第4話 冬 束の間の休息

 年末の時期はものすごく仕事が忙しい。

 それは僕だけ1人だけでなく、美玖も毎日忙しそうにしていた。



『みんなお疲れ様! 来年もよろしくね!』



 スマホの画面に映った小牧ミクがそういうとエンドロールが流れ配信が終わる。

 クリスマス頃からほぼ毎日、美玖は配信をしていた。



「美玖の仕事が忙しいのはわかってるけど、なんだか寂しいな」



 思えばクリスマスもお互いに仕事が忙しくて、なぁなぁに済ませた気がする。

 本当は美玖にクリスマスプレゼントを用意していたんだけど、それを渡せずにいた。



「うぅ~~~! つかれた~~~!」


「お疲れ様。さっきみかんを買ってきたから、一緒に食べる?」


「うん! 食べる!」



 美玖はリビングに置いてある炬燵に入ると僕が渡したみかんを美味しそうに食べる。

 よっぽどお腹が減っていたのか、みかんをほおばっている。

 みかんを食べている美玖は幸せそうな表情をしていた。



「年末まで配信をするなんて大変だね」


「うん。でもリスナーさんを喜ばせてあげたいから頑張る」


「いい心がけだね」



 彼女のこういう所にプロ根性を感じている。

 普通の人なら年末はゆっくり過ごすのに、エンターテイナーである彼女は頑張って配信をしていた。



「玲」


「何?」


「私を癒して♡」


「唐突にどうしたの!?」


「最近は忙しくて玲成分が足りないから、たくさん補充したい!」


「そういうことか。でも僕はどうやって美玖のことを癒せばいいの?」


「こうやって癒せばいいんだよ!」



 そういうと美玖は炬燵の中に頭をつっこんで中へと入っていく。

 最初は何をしているのかと思ったけど、気がつくと僕の座っている所から頭を出していた。



「美玖!? 何をしてるの!?」


「こうすれば暖かいでしょ!」


「確かに温かいかもしれないけど、同じところに2人で入っていたら狭くない!?」


「それがいいんだよ! 私はこうして玲とくっつきたかったんだ!」



 美玖は僕を抱きしめて、幸せそうに笑っている。

 時折『玲成分充電中~♪』と言っていることからも、彼女が喜んでいる様子が伝わって来た。



「玲は私にやられっぱなしでいいの?」


「えっ!?」


「ここ最近玲も仕事が忙しかったけど、その間私と一緒に過ごせなくて寂しくなかったの?」


「寂しかったよ。美玖がいなくて凄く寂しかった」


「そしたらそれを行動で示してほしいな」



 美玖は僕の方を見て、おずおずと唇を突き出した。

 その唇に向かって僕は優しくキスをする。



「んっ♡」



 声にならないと息が美玖から漏れる。

 彼女の声は艶っぽく、ものすごく色気があった。



「美玖」


「何?」


「今幸せ?」


「うん♡ 私は最高に幸せだよ♡」



 なんだか美玖から寂しいという言葉が聞けてよかった。

 彼女の言葉を聞いて、寂しいのは僕だけじゃなかったんだと再確認できた。



「玲」


「何?」


「今年も1年よろしくね!」


「うん。よろしくね」



 出来れば今年1年だけでなく、これからも美玖とずっと一緒にいたい。

 僕の胸に顔をうずめる彼女のことを見ながらそう思った。



「なんだか眠くなってきちゃった」


「それならベッドに移動する?」


「やだ!! もっと玲とくっつきたい!!」


「わかった。そしたらもう少しこのままでいようか」


「うん♡」



 僕が美玖の頭を優しく撫でていると、徐々に彼女の瞼が閉じていく。

 気づくと美玖が可愛い寝息を立てながら、僕の隣で寝ていた。



「全く。こんな所で寝たら風邪を引いちゃうよ」



 だけど僕は美玖のことを怒る気にはなれない。

 きっと美玖も僕と一緒にいたかったんだろうな。

 時折僕の名前を呟く美玖のおでこに優しくキスをした。



「こんな美玖に僕がしてあげられることは1つしかないな」



 可愛い寝息を立てる美玖を見て、僕はある決心をした。

 いますぐに言えることではないけれど、近いうちに実行するつもりだ。



「その計画は後で考えるとして、今は美玖をベッドに連れて行こう」



 こたつの電源を切り、彼女の事をお姫様抱っこをしてベッドへと連れて行く。

 それから彼女の体に布団や毛布などをかけ、気持ちよく寝ている彼女の隣で僕も寝た。

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