1434 寛大で寛容な心

 真実を語る前に、まずは自身の覚悟を伝える眞子。

だが、その覚悟の中には『納得出来なければ、私は死んでも構わない』と言う言葉が入っていた為に、倉津君は……


***


「なんて事を言いやがるんだ。ひっぱたくぞ、オマエ」

「えっ?」

「なにがオマエにとっての真実なのかは知らねぇけどな。そんな風に『オマエが死ぬ』なんてのは、俺の望む所じゃねぇんだよ。だから、間違っても、そんな悲しい事だけは言うな、このバカタレが」

「えっ?えっ?でも、でもね……私のやった行為は、死んでも償えないかも知れないから」

「そうかよ。オマエの命は、そんなに安いのかよ」

「えっ?」

「ハァ……あのなぁ、眞子。オマエの命は、そんなに安っぽいもんじゃねぇの。大体にして、こんな程度の事で、簡単に死なれて堪るかよ」

「えっ?こんな程度じゃ……あっ……」


俺は、まだゴチャゴチャ言いそうな眞子をソッと抱き締めてやった。


このままじゃあ、本当にオマエ等の間で、なにが有ったのかはわからねぇままだが。

こんなに思い詰めて【死】を覚悟する程に深く反省してるなら、もぉそれだけで十分じゃねぇかよ。


そこまで反省してるなら、全部許してやるよ。


俺も元々許すつもりで此処に来てるんだから、これ以上追い込んでまで追求してやる事もなかろうに。


だから、もぉマジでヤメだヤメ。

そこまで思い詰めてるなら、理由なんて、もぉ聞かなくても良いや。



「眞子、もぅ良い。もぅなにも言わなくても良いぞ」

「えっ?えっ?そんな……」

「オマエの持ってる状況なんて知らねぇしよ。実際、そんな糞みたいな話なんぞ聞きたくもねぇ。俺が望んでるのは、そんな事なんかじゃねぇんだよ」

「えっ、でも……」

「俺が望んでるのは、事の発端であるオマエが深く反省して、こうやって全てを打ち明けようする事だ。だから後は、オマエが本当に反省して、2度と、こんな馬鹿な真似しないと誓うなら、もぉ、それで良いじゃんかよ。……俺は、オマエを許す」


重要な部分は、そこだ。

あの事件って言うのは、俺が昏睡してた時期に起こった事なだけに、奈緒さんがSEXウンヌンカンヌンをした事は、俺にとっては、別にそこまで重要な話ではないんだよ。

実際、自分の恋人が昏睡してしまった場合、精神が不安定になって『自分でも考えられない様な行為をしてしまう』なんて事もあるだろうしな。


だからこれに関しては、ブッチャケしょうがなかったと思えなくもない訳だ。


けどな。

そんな一般的にみたら馬鹿げた行為を、最愛の人や、自分の姉弟が恥ずかしげも無く、笑いながら話していたら、どう思うよ?

隠し通してるならまだしも、そんな話は何があっても人前でするべき話じゃねぇだろに。


それを浮気自慢なんかをする糞ババァみたいに話してた眞子や奈緒さんに、俺は一番腹が立っていたんだからな。


だから、そこを反省もせずに、まだあんな羞恥心の欠片もない事を続ける様な奴等なら、俺は、きっとコイツ等を一生許さなかっただろう。


けど、奈緒さんも、眞子も、そうじゃなかった。

キッチリと自分の過ちにも気付き。

心からの謝罪をする為に、俺の前に現れた。

それに崇秀も、そんな眞子の気持ちを買って『待つ』と言う苦汁の選択を選んだ。


必死に眞子や奈緒さんを庇おうとしていたお節介な性格のアイツにとっては、これが一番キツイ選択だったろうからな。


なら、もぉこれ以上の問答は必要ない。

全員の気持ちが俺に伝わった以上、それだけでもう十分なんだよ。


俺はオマエ等と揉め事なんて、元からしたくねぇんだからよ。



「……真琴ちゃん」

「ハァ……このバカタレだけは。『真琴ちゃん……』じゃねぇつぅの。……っで、どうすんだよ?もぉしないって誓えるのか?」

「えっ、でも、でも……」

「オイ、眞子。俺は、んな事は微塵も聞いてないの。誓えるのか?誓えないのか?って事だけを聞いてんの」


って言うか、反省してるなら、はよ誓え。


姉弟とは言え、この体勢を続けるのは、結構、恥ずかしいんだからよ。

こう言う臭い行為が似合わない俺なんかが、これを長時間やってる事自体、恥ずかしくて仕方がねぇんだからよ。


後、オマエ、すっごい良い匂いがするし……


うん、これは臭いフェチの俺にとっては、かなり危険な香りだ。


なんて言う風に、自身の恥ずかしい好意を正当化する為に、最後の最後で必死にアホな事を考えていたら……



「うっ、うん……うん、誓う。誓います。ぐすっぐすっ……誓います!!誓います!!二度と、こんな事が無い様に、これからは清廉潔白に生きます。……だから、だから……本当に、本当に、ごめんなさい。……どうか、こんな私を許して下さい」


……って感じで、眞子が泣きながら、ちゃんと誓ってくれたので。


よしよし、良く出来たな。

そんな良い子には、もう一度ギュッと抱き締めて、頭も撫でてやるぞ。


( ゚д゚)ハッ!

これも俺がやると臭ぇだけだった!!



「そっか。んじゃま、この話はお仕舞いだ。終わった限り、もぉオマエが気に病む事はねぇぞ。終わった話なんだからな」


まぁ正直言っちまえば、俺自身、色々納得出来無い部分がなくも無いんだけどな。


一応の所、これにて一件落着で良いんじゃねぇか?



「でも、でも、真琴ちゃんは、本当に、それで良いの?そんなんで納得出来るの?」


一件落着してないですな。


この様子じゃあ、どうやら眞子の方にも蟠りが残ってるらしい。


まぁけど、現状じゃあそうなるわな。

そう成っても仕方がねぇわな。


ほんと、しょうがねぇ奴だな、オマエさんは。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

毎度、最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


奈緒さんや眞子の深く反省する姿を見て。

真実を聞く事もなく。

自分の中であの事件の概要を想定して、倉津君は全てを許しましたね♪


ブッチャケ、これは凄い事だと思います!!


……っと、本文を読んで下さって、皆さんも少しは思って貰えたとは思うのですが。

此処で倉津君が許せるのにも、ちゃんとした理由がありましてね。


元々この子は、アホだのバカだの散々みんなに言われてる面があるにせよ。

比較的、仲間に対しては寛大な気持ちを持っていますし、それに、特にこう言った事に対しても、比較的寛容(過去に奈緒さんが援交してた事も気にしない様な)性格をしていましたので、まずは最初から、こうなる下地はあった訳なんですよ。


……で、更に言えば。

奈緒さんや眞子、それに崇秀なんかの普段の生活態度があればこそ、これを許せる訳でもあるんですね。


例えばこの3人が『普段の生活態度が屑みたいな事ばかりしてる様な連中』なら、倉津君も絶対に許せなかったと思いますしね。


なので結局の所、倉津君が、この3人を許した理由と言うのは。

『お互い積み重ねてきた良い印象があった』からこそ、こう言う良い結果が生まれたと言う事です♪


なにもない所から、こういう都合の良い結果にはなりませんからね。


ってな感じで。

倉津君が、この3人を許した経緯と言うものを説明させて頂いたのですが。

そんな倉津君に反して眞子は、矢張り『このままでは蟠りが残るのではないか?』っと不安なご様子。


ならば倉津君は、此処をどう納得させられるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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