神様のミス?
「後は私に任せてください」
リーナはそう言って杖の先っぽで魔法陣を描き、さっきとは別の呪文を唱え始めた。
「光の神よ、そして大地の神よ。この地面に宿し怪物を果ての地へと送りたまえ。そして、大地に再び光を!」
リーナが唱えると、灰になっていた怪物は小さな光をいくつも放ちながらその姿を少しずつ消していき、それと同時に赤かった空が魔法陣を中心として青々とした空が姿を現す。
それと同時に見覚えのある兵士たちが俺たちの元へとやってくる。
「ここにいた怪物はどうした!?」
そう兵士が訪ねてきて答えようとした瞬間に、俺はまた体の痺れがやってきてフラつく。倒れそうになったところをリーナが俺を抱きかかえてくれる。柔らかい感触と共に、俺はそのまま気を失ってしまった。
◆
「あれ……。兵士達は?」
目が覚めると、俺はリーナの馬の荷台に横になっていた。
「帰りましたよ。私は説明したら少し悔しそうにしながらですけどね。戦士様以外にも倒せる人がいたとはとか言いながら帰ってて少し面白かったです」
そう言いながらリーナは馬のムチをパチンと鳴らす。馬は急加速していき、どんどんと道を進んでいく。
「結局あの怪物は何なんだ?明らかに普通の魔物と違う」
そう言うとリーナは少し間を置いてから質問に答えてくれた。
「あれはここ数ヶ月で急に現れた新種の魔物なんです。普通の硬い魔物でも獣人化のスキルを持つ人が攻撃すれば確実に弱点が露出するのが今までの魔物だったんです。でも、あれは違ったんです。私の村の獣人化を持っていた歴戦の戦士たちでも歯が立たなかった。今までこんなことはあり得なかったんです」
そう言った後でリーナはぼそっとこんなことを呟く。
「村長さんはそれの対策と言って援軍を呼ぶらしい謎の呪文を唱えたらしいんですけど、一向にそんなの来ないですし……。解放軍は遊軍するような形で出会った怪物を倒しているだけですし」
俺はまさかと思った。その呪文は俺たち転生者を呼ぶものなのではないかと。だが、説明したところで理解してくれないだろうと思った俺はそうかと呟くだけにしておいた。
そのうち、馬車は村へと入っていく。村の人々はリーナにおかえり、お疲れ様と言ったような言葉を投げかけている。リーナは村の人に好かれているようだ。そういえばと思い、戦士様から貰った地図を確認する。バツマークがついている所とこの村の場所が一致している。どうやら馬でも使わなきゃいけないような遠い村に俺を徒歩で行かせようとしていたようで俺はそのことに少し怒りを感じていた。地図を持っている手でグシャリと紙を潰していると、馬車が止まる。
「アキラ、ここであなたにやってもらわないといけないことが1つあります。ついてきてください。ここは私が唯一村の中で普通に話せる人がいる場所でもあるので……」
そう言ってリーナは俺をレンガ作りの建物の中へと案内してくれた。中に入ってすぐに分かった。ここはギルド的な役割を持つところだと。
「シューミさん、この方の鑑定をして欲しいんですけど」
リーナはそう言って受付にいる女性に声をかけていた。
「フリー冒険者の方ですか?最近増えましたよね……。登録しないとお金や回復サポートのサービスも受けれないというのに……」
シューミと呼ばれていた女性はそう呟きながら俺の前に水晶玉を持ってくる。転生前からよく知っているようなもので安心した。
「シューミさん、この方は多分戦士様と同じ感じの人です。」
リーナがそう言うとシューミは急に驚いたような顔をしてこちらを見てきた。
「あの戦士様と!?ということはものすごい数のスキルとかをお持ちだったり?」
「いや、今のところはそんな感じではないんですけど……。アキラが持っているスキルが何なのかを知りたくて。見たことないようなスキルなんです。獣人化に似ているんですけど少し違う感じのスキルで……」
そういえば獣人化というスキルと似ているとリーナは俺をヒールしてくれた時に言っていた。
「その獣人化っていうのは結局どんなスキルなんだ?」
そう聞くと、シューミさんはブラックボードをわざわざ持ってきて俺に解説をし始めてくれた。
「獣人化は簡単に言うとオオカミ人間になれるスキルです」
そう言ってシューミさんはブラックボードにオオカミが立っている姿を描く。
「こんな感じでスキルを使うと体が一時的にオオカミになって獣の力を借りた破壊的で野蛮な攻撃をするようになるんです。一見すると強いのですが問題もあります」
そう言ってシューミさんはブラックボードに1人の人間を描き足す。
「オオカミ人間になっている間は敵味方の区別がつかないんです。同じオオカミ人間同士は味方と認識できるようなのですが、自分の変身元である人間を味方だとは認識できないようで攻撃してしまうんです」
だからあの時リーナは俺のスキルが獣人化じゃないと分かったのか、と1人で納得する。だからこそ俺のスキルが何なのかリーナは知りたくなったのだろう。
俺はそっと水晶に手を当てる。すると、スキルが浮かび上がってきた。
その数は
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