第8話 村長
店員さんに村長さんのいる場所を教えてもらい、そちらへと向かうことにした。広い敷地を確保されているものの、家の外装は周りの家と殆ど同じだ。ただ広さや高さが異なっており、少し遠くからでも人目を引く存在感があった。門などはなく、誰でも出入りできてしまいそうだ。呼び鈴もなければノッカーもなく、自分の手でノックすることにした。しばらくして、扉が開く。中からは中年のガタイの良い男性が現れた。ちょっと強面で、顔にはなにかの傷跡があり、迫力を際立たせている。
「何か用か?」
太くジリジリとした声に、ぶっきらぼうな物言いだ。
「勇者候補のユウと僧侶のケインです。村長さんでお間違いないでしょうか?」
「そうだが……もしかして、依頼の話か?」
「はい、シロタマモドキについてお伺いしたいことがありまして、お時間よろしいでしょうか?」
彼は扉を開き、手で中に入るように促した。
「一刻を争っている、奴が暴れているせいで村の働き手の半分はベッドに放り込まれてる状態だ」
彼は歩きながらそう説明しだした。客室は外観とは異なり隅々まで整頓されている。壁には村の地図や、なにかの記念品らしき物が沢山飾られている。大きな木のテーブルに、長椅子がひとつ。年季の入った木材は温かみのある雰囲気を醸し出している。彼は長椅子を手で指し「座ってくれ」とだけ言った。促されるままに俺とケインさんは椅子へと腰掛ける。村長も対面の椅子へ座った。
「それで、何が知りたい。魔物の情報ならクエスト票にも載せてあるはずだが」
圧を感じるような物言いに、少しだけ怯む。だが冷静に続けることにした。
「はい、基本的な情報は確認しました。ただ追加で2点情報をいただきたいです。シロタマモドキが出現した場所の詳細と周辺の魔物の有無です」
「場所ね……少し待ってくれ」
村長は立ち上がれば、奥の部屋へと消えていった。戻ってきた時には、手に一枚の地図をもっていた。それを広げれば、いくつか小さなばつ印が着いていた。
「最後に奴が出たのはここだ」
彼はひとつの印を指さした。そして現在地である村を指さし、そこから北西へと伸びる道を指でなぞった。歩いて30分程で着く場所らしい。辺りは作物を育てる畑があり、平坦な土地だ。そこより少し先へと歩くと川を挟んだ向こう側に森あり、シロタマモドキはその森から飛び出たのではないかと村人達は睨んでいる。
「あいつが来るまで魔物なんてのはいないも同然だった。いたとしても木の棒で追っ払えるちっさい魔物くらいだ」
早くその平和を取り戻してあげたいと切に思った。必要な情報は手に入ったところで、直ぐに向かおうと立ち上がる。
「村長さん、その地図お借りしても良いでしょうか」
「持ってけ」
「ありがとうございます」
これで場所も、周辺の魔物についても明らかになった。あとは、俺が倒すだけだ。それがとんでもなく大きいのだが。
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