第4話 襲撃の顛末
あー、コレ絶対今朝の件だな、とか思いつつバスコ先生の方に向かうと
「私も同席した方が良さそうですね。」
とルナが近づいてきた。
バスコ先生も
「そうだな。一緒に説明したほうが良さそうだ。王家が絡む部分について頼めるか?」
と返す。
ん?王家がなんで絡んで来るんだ?
そして他の生徒達が皆教室から出たのを見計らって、バスコ先生が口を開く。
「アルフレッド、今朝、お前が襲撃されたときの状況を説明してほしい。」
『襲撃』の一言で目を見開いてこちらを凝視するアンナ。
彼女の方を軽く手で制してから説明を始める。
「校門から講堂まで歩いている最中に、後ろからいきなり『この極悪貴族め!』と殴りかかられただけですよ。咄嗟に魔力で空気の盾を作ってガードしても吹き飛ばされる力でしたので、他の貴族家子息じゃなくて良かったです。死人が出てもおかしくなかったですし。」
すかさずマリアが続ける。
「そのとき、私の方にアルフさんが飛ばされてきて、そのままだったら私ごと壁に打ち付けられるところをアルフさんが身を挺して守ってくれたんです。」
「こんな可愛い子をクッション代わりにしたくなかったので、抱きかかえるようにして身体を入れ替えて俺が壁にぶつかるようにしただけです。
その後、殴りかかってきたやつの方を見たら警備兵に制圧されていたので、二人でそのまま講堂に向かいました。」
…アンナからの殺気がすごいことになっている…部屋の気温が2度くらい下がった気がする…
「襲撃していた彼のことは知っているか?」
「いえ、初対面です。ただあの様子では、俺をアルフレッド・ガートナーと認識して襲ってきたように思えましたが、新手の刺客ですか?
どこかの組織が孤児あたりに英才教育施した暗殺者でしょうか?」
そう、どうしてもそこがわからなかった。刺客であれば、わざわざ声をかけずに攻撃すれば良い。もっとも殺気が向けられれば自然に身体が反応するので、襲撃者の命が保証できなくなるくらいだが…
するとバスコ先生が驚く答えを返してきた。
「彼は、一応ただの平民で、成績優秀な生徒の1人でしかない
…のだが、何故か自分を『俺は勇者になる男だ』とか言っているんだ。」
…は?
目が点になる。勇者?何を言っているんだ?
勇者なんて、500年以上昔の神話時代の伝説だろう?魔王討伐後に魔物の脅威も無くなって、その後のゴタゴタはあったにせよ300年以上も平和そのものじゃないか。しかも神と勇者の力で魔王は完全消滅したから魔物もいなくなって、争いごとも国同士の小競り合い程度に落ち着いているのが今だよな。
勇者の時代と違って魔物の心配もないから街道も獣避けさえ用意すれば、野盗への対処が出来るレベルなら護衛なしで移動できるわけだし…
などと思っていると、バスコ先生はその先を続ける。
「ここから更に話がよくわからなくなるんだが…
彼が言うには『この世界は前世の世界で見た創作物語の世界で、その話の中では、俺は聖女に認められて勇者となって、魔王を倒す旅に出ることになる。その世界ではアルフレッド・ガートナーは領民だけでなく国民全員を虐げて私腹を肥やす極悪貴族なんだ。だから俺は事前に殴りつけて軌道修正させようとしたんだ!』とか言っているんだよ。」
えー?なんだそ…
「なんですか!アルフ様ほど民を思ってくれている人はいないというのに!」
アンナが激昂していた…
その横でメリッサがため息を付きつつ
「そうね。貴方は学園に入ってから、ずっとそう言っていたものね。『アルフ様の専属メイドになって生涯尽くすのが夢なの!』だったっけ?貴方の命の恩人なんでしょう?」
どうやらメリッサとアンナは学園時代の友人のようだ。
「そうよ!学園の入学試験を受けに行こうとしていた私達の馬車が、野盗に襲われているところに、まだ8歳だったアルフ様が颯爽と現れて、傷だらけになりながらも必死で私達を守ってくれたのよ!
その時、私はアルフ様のそばで一生涯尽くすと決めたんだもの!」
アンナが拳を握りしめて力説する。
…こういう経緯で俺の専属メイドに立候補したんだな。初めて知ったよ…
ふと横を見ると、マリアとルナがキラキラした目で俺を見ていた…
反対側に目を向けるとカーシャとバスコ先生が目を丸くしている。
少し照れくさい…
「アンナ、とりあえず落ち着いて。」
「はっ…申し訳ありません。取り乱しました…」
少し顔を赤くするアンナ。
「バスコ先生、それで彼はその妄想を理由に襲ってきたということなんですか?」
「ああ、一応、な…」
歯切れの悪い回答だな…
「そこから先は私が話すわね。」
とルナが続けた。
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