1431 考えられない様な奇跡が起こったが……
奈緒さんの献身的な態度に心を打たれた倉津君は、この問題への解決を図るべく動き出した。
そして、その頃、眞子と崇秀はと言うと……
***
―――サイド眞子。
『まさか、この状況下で、真琴ちゃんの方から、直接、接触を試みてくれるなんて……』
崇秀さんと、今後の対応策を考えてる際に、突然、私の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
そして、咄嗟に携帯を手に取り。
発信者のナンバーディスプレイを見ると……『真琴ちゃん』っと書かれた文字が浮かび上がっていた。
私は、この文字を見た瞬間、強烈な動揺に襲われる。
あっ……有り得ない。
こんな事は、普通なら絶対に有り得ない
そう思わざるを得なかったからだ。
いや、違う、そうじゃない。
これは奇跡が起こったのかも知れない。
別れた、あの時の惨状から考えれば。
こんな電話が真琴ちゃんの方から掛かってくる事自体、これはもう奇跡としか言い様がない。
なんと言っても、あの起こり得てはイケナイ最悪な現場に遭遇したにも拘らず。
そこから心変わりを起して、真琴ちゃんサイドからワザワザ電話して来てくれるなんて、普通なら誰も考え付かない様な事態だからね。
この真琴ちゃんの精神力の強さには、驚愕の一言に尽きる。
勿論、あの後、私達の方も、なにもしていなかった訳では無い。
直ぐ様、奈緒ネェは、真琴ちゃんを追って行ったし。
その場に残された私と崇秀さんも、打開策を幾つも幾つも講じながら、時間を費やしてはいた。
だけど、現状は悪化する一方。
『必要な嘘も付けず』
『真実も言えない(崇秀さんと奈緒ネェに止められてる)』
そんな状況故に、考えども考えども、どれもこれも上手く嵌らず。
こちら側から真琴ちゃんには連絡する事も出来ずに、お手上げな状態に陥り。
無駄な時間が過ぎるだけの、酷い堂々巡りを繰り返していたからね。
まさに、この電話は救いの手だと言え様。
だから、この奇跡とも言える真琴ちゃんからの電話をどう扱うかによって、今後の4人の関係が決まってくる。
どんな事が有っても、些細なミスも許されないの明白だ。
厳しい状況には変わりない。
***
そんな風に考えながら、真琴ちゃんと会話をしようと思ったんだけど。
真琴ちゃんは、端的にコチラに対する要求だけを述べ、即座に電話を切った。
その瞬間、私は愕然と成った。
こちら側からの話を、一切聞いてくれなかったからね。
だけど、その条件を満たす事によって、話し合いの場を作ってくれると言う事だけは間違いなかったので、まだ運命の糸は切られた訳ではない。
そう思っていたら……
「眞子……誰からだ?」
そんな呆然となった私を見て。
真琴ちゃんに殴られ、傷だらけになっても病院にも行かなかった崇秀さんが、電話の主を聞いてきた。
この辺については、自分の体なんかより、真琴ちゃんや、奈緒ネェとの関係の方が大事だと思っている証拠なのだろう。
「……真琴ちゃん」
本来なら、私の責任で生じた問題なだけに。
私自身のみで解決しなければ成らない問題なんだけど、取り敢えず、此処は正直に報告した。
何故なら崇秀さんも現状は知りたいだろうし。
この対応からなら、まだ電話の内容をなにも報告していないだけに、どうとにでもなる状況だと判断したからだ。
「……っで、なんて電話なんだ?」
「『ネストで待ってるから、2人で来い』って……真相を聞きたいんだって」
「そうか。矢張り、2人に御指名が掛かったか。……でも、オマエは此処で待ってろ。ネストには来なくて良いぞ」
「なんで?そんなのダメだよ。私も一緒に行くよ」
「いいや、ダメだ。オマエを連れて行ったんじゃ、真相を話しかねない。なにがあっても、まだ、そこは隠し通すべきだからな」
矢張り、私が真相を話す事を拒否してきたね。
今までも散々反対してきてたので、此処は想定内だ。
「それはダメだよ。真相は話せなくても、これ自体が私の責任で生じた問題なんだから、その当事者である私が逃げる訳にも行かないよ」
でも、だからと言って、責任を持って行かれるのは御免だ。
もし仮に、此処で崇秀さんを一人で行かせたら。
必ずと言って良い程、彼は、この問題を自分だけの責任にしてしまうに違いない。
事の発端は私の我儘が原因に成っているんだから、それだけは人として絶対にしちゃイケナイ。
そこまで人に頼る事は出来無いからね。
「だったら聞くがな。オマエが付いて来て、なにをどうするつもりなんだよ?そこの対応策が無いなら、2人で雁首揃えて行っても、昼間の二の舞に成るだけだぞ。だから、オマエは来なくて良い。来る必要もない」
「じゃあ、崇秀さんは、どうするつもりなのよ?どうせまた自分のせいにだけするつもりなんでしょ。そんなのダメだよ」
「そりゃあ、なにも良かねぇわな。……けどな。この状況を打破する為には、誰かが泥被りをしなきゃいけないのも現実だろ。真実を話さない以上。女であるオマエが、その泥を被る方法は無い。性別上、それは出来無いんだから、来る意味さえ失われてるだろうに」
真実を話せない事が、此処まで事態を混乱させるなら。
もう一層の事、本当の事を話してしまえば良いんじゃないの?
崇秀さんが、真琴ちゃんに嫌われる理由なんてないよ。
「だからと言って、崇秀さんが泥を被らなきゃイケナイ理由なんて、どこにも無いじゃない。そんなの納得出来無い」
「しょうがないだろ。それが、今のところ最良の方法がなんだからよ。オマエや、向井さんが、アイツに嫌われる訳にも行かないだろうに」
確かに、そうかも知れない。
だったら尚更、真実を話して『私だけが嫌われる』『気持ち悪がられる』って方法もあるんじゃないの?
まぁそりゃあね。
『クローンの件』も含めて『私が元倉津真琴であった』なんて真琴ちゃんが聞いたら、正直、真琴ちゃん自身が立ち直れない程のダメージを負うかも知れない。
けど、これが隠す事の無い真実な以上、また嘘を付いて、より大きな嘘を重ねるのよりは幾分まっし。
いずれは、話さなきゃイケナイ事象だと思うしね。
それが、この機会なんじゃないかとも思う。
もぉ、これ以上嘘を付いて、誰かが傷つくのは懲り懲りだし。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
真実を倉津君に話せない事が、この問題の最大のネックに成っているのですが。
どうやら眞子は、これを話す事によって、倉津君には精神的なダメージを負わす事に成るけど、問題だけは解決すると判断している様子ですね。
まぁ確かに、此処さえ話せば、ある意味、ある程度の辻褄が合うので解決への道は開けるでしょうが。
それが真実だとは言え『今のなにも悪くない倉津君』だけが、そんな酷い目に遭うのは……本当に正しい事なのでしょうか?
まぁ実際の話。
元倉津君である眞子が起こした問題なだけに、倉津君が起こした問題だと言えば、倉津君が起こした問題とも言えない訳ではないのですが……何か違う様な気がします。
そぉ……見方を変えれば『眞子が楽になりたいだけ』
所謂、責任転換をしているだけって風にも考えられますからね。
だからこそ崇秀も奈緒さんも、これを話す事を決して許さない訳ですし。
さてさて、そんな中。
倉津君の指定した場所には、どちらが行く事に成るのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます