第6話
城の外の空気も一瞬で変わっていた。スター軍団が城に足を踏み入れた瞬間、現地スタッフたちの表情が一変し、無言のまま重厚な扉が閉ざされた。突然の出来事に、テレビ局のスタッフたちは何が起こっているのか理解できず、困惑の表情を浮かべる。
「ちょ、ちょっと待て!何をしてるんだ!」ディレクターの佐藤が声を荒げるが、返事はない。次の瞬間、黒装束に身を包んだ男たちが現れ、その冷たい眼差しを彼らに向けた。光る銃口がちらつき、一瞬で周囲の空気が張り詰める。
「どういうことだ…!」音声スタッフが小さく呟くが、答えはない。焦りの中、スタッフたちは頼りにしていた通訳兼現地ガイドのルジェリンを探すが、どこにも姿はなかった。
「ルジェリンはどこだ?」別のスタッフが声を掛け合い、動揺が広がる。だが、男たちは無言のまま手を挙げるよう指示し、反抗の余地を与えない。
「これは…やばいな…」佐藤の額に冷や汗が滲み、脳裏に不安が駆け巡る。瞬く間に男たちに囲まれたスタッフたちは、完全に追い詰められた状態に陥った。何が起こっているのかも分からぬまま、そこにいる全ての日本人達はそのまま連れ去られていった。
城の中では、スター軍団達が予期せぬ暗闇と閉塞に包まれ、パニックに陥っていた。
スタッフがいないと言うことは、今の状況は撮影されていない――つまり、今スター軍団がこの場所にいなければならない理由は一切存在しなかった。
宇宙は状況を冷静に分析しながら周囲を見回した。
「一体どんなトラブルだよ?とにかく何とかしてここを出よう」
と彼が言い、グループは慎重に数歩進み始めた。
その瞬間、床に倒れ込んだ照明機材と、頭から血を流す照明スタッフの姿が目に入った。光を反射する赤い染みがじわりと広がり、場の緊張は一気に高まる。
「大丈夫ですか?」kirara⭐︎が震える声で尋ねたが、返事はない。近寄って確認しようとした彼女の手が躊躇する。胸を突くような沈黙の中、仲間たちもその場に凍りついたように動きを止めていた。
翔一は瞬時に周囲を見渡し、さらに緊張した面持ちで仲間たちに言った。「誰かがここにいる。油断するな。」
そう言うやいなや、前方から自分ら以外の何者かの足音が複数聞こえてきた。
その足音は、重厚な石の床を踏むごとに響き渡り、暗い城内に不気味なエコーを残していた。スター軍団のメンバーたちは互いに目を合わせ、一瞬のうちに全員が背筋を凍らせた。
「これ、まずいですね…」颯太が囁くように言うと、遼がすかさず声を低めて返す。「とにかく、隠れる場所を探そう!」
全員が壁際に身を寄せて息を潜める中、足音は近づいてきた。やがて、松明の揺れる炎の光が廊下の角を照らし、黒い影が壁に映し出された。影の主たちは複数人で、話し声がざわつくように聞こえてきたが、その言葉は異国の言語だった。
翔一は肩越しに振り返り、小声でつぶやく。「これは、計画されてたものじゃない。何かが、本当におかしい。」
次の瞬間、影の一人が角を曲がり、スター軍団の視界に入った。黒装束に身を包み、鋭い視線を持つその人物は、彼らに気づくとゆっくりと口元に薄い笑みを浮かべ近付いてきた。
スター軍団たちは後ずさりしたが、もはや後ろに出口がないことは分かり切っていた。
万事休すと思われたその瞬間、怪物と呼ばれた芦毛の馬体のフレイムスターが強烈に嘶いた。
「ブッヒヒヒヒ〜〜〜ン!!」「グワッシャーーン!」
そのけたたましい叫び声と共に、20戦20勝の名馬は両後ろ足で入口扉を蹴り上げた。扉はもろくも壊れ、音を立てて飛び散った。
「うわ!でかしたフレイムスター!ありがとう!」と宇宙が叫ぶ。
しかし、フレイムスターはすぐにその場を離れ、スター軍団もまた逃げ出した。「今だ!早く行こう!」翔一が声を上げ、軍団は混乱の中、フレイムスターの後を追って駆け出した。
逃げ出すも束の間、舞妓姿のkirara⭐︎は下駄が脱げて転んでしまった。
「助けて!」彼女の悲鳴が響く。テロリストが彼女に近づいてくる瞬間、芦毛の馬体が帰って来た。古代の軍馬用の鉄仮面を被ったフレイムスターは、強烈なスピードでテロリストに頭突きを喰らわせ、テロリストは瞬く間に失神した。
その流れで、小柄なkirara⭐︎の帯を咥えると、自分の背中の上にめがけて跳ね上げた。(しっかり捕まってろよ!)と言わんばかりに、フレイムスターが振り向く。
驚きつつも、kirara⭐︎はその背中にしっかりと掴まる。「フレイムスター、すごい!ありがとう!」彼女は興奮と感謝で声を上げた。
他のメンバーも思わずその光景に目を奪われたが、逃げることが最優先だと判断し、急いでその場を離れた。フレイムスターが前方を駆け抜けると、スター軍団もその後を追うように走り出した。
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