第7話 孤児院

 学園から徒歩10分くらいの距離にある孤児院に着いた。孤児院は廃墟のようにシンと静まり返っている。

「急げ!…間に合ってくれ…」

 建物に入るが人の気配がない。子供たちもいない?イヤな予感が膨れ上がる。

「シスターテレサ!どこですか!?」

「マリア様、地下室の入り口が!」

「地下か!」

 階段を駆け下り、扉の開いている地下室に飛び込む。

 床一面に描かれる魔法陣。

 その上に縛られた上に猿轡をされた子供たち。全部で15人くらいか。

 周りには10人の黒い外套を纏った者たちが子どもたちを見張っていた。

 その先に服を破られ、肌を露わにした20代の女性が倒れている。

 こちらを見てマリアを見つけると、腕の力で這ってきた。足を怪我しているようだ。

「マリア!来ちゃダメ!子供たちを連れて逃げて!」

 そんなシスターの腰に手をかけ、自分の近くに引き寄せた司祭は、嫌らしい顔で高笑いする。

「貴様ら!許さん!」

 ガクトが叫びながら周りの明らかに邪教徒らしき者たちを吹き飛ばし始める。やはりあいつはそこそこ強いな。まぁ、状況考えずに行動してしまうタイプのようだが…

 バスコ先生は、ガクトと違って静かに反対側の邪教徒を無力化し始める。

 そんな中、司祭はシスターを押さえつけ下着に手をかける。

「ククク…もう遅いわ!

 今ここで、このシスターを犯して絶望させてやる。

 お前たちも助けられなかった絶望を抱くが良いわ!」

 バンッ!

 その瞬間、司祭の股間が破裂した。

「絶望するのはお前だけだ。」

 あー、良かった。これ、開発しておいて…と、手の中の筒状の魔道具を見る。

 血だらけになった股間を押さえ呻く司祭。

「ぐおおおっ…き、貴様っ!」

「あー、血だらけじゃ流石に可愛そうだな。治しておいてやるよ、低級ポーションだけどな。」

 と低級ポーションを投げる。

 バリンッ!司祭の股間前で瓶を割るように礫を投げる。

「やめろぉ〜っ!!!」

 司祭の悲痛な叫びも虚しく、瓶の中の液体が司祭にかかった。瓶の破片と一緒に…

 割れた瓶の破片が入り込んだ状態で、傷口が塞がる。瓶の破片が一部見え隠れするが、司祭の股間はつるんと男のシンボルなど何も無くなっていた…

 痛そうだなぁ…まぁ、自業自得ということで。


 ポーションっていっても、低級ポーションだと傷口を塞ぐだけ。

 中級ポーションだと指先くらいの欠損なら治ることがある。

 上級ポーションで指一、二本くらい。

 その上の万能ポーションやエリクサーとかのレベルか、聖女の治癒魔法でないと欠損は治せない。が、その聖女がまだ認定されていないし、ね。

 仮に上級ポーションで治すのなら、欠損したときの状態のまま上級ポーションを使わないといけない。一度下級ポーションで傷口を塞いでしまうと欠損は復活できないのだよね。

 というわけで、司祭の男のシンボルは永久に失われた、と。

 子どもたちの前でシスターを犯すとか宣言するような下衆には、このくらいやらないとダメだよな。

 その間にガクトが暴れ、邪教徒を殴り飛ばしている。既に3人殴り飛ばしているが、アレ大丈夫か?壁にめり込んだままピクリとも動いてないが…

 バスコ先生も着実に無力化してるな。残り4人。

 流石に邪教徒も子どもを人質に取ろうとするヤツが出始めた。

 が、それはアンナが即時対応してくれる。素早く背後に回って手刀一撃とか、暗殺者か何かやってたんじゃないか?と疑いたくなるな。

 その間にマリアとカーシャが子供たちを避難させる。アンナの指示か。

 ガクトを使って邪教徒をそちらに引き付け、俺が司祭の注意を引いている意図を理解してくれている。

「おのれ!絶対、貴様は許さん!」

 自分の股間を見たあと、司祭が怒りに我を忘れて俺に殺意を向けている間に、カーシャとマリアがシスターを救い出し、マリアが治癒魔法をかけている。カーシャが外套をかけて肌を隠す。

「その魔道具はなんだ!?」

 俺の手に持つ筒状の魔道具を指して司祭が叫ぶ。

「ああ、コレか?弓の代わりになるものだ。弓と矢を小さくした方が持ち運びが楽だろ?だから矢の代わりに礫を打ち出せる魔道具を開発したんだよ。

 護衛用の暗器にも使えると思ってな。

 これは原理試作だから、一発だけの使い捨てだよ。数は作れなかったけどな。

 試作したばかりで、まだ試射前だったが有効だと証明できた。礼を言おう。」

「銃を開発したのかよ…」

 ガクトが呟いた。

「ん?お前の記憶の中では、コレは銃と言うのか?なら、今後は魔銃と呼ぶか。まだコレと言った名前がなくて悩んでいたのだが助かった。」

 そんな中、すぐ横にアンナが来て一言。

「アルフ様、救助、制圧完了しました。シスターも子供たちも全員無事です。安全な場所に避難させました。」

「ありがとう。意図を理解してくれて助かる。さすが俺の相棒だ。」

 周りには気絶させられたり、動けない状態で呻くだけの邪教徒ばかりだった。

「ぐぐぐ…き、貴様…許さん!」

 周りの様子に気づいた司祭が更に怒りを露わにする。

「だから言ったろ?『絶望するのはお前だけだ』と。」

 アンナが動こうとしたが、手で制する。

「この魔法陣の上に生贄がいなきゃ、発動しないんだろ?

 しかもその生贄が絶望してないとダメなんだよな?だから魔法陣の上に子供たちを置き、シスターをそこで絶望させ、精神を壊し、それを見た子供たちにも絶望を与えようとしたんだろ?違うか?」

 司祭の言動と魔法陣の記述を読み解き、ある程度の予想から指摘してみると、司祭は驚愕の表情を見せる。正解だったらしい。駆け引きは苦手のようだね。

「ならば、ここにいる全員を殺せば良いだけだ。そうすれば絶望した者の魂は魔王へ送れるはずだ!」

「そんな事、許されると思うのかね?レイマン。」

 重厚な声が俺の背後から聞こえた。

「きょ、教皇様…」

「どうやら間に合ったようね。」

 俺の横に来たルナがニコリと笑う。

「司祭の名前…初めて知ったよ。レイプマンって言うのか。……」

 思わず口にしてしまう…

「な、なんだと…」

 レイプマン…いや、レイマンは顔を真っ赤にし、怒りにプルプルと震えている。あ、マリアとカーシャは笑いを堪えてるな。ルナは…笑い過ぎだ。バスコ先生、肩が震えてますよ?ガクト、全力で頷くな。暑苦しい。

「ふはははっ…あながち間違っていないな。彼の部下となったシスターが数名行方不明になったり、精神を病んだりしているからな。中には自ら命を絶とうとした者までいる。実は極秘に捜査していたところだったのだ。被害者が増えるのを防止してくれて助かった。ラーミア教を代表して感謝する。」

 教皇様が追い討ちをかけた。

「レイマン、君は破門だ。ラーミア様を貶める、許されざる大罪人だ。神を冒涜している。余罪について取り調べさせてもらうとしよう。

 まぁ、去勢されたようだから、これ以上の被害者は出ないようだがな。」

 教皇の言葉に、全てを失ったような表情になるレイマン。

 魔法陣が光り始める…

 それを見てレイマンは、少し持ち直した。

「ふ…ふはは…私の絶望を魔王に捧げられるなら、当初の目的は果たせるか。最後が見届けられないのは残念だが、まぁよかろう!」

「いや、これ低級悪魔の召喚陣みたいだぞ?魔王なんてどこにも書かれてないじゃないか…発動させた贄の欲望を満たすものを喚び出すみたいだな。コレだと良いとこサキュバスを喚び出すことになるくらいじゃないか?一部記述が間違ってるみたいだから、下手すりゃ何も起きないで無駄死にするだけかもな。」

「なにっ!?」

 レイマンが固まる。

「え?魔法陣の文字を読めるの!?」

 ルナが驚く。

「ん?そんなに不思議か?

 昔、大量に古代語の文献読み漁ってた時期があって、その頃何となく魔法陣の文字と似てるのに気づいたんだよな。そこから類推してたら、ある程度わかるようになっただけなんだが。標準語と方言みたいな差分はあるけど…」

「それ、世紀の大発見じゃないのっ!!」

 興奮するルナの後ろで、目をキラキラさせてこちらを見ているマリアがいた…

 そして、絶望に打ちひしがれるレイマン…


 動く気力もないほどに打ちのめされているようだった。いや、よく理解できていない魔法陣を使おうとするからだろ。

 完全に心を折ってしまったらしい…

 …あ、魔法陣の光が強まった…

 レイマンの身体から魔力?いや、これは生命力か、それが放出され黒い霧のようになって一つに集まり始める。それに比例するように萎びてミイラのようになっていくレイマン。

「全員魔法で障壁を!何か喚び出されるぞ!」

 黒い霧が人の形に集まり、密度を上げていく。

 実態らしきものが出来上がった瞬間、周囲に対して魔力の風が一気に吹き付けられた。


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以降のストックが心許ないので、この後の更新頻度は下がっていきますが、その辺はご容赦を。

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