第7話
病気の流行もひとまず落ち着き、領地に再び穏やかな日常が戻りつつある。
俺はノノカに協力を頼み、土壌改良のための堆肥づくりに挑戦してみることにした。
耕作放棄されていた畑を復活させるには、有機質を混ぜ込んで地力を高めるのがセオリーだと前世で学んだからだ。
「ノノカ、薬草のカスとか、何かに使えそうな廃材ってどれくらいある?」
小麦色の肌をもつ彼女は、ポーチのメモ帳を取り出しながら答えてくれる。
「意外と捨てる部分が多いんですよね。そういった植物残渣(ざんさ)や家畜の糞と合わせて堆肥にすれば、効率的に栄養を還元できるはずです」
「だよな! ただのゴミだと思ってたものが、実は畑を活性化させる宝の山になるわけだ」
嬉々として語ると、ノノカは微笑みながら頷く。
セリカは腕を組んだまま、「まあ、あなたの奇妙な発想には慣れてきたけど」と苦笑を浮かべる。
「でも実際、農地が豊かになれば生産力は飛躍的に上がるでしょ。借金返済の役に立ちそうね」
「そうだな! 俺はもっと大きく農地を拡大して、来年にはガッツリ豊作を狙うつもりだ!」
やる気に満ちた俺の声を聞いて、ラヴィアが小躍りしながら近づいてくる。
彼女は白ニーハイと踊り子風の衣装をひらひら揺らし、相変わらずテンション高い。
「農作物がいっぱい採れたら、みんなお腹いっぱいで幸せになれるもんね! それに私も嬉しいし、踊りの練習がもっとはかどりそうだよぉ」
ラヴィアが笑顔で言うと、周囲の村人たちも「そうだそうだ!」と気勢を上げる。
ここまで来ると、この領地の雰囲気もだいぶ明るくなってきたな……と思う。
早速、用水路をさらに拡張し、畑の水回りを最適化しようと工事を進める。
堆肥づくりも並行して行い、どんどん畑に撒いて土を育てるのだ。
昔は荒れ地だった場所も、今では土がフワッとしてきて、作物が根付きやすくなっている。
「エルフリード様、ここまでやれるなんて、本当に驚きですよ!」
村長が興奮気味に声をかけてきた。
彼にとっては半ば夢物語だった“農地の再生”が、俺の知識チートと仲間たちのサポートでどんどん現実になっていく。
「ま、俺はスローライフを楽しみたいんだ。腹が減ってちゃ話にならねえだろ?」
冗談交じりに言うと、村長は笑いながら頷いた。
広がる畑を見渡すと、労働に励む村人たち、踊り子衣装のまま収穫体験を楽しむラヴィア、薬草の適正な使い方を指導するノノカの姿が見える。
セリカは書類を手に、真剣な表情で商人たちとの取引を検討している。
穏やかな陽光が差し込み、ここにいる全員が未来に希望を抱いて働いている――そんな空気感が嬉しくて、俺は自然と笑みがこぼれた。
しかし、その平和な風景の裏で、帝国からの不穏な動きが再び影を落としているらしい。
イグナートがひょっこり現れて「借金はまだ残っているぞ」と圧をかけてきそうな予感もあるし、隣国の商人オットーがどんな策略を巡らせているか分からない。
「よし、でも心配するのは後だ。今はこの勢いで豊作への準備を整えようぜ!」
俺は自分に言い聞かせるようにそう叫び、堆肥まみれになりながらスコップを動かす。
仲間たちと一緒に頑張れば、不可能なんてないって感じるんだ。
いつか必ず、この土地を最高の楽園に変えてみせる。
そう改めて決意を燃やす俺だった。
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