1435 落とし処

 眞子の態度を見て、真実を聞かずに全てを許した倉津君!!

当然、この行動には眞子も驚いたのだが、それだけに蟠りが残ってないか心配に成り。

「本当にそれで良いの?」っと尋ねてみると、倉津君は……


***


「納得なぁ。そりゃあ、納得なんてものには程遠い結末ではあるが、何事にでも落し処は肝心だ。それを過ぎちまってから『後で聞かなきゃ良かった』なんて無様に後悔するのなんて、俺は真っ平ゴメンだからな。なら、納得出来なくても、最初から聞かなきゃ良いんじゃねぇのか。俺は、今のオマエの心を全面的に信用してるんだから、此処ら辺が落とし処だろ」

「そんなアヤフヤな理由で納得してくれてるって言うの?あんな真似をさせちゃった私を信用出来ちゃうの?」

「当たり前だろ。オマエと俺は血肉を分けた姉弟だぞ。なにが有ったとしても、最後には納得や、信用をしないでどうするんだよ。馬鹿じゃねぇのかオマエわ」


違うか?


俺は、そうだと思うんだがな。


だってよぉ。

『あの姉弟、小さい時は、あんなに仲良かったのにね』とか、お節介な糞ババァのイロバタ会議のネタになんぞ成りたくねぇんだよ。


俺は、オマエとは一生仲の良い兄弟で居たいし、お互いが信用の出来る関係で有り続けたいと思ってる。


だから今回の件は、例えオマエのせいで、奈緒さんと、崇秀がSEXしてしまったとしてもだな。

それは『なにかの手違いで、そうならざるを得なかった』と思ってやる。


但し、幾ら俺でも、2度目がある程、温厚な聖人君主じゃねぇぞ。


そこまで、お人好しじゃねぇからな。


そこだけは肝に銘じておけ。



「じゃあ、こんな私の事を、初めから信用してくれてたの?」

「おぅ。昼間は感情が昂ぶってたから、豪く怒っちまったがな。俺は、オマエに初めて逢った時から、オマエを信用してる。……それにオマエは、決して、あんな真似を、奈緒さんに平然とさせれる様な腹の黒い人間じゃないからな」

「うぅ……えぐっ……えぐっ……ゴメン……ごめんなさい。ごめんなさい!!本当に、ごめんなさい!!私……私!!本当は、なんて言って良いのか解らなかった。それなのに真琴ちゃんは……こんな私を信じてくれて、なにも聞かないなんて……」


ほらな。


奈緒さん同様、こうやって本気で泣けるって事は、本心から謝ってる証拠だろ。


だから眞子は、そんな腐った奴じゃねぇんだよ。


そりゃまぁ、今は偉そうな事をのたまわっているが、俺も、昼間のあの現場ではシコタマ疑ったけどな。

冷静に考えりゃあ、ヤッパリ、奈緒さんも、眞子も、崇秀も、そんな馬鹿な真似を喜んでする様な馬鹿じゃねぇもんな。


それになにより、嘘吐きに、こんな綺麗な涙が流せるかよ。



俺って……単純なのか?



「泣くな、泣くな。今回の件は、奈緒さんも、崇秀も含めて、なにも無かったと思えば良いだけなんだからよ。……なにも無かったってな」

「ぐすっ、ぐすっ、真琴ちゃん……」


まぁ、本当に、此処が落とし処だろうな。


あぁけどな。

オマエには、どうしても言って置きたい事があるから、まだ帰らさせないぞ。


そこだけは、絶対に言わせて貰うからな。



「まぁ、兎に角だ。これで、この話は終わりだ。2度とするなな」

「本当に、それで良いの?」

「何度も言わすな。構わねぇつってんだろ。……あぁ、但しな。それとは別に、オマエには言って置きたい事が有るから、もぉちょっと付き合えよ」

「言いたい事?……うん。勿論、幾らでも付き合わせて貰うよ。今は一緒に居たいし。うぅん、一緒に居よ」


うぉ!!オマエ、急に可愛い事を言うな。


普段は、俺に対して憎まれ口ばっかり叩くくせによぉ。


これが俗に言う、ギャップ萌って奴だな、ギャップ萌って奴!!

俺の姉弟は、かなりのやり手だぞ!!

(↑既に、雰囲気に耐えられなくなってる俺)



「そっ、そうか。じゃあ、折角、店まで来たんだから。ちょっくら飲みながら、その辺の話をするか」

「……うん」


おぉ……これが噂の崇秀と2人で居る時の眞子バージョンって訳だな。


こりゃあ嵌る理由が解らなくもないな。


アイツ……ちょっと羨ましいな。



「あぁ、でも、真琴ちゃん。飲む前に、奈緒ネェと、崇秀さんに連絡しなくて良いのかな?凄く心配してると思うんだけど」


あぁ……それにコイツは、ヤッパリ信用に足る人間だ。


自分の事のみならず。

良い報告は、早く他の2人にも連絡してやろうとする気持ちが先行してるなんて泣かせるじゃねぇか。


これは賞賛に値する行為だな。


けど……



「あぁ。まだ、しなくて良い」

「どっ、どうして?どうしてしちゃダメなの?」

「どうしても、なにも。少しの間、反省させる意味も込めて。ソワソワしながら考えさせときゃ良いんだよ。だから、連絡は後にしろ」

「そぉ?……でも、なんか申し訳ないなぁ」

「オマエに、そう思わせるのも反省の一環だ。だから、オマエも堪えろ」

「うぅ……」


こう言う他人の事を優先する奴等には。

これが、なによりも、一番効果的な反省のさせ方だからな。


少しの間、それで反省してろ。


そんな意地の悪い事を考えながら。

眞子の手を引いて、強制的に『喫茶ミノルちゃん』に入って行った。


って言うかな。

此処……路地だから、メッチャクチャ寒いんだよな。



倉津の血筋は基本的に寒さに弱いから、話が付いたなら、サッサと店にGOだ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

今回も最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


本編でも倉津君が言いました様に、落とし処と言うのは本当に大切で。

下手に判断をミスって、この分水嶺を過ぎてしまったら、本当に後悔してしまう事が多々ありますからね。


まぁただ、この落とし処と言うのは見極めが難しいですし。

なにより、見極めたとしても、それを抑制するのも非常に難しい事ですので、今回の倉津君は、よく我慢したと思います。


さてさて、そんな中。

次回からは、この倉津君の精神力の強さを、眞子サイドから見たら、どういう風に映るのかを描いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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