第8話 悪魔召喚
魔力の暴風に耐えると、そこには人の形をしたなにかが立っていた。
頭にはねじくれた山羊の角が二本。
下半身は獣毛に覆われている。
下級悪魔の淫魔か?
「ふはははっ…召喚主の欲望と絶望で召喚されるとは、運が良い。召喚主の欲望に忠実に、小娘どもを蹂躙してやるとするか。」
「何言ってやがる。ただのクソ雑魚インキュバスのくせに。」
思わず口からこぼれる。
「む?召喚された際に、魔力をぶつけて男は拘束、女は魅了がかかるようにしたはずだが、その状態でも話せる程に耐性があるのか。なかなかに優秀な魔法使いのようだな。
それに一部の女も必死で抵抗しているようだな。
が、時間の問題かな?」
ガクトもバスコ先生も歯ぎしりして身体を動かそうとしているようだが動けないようだ。この様子では俺の後ろにいる教皇もそうかな?
マリアが必死で抵抗しているようだ。メリッサとカーシャは…少し目が虚ろになってる。ルナは王族だけあって、魅了耐性の魔道具を身に着けているはずだが…あれ?必死で抵抗しているのは…足元に宝石が砕けて散らばってるな。魔道具の方が耐えきれずに壊れたか。質の悪いもの掴まされやがって…アンナは…無事だな。が、意図的に効果があったかのように演技しているな。さすがだ。
「まぁ、どうせ動けまい。必死であがらう者から穢してやると、絶望感が多く味わえるからな。そこで悔しがって見ているが良い。まずは…そちらの娘からにするか。」
そう言って、淫魔はマリアの方を向いた。
股間から屹立したものを見せつけながら手招きをすると、マリアの身体が意思とは無関係に動き始める。必死にあがらっているが、一歩、また一歩と少しずつ淫魔の方に動き出すマリア。表情に絶望が見え隠れする。
ヒュンと何かが視界の隅を横切る。
棒状の投げナイフが淫魔の股間に突き刺さる。
「なぜ動けるのだ?」
ダメージなど無いという様子で、投げナイフを抜き、その場に捨てる淫魔。
「汚物は掃除が必要ですからね。メイドの勤めです。」
アンナが短剣を構えて言う。
「まぁ、あの娘を救おうと思ったのかもしれんが、この二人を相手にしていれば、その間に蹂躙できるからな。残念だったな。」
メリッサとカーシャを手招きしアンナに差し向ける。
…くそう、もう少し弱点とかわかれば良かったんだがなぁ…
淫魔がマリアに一歩踏み出したところで、俺の全力パンチが炸裂した。
ドカッ!
壁まで飛ばされる淫魔。とは言っても単なる時間稼ぎにしかならんな。
「スマン。緊急事態なんでな。」
そう言ってマリアを抱きしめキスをする。そして口から俺の魔力を送り込み、マリアの内側から外に向かって淫魔の影響を排除するように操作する。マリアの身体が一瞬光り、周囲に黒いモヤが出たあと霧散した。
これで良い。魅了の状態異常からは回復できたようだな。と、マリアを離そうとしたら、今度はマリアが俺を抱きしめる。
そしてマリアから温かな魔力が注ぎ込まれた。これは…
「これならアルフさんが淫魔を倒せますよね?」
頬を赤らめつつもニコリと微笑むマリア。
「任せろ。」
上着の内側に隠してあった短剣を出し、魔力でコーティングする。少し光ってるような気がする…
「ふん!私に物理攻撃など無意味だ。それにそんな短い刃では、私の身体にダメージなど入るまい。せいぜい絶望するが良い。」
侮ってくれているようだな。非常に好都合だ。
一気に距離を詰め、短剣を淫魔の首前で横に一閃。マリアからもらった魔力で刃の部分を延長させ、魔力でできた刃で切るようにして首を切る。
「なっ!?」
しっかりと首を切り落とした。
「今のは少し驚いたが、だが私に物理攻撃は効果など…」
そう言いかけて首だけの淫魔の表情が変わる。
「何故だ!?何故身体が反応しないのだ!?」
「浄化する魔力で切られたからだよ。」
ネタバラシをしてやる。淫魔の身体は切られた部分から徐々に黒い霧に変化し始めている。
「お前の魅了は、身体の内側に多くの魔力を集めれば、簡単に対抗できる。あとはそのまま魔力を広げて、そのまま体の外に押し出すようにしてやれば簡単に解除できる。だが、この方法ではお前自身を傷つけるのが無理なのはわかってるさ。なんせお前自身は魔力の塊でしかないものな。
さっきの一撃は、『純粋な浄化のための魔力』だけを圧縮して作った刃の部分を使って切ったからな。物理攻撃ではなく魔法攻撃だったんだよ。
それとな、マリアは魔力操作などの力で耐えていたのではなく、彼女自身が持っている魔力の質が、お前の魅了に反発していたから魅了されなかっただけだ。彼女の実力だったら魅了されていたかもな。
マリアの、お前の魔力を受け付けない浄化の特性を持った魔力で作った刃だ。残念だったな。そのまま浄化されて消えされ、淫魔。」
信じられないという顔をしながら、淫魔は黒い霧に姿を変え、徐々に消えていった…そして残ったのは、完全にミイラ化したレイマンの姿だけだった。
淫魔が消えた事で、アンナを襲っていた2人の動きは止まっていた。だが、魅了に抵抗していた人たち含め、浄化が必要そうだった。
「マリア、全員の浄化を頼めるか?
体を覆うように黒い魔力の霧が憑いてると思うので、それを払い落とすように外から魔力を与えればできると思う。
あの2人は少し厄介そうだ。全体にこびりついてる感じだと思うので、そちらは他の人で慣れてからやれればいいんだが…」
「わかりました。やってみます。私の勇者様…」
まだ少し頬を染めた状態で、マリアは頷いた。
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