第9話
夜襲事件から数日後。
セリカの情報網を使って調べてみたものの、賊たちの背後関係はまだはっきりしない。
そんな中、大都市で年に一度の交易市が開かれるという話が飛び込んできた。
セリカは「ここは絶好の商機よ。借金返済の足がかりにもなるし、参加を検討してみたら?」と持ちかけてくる。
「交易市か……そうだな、そこで特産品をガッツリ売れれば、一気に稼ぎが増えるかもしれない」
俺はうなずきつつ、頭の中で数字を弾く。
借金返済まではまだ大きな額が必要だし、最近の収穫や工芸品の売れ行きも、まだ完全に軌道に乗ったわけじゃない。
だが、このチャンスを逃す手はない。
「オレ、ぜひ行きたい! そんで思いっきり取引して、一気に返済を進めたいんだよ。セリカ、協力してくれるか?」
「もちろんよ。私の情報網でブースの場所や主要商人とのアポイントを取っておくわ。あなたは商品と人員を揃えておいて」
話がまとまったところへラヴィアが手を挙げる。
白髪ショートボブがふわりと揺れ、その可愛い笑顔が弾けるようだ。
「エルフリード様、私に何かできることあるかなぁ? 踊りは商品じゃないから、売れないんだけど……」
「バカ言うな、ラヴィアの踊りはこの領地の最高のPRなんだぞ。あの華やかなステージを見て、人が集まってくれたら商品の宣伝にもなる。今回は大都市の人々にアピールするチャンスじゃねえか!」
そう言うと、ラヴィアはぱあっと顔を輝かせ、「そうかぁ、私の踊りでお客さんを呼び込むなんて面白そうだよぉ!」と喜んでくれる。
ノノカも「薬草を使った新しい商品や、治療用のポーションを紹介すれば、医療面での取引が増えそうですね」とやる気十分だ。
農産物や工芸品だけでなく、いろんな角度から稼げる可能性がある。
そして数日後、俺たちは馬車に商品を積み込み、大都市へ出発した。
何台もの荷車を連ねているから、見るからに大掛かりな隊列だ。
セリカが緻密にルートを指定してくれたおかげで、道中大きなトラブルもなく到着。
「うわぁ……さすが大都市! 人がいっぱいだよぉ!」
門をくぐった途端、ラヴィアが目を丸くして歓声を上げる。
街道には露店が軒を連ね、視界のどこを見ても商人や観光客だらけだ。
「ここでバッチリ稼いで、あの借金を半分くらい返済できたらいいな」
俺が気合いを入れると、セリカは「そのためには勝負どころで目立たないと」とウインク。
指定のブースに着き、さっそく商品の陳列と飾り付けを始める。
手作りチラシや木札を活用し、俺たちの領地の魅力を分かりやすく紹介。
「いらっしゃいませ! こっちは森の木工品、あっちは薬草から抽出した香り高いアロマオイルです!」
ノノカが手書きのPOPを掲げながら、お客さんに丁寧に説明。
ラヴィアは簡易ステージを作って踊りを披露し、大勢の人を惹きつけている。
その間にセリカが商人たちとビジネスの話を進め、俺は商品の値段交渉や在庫管理で奔走。
「すげえ! まるで学園祭の出店みたいな盛り上がりだ!」
そんな風に心が躍る中、ふと感じる嫌な視線。
見れば、隣のブースを仕切る商人グループがこちらを睨んでいる。
どうやらライバルと思われたらしく、あからさまに客を奪われたくない雰囲気を出している。
「なんだお前ら! 変な踊りで客を釣るなんて卑怯だぞ!」
いやいや、卑怯も何も、ただ踊って盛り上げてるだけだし……と思うが、相手は何か仕掛けてくるかもしれない。
ここはしっかり差別化するしかない。
「みなさーん、うちのブースでは特産品の試食もやってますよ! こだわりのハーブが入った軽食が味わえます!」
俺が声を張り上げると、ラヴィアがくるりと踊りつつ「おいしいよぉ!」とおどける。
その愛嬌たるやすさまじく、あちこちから「行ってみようぜ」という声が上がる。
ライバル商人たちは歯ぎしりしているが、勝負の世界は非情だ。
結局、俺たちのブースは大盛況。
セリカがまとめた取引先との商談も順調で、思った以上の利益を上げられそうだ。
こんなにサクサク売れてしまうなんて、正直嬉しい誤算だ。
「この調子なら、かなりの額を稼げそうじゃないか! よっしゃ、帰ったら借金返済がグッと進むはずだ!」
俺のテンションは最高潮。
ラヴィアはヘトヘトになりながらも「頑張った甲斐があったよぉ」と笑顔で倒れ込む。
ノノカは売上管理や追加発注の確認で大忙しだが、「嬉しい悲鳴ですね」とほほ笑む。
セリカは「ふっ、ここからが本番よ」と不敵な笑みを浮かべる。
俺たちは借金返済への大きな一歩を踏み出しつつある。
しかし、世の中そんなに甘くない。
きっとどこかで新たな試練が待ち受けているだろうが……今はこの勝利の余韻に浸りたいところだ。
ラヴィアの踊りが大舞台で評価され、俺たちの領地の名が広がったのが本当に嬉しい。
さあ、稼げるだけ稼いで、堂々と借金を返しに行こうじゃないか!
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