第5話

メンバーが村から続く道を進む中、徐々に風景が変わり始めた。村の家々が少しずつ遠ざかり、周囲に広がるのは木々の緑と、草花が生い茂る小道だった。鳥のさえずりが心地よく響き、空には白い雲がのんびりと漂っている。


翔一が地図を見つめながら、「よし、城に向かうぞ。まずはこの矢印通りに進もう」と皆に指示を出す。颯太が「でも、歩いても歩いても城は見えてこないですね…」と少し不安げに言うと、大地が「まあまあ、焦ることねーでやんす。冒険はいつもこんなもんさな」と笑って応じた。


しばらく進んだ後、一行は少し広めの通りに出た。周囲には農作業をしている村人たちがちらほら見える。「このままだと時間かかりそうだな」と翔一がつぶやくと、kirara⭐︎が「誰かに聞いてみる?」と提案した。


「誰だよこの企画考えたの、せめて英語くらい通じる設定にしといてよ…無理か」宇宙がカメラにボヤくのを尻目にメジャーリーガーが動き出す。


翔一は近くで藁を束ねている年配の男性に歩み寄り、地図を広げて城の絵を指し示しながらジェスチャーで尋ねた。男性は一瞬目を細めて地図を見た後、小高い丘を指差し、何やら早口で言葉を発した。


「丘の向こうだってことかな?」翔一が首を傾げると、宇宙が先程のボヤきはどこ吹く風で「そうですね、さすが翔一さん!丘を越えて行けばきっと城が見えるはずだ!」と同意した。


「よし、それじゃあみんな、丘を登っていこう」と翔一が声をかけ、全員が足を速めた。丘を登る途中、草の香りと風のささやきが彼らの周囲を包み、少しずつ視界が開けていく。遠くの青空に霞む何かが、次第に城のようなシルエットを浮かび上がらせてきた。


「ほら、見えてきたぞ!」翔一が声を上げると、他のメンバーも一斉に顔を輝かせた。その瞬間、kirara⭐︎が思わず歓声を上げ、「すごい、本当にお城だ!」と指を差した。


その言葉に全員が興奮し、丘の頂上にたどり着くと、目の前には壮麗なお城の姿が広がっていた。高くそびえる石の壁と、優雅な塔が青空に映えている。


「よし!やっと着いた!」遼が拳を突き上げると、颯太も頷きながら「思ったより大きいですね」と感心したように呟いた。


「でも、どうやって入るんかな?」宇宙がふと不安そうに口を開くと、翔一が「そうだな、まずは周りを回ってみよう」と提案した。


一行はお城の周囲を探索し始めた。城の外壁はかなり年月を経た色合いで、さすがに王様達が住んでそうな気配はない。ただし、いくつかの目立つひびが入っているものの、その威厳は衰えていなかった。通路の隅には、小さな花が咲いており、自然の力強さを感じさせた。


「何か手がかりがあるやろー」と大地が城の入り口に近づき、周囲を見回す。すると、急に足元が崩れてバランスを崩し、思わず大きくよろけてしまった。


「大地さん大丈夫ですか?」颯太が心配そうに駆け寄ると、宇宙が笑いながら「さすが大地、腕を上げたな!」と冗談を言う。


「うるさい!でも、大丈夫だ。こっちにも隠れた道があるかもしれへんぞ!」と大地は恥ずかしさを隠すように立ち上がり、別の方角を指さした。


「それなら、そっちに行こう!」翔一が大地の提案を受け入れ、みんながその後についていく。彼らはお城の裏手に回り、そこにあった古びた扉を見つけた。


「この扉、怪しいね」とkirara⭐︎が警戒しながら言う。「本当に開けても大丈夫なの?」


「てやんでーい!止めねえでおくれ、おkira殿、冒険ってーのは、こういうのが面白いんでやんす!」と大地が言うと、みんなも苦笑いで頷いた。


翔一は扉の取っ手を回し、力を入れて引いた。扉はぎしぎしと音を立てながら開き、薄暗い空間が彼らを待ち受けていた。中は静まり返っていて、とにかく暗い。時折聞こえる風の音だけが響いていた。


「雰囲気あるなあ。ちょっと怖いけど、行こう!」翔一が先頭を切って踏み出すと、皆も続いた。薄暗い廊下を進みながら、彼らはお城の秘密を探る冒険に足を踏み入れていった。


しかしその時、翔一を前から映そうと翔一の前に出て光を当てていたテレビの照明スタッフに異変が起こった。


「うわ!なに!?」 「ゴン!」 


照明スタッフが転ぶ音がして、照明が消えた!

あたりが真っ暗になりスター軍団の視界は奪われた。


「キャー!!」kirara⭐︎の悲鳴が響く。


「やばい!引き返そう!」

翔一の慌てた声と同時に国民的スター軍団は入口めがけて引き返す。


「ボヨン!」「いて!」「ブヒヒーン!」

大地がフレイムスターの尻にぶつかった。


宇宙もさすがにツッコむ余裕はない。既に入口のドアは閉められていた。視界がない中kirara⭐︎が慌ててスマホのライトを点灯させ入口ドアを照らす。

 

遼が照らされた扉の取手を手に取り回そうとするが取手はビクともしない。


「くそっ、動かない…!」彼の額には薄い汗がにじみ、息が乱れていた。


その時、翔一が一歩前に進み出て、遼の肩に手を置いた。「遼、少し下がって。俺が試してみる。」その声は冷静だが、緊張感が漂っている。周囲のメンバーが息を呑み、静まり返る中、kirara⭐︎がスマホのライトで翔一の顔を照らした。


翔一は深く息を吸い、取手を力強く握りしめた。筋肉が緊張し、腕の血管が浮き出る。「頼む、開いてくれ…!」と心の中で念じながら、全身の力を込めて取手を回そうとした。


ギギ…と、扉が僅かに軋む音が聞こえた。メンバーの胸に一瞬の希望が芽生える。しかし、次の瞬間、扉は再び固く閉じ、翔一も思わず「ダメだ…」と息を漏らした。


「どうしよう…本当に閉じ込められたの?」kirara⭐︎が不安げに呟くと、真顔になった大地が「どうなってんだこれ?スタッフいないのかー!?」と怒声を上げ、辺りを見回し始めた。


大地の怒声が静寂を破ったが、返事はなく、ただ冷たい空気が一行を包み込むだけだった。kirara⭐︎のスマホのライトが揺れ、メンバー全員の不安そうな表情を照らす。翔一は再び扉を見つめ、緊張を隠せないまま息を整える。「ここからどうする…?」誰もがその問いに答えを持っていなかった。


薄暗い廊下に微かな風の音が響き、静寂が再び降りると、まるで城自体が彼らの動向を見守っているかのようだった。

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