浮かぶ程度だ。


このまま募集をかければ、すぐにこの俺、フドラ争奪戦が始まる。


だけど、俺は『そうはしない』


俺には別の目当てがあるからな。


「いや、それ要らないから、俺が欲しいのは『アイシャ』の情報だけだよ! 今でも同じ様にパートナー募集をしているのか、それだけが聞きたいんだ」


受付嬢の顔が驚きの表情に変わる。


「あの、アイシャ様のパートナーの条件は、その……知っていますよね?」


「ああっ!」


「いまだに同条件で募集しています……本当に応募なさるのですか?」


「勿論だ! それでどうすれば良い?」


「そうですね……急ぎならギルドの職員同伴でご自宅まで案内させますが、その際は銀貨1枚掛かります。 急ぎじゃないなら数日頂ければギルドに呼びますが……」


「それじゃ、同伴でお願い致します」


「そうですか……それじゃ銀貨1枚になります」


「はい」


銀貨1枚払うと受付嬢のお姉さんが奥に引っ込み、中年の禿の男性職員が出て来た。


「バルドだ! アイシャの所への案内だな……それじゃ行くぞ」


「フドラだ。宜しく頼むよ」


そう言うと俺についてきなとばかり、手を振った。



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