第3話
一行がガレファルドことシャルハム王国に到着したのは、夕暮れ時のことだった。果てしなく広がる平原がオレンジ色に染まり、砂漠のように乾いた大地は、まるで大自然そのものが溜息をついているかのように静かだった。遠くには影が長く伸びる丘が点在し、風が穏やかに吹き抜け、乾いた草が波のように揺れる。
フレイムスターは、まるで大地の精霊かのように草原の上を軽やかに駆け回り、その引き締まった馬体が黄金色に溶け込んで見えた。
「見てくださいよー、あの広大な大地!まるでお伽話の中に迷い込んだみたいでやんすねぇ!」羽織をはためかせながら、落語家のような語り口で大地が声を張り上げた。
その朗々とした声が静寂を切り裂き、遠くの地平線へと吸い込まれていく。フレイムスターもその声に応えるかのように、興奮気味にステップを踏んでいる。草の間に咲く小さな花々が夕陽を受けて輝き、大地全体が微笑んでいるようだった。
「いやあ、まるで西遊記の一幕みたいだな…そして、ここでは顔的に孫悟空役は俺かな」宇宙が冗談交じりに言うと、忍者姿の遼が小さく笑って応じた。
「じゃあ、俺は沙悟浄ってとこかな?」遼は顔に忍び笑いを浮かべ、村を指差して言った。「進もう、あの村へ!もしかしたら温かい料理が待ってるかもだし。」
舞妓姿のkirara⭐︎は、そのやりとりを聞くや否や、目を輝かせてフレイムスターに駆け寄り、厩務員に「ねえ、私、三蔵法師みたいにフレイムスターに乗って行きたい!乗り方を教えてくれる?」と頼み込む。
けれども、フレイムスターはどこ吹く風といった様子で、嬉しそうに跳ね回り、kirara⭐︎の期待を無視して彼らの足元を軽やかに駆け抜けていき一行は一同に笑った。
夕暮れの光に包まれ、仲間たちはその場に溶け込むように静かに歩みを進めた。広がる自然の壮大さに圧倒されながらも、彼らは互いに笑い合い、冒険の匂いに心を踊らせる。村の屋根から立ち上る煙が目印となり、まるで手招きするかのように一行を迎え入れているようだ。
彼らは地平線の向こうに広がる新たな旅路を見据え、シャルハム王国の初めての村へとその一歩を踏み出していった。
村に足を踏み入れた瞬間、色鮮やかな光景が一行の目に飛び込んできた。村人たちは皆、独特な民俗衣装を身にまとい、広場に集まって一行を出迎えている。長い刺繍入りのローブや、鮮やかなスカートとショールに装飾された衣装はどれも手作りのようで、鮮やかな花や幾何学模様が刺繍されている。頭に花冠を飾った女性や、この国独特の帽子に、揺れる鈴のついたアクセサリーをつけた子供たちが一行を囲むと、幻想的な雰囲気が広がった。
「うわ!何だ?みんなすごい衣装着てる…何かの儀式の最中なのか?」翔一が目を丸くしながら周囲を見回し、驚きと興奮の入り混じった声を上げた。
「確かにっすねー、よそ者を生贄にーとかじゃなくて結婚式とかならいいけどー」と大地も目を白黒させながら、村人たちの衣装を眺めた。「これだけ手が込んだ衣装、見たことないなー」
すると、長老らしき男性が一歩前に進み出て片言の日本語で「オー、ヨーコソ!…ガレファルドの村、ハルバル、来てくれて…ウレシイ!」とぎこちない挨拶をすると、宇宙がほっとして思わず笑い声をこぼした。
「片言でもちゃんと伝わってくるな、歓迎してくれてるのが」と宇宙が微笑むと、kirara⭐︎も「ありがとうございます!」と元気よく返事をし、フレイムスターも鼻を鳴らしながら楽しそうに周りを見渡した。
その時、颯太が一匹の犬に目を留めた。犬も村の民俗衣装をまとい、花冠までつけられており、颯太に気づくとしっぽを勢いよく振っている。「わぁ!この犬も衣装を着てますね!すごい可愛いです!」犬好きな颯太は嬉しそうにその犬を撫でながら、満面の笑みを浮かべた。
「本当に…この村…犬まで俺よりオシャレやなー」と大地が笑顔で呟くと、翔一も「確かに、ここの歓迎の気合いはすごいな」と感心した様子で周りを見渡した。
一方、村の子供たちは一行の衣装に興味津々で、指を差しながら「キレイ…ナニ?」と尋ねてくる。kirara⭐︎が「これは着物なんだよ」と微笑みながら答えると、子供たちは「キモノ…?キレイ!…」と驚きの表情で目を輝かせた。
颯太がその様子を見て「私たちの服も珍しいみたいですね」と嬉しそうに笑うと、犬も颯太の膝の上に前足をかけて一緒に笑顔を見せるようだった。「本当に、日本語も勉強してくれたみたいだし、村の動物までもが歓迎してくれる感じがするな」と彼は和やかな雰囲気を感じながら犬を撫で続けた。
「タベル、オイシイ!」と片言で案内された先には、村で採れた新鮮な野菜や果物、伝統料理が並ぶテーブルがあった。kirara⭐︎が「わぁ、美味しそう!」と目を輝かせると、村の女性たちも「オイシイ、ゲンキ…タクサン…ドーゾ!」とにこやかに勧めてくれる。
その夜は国際交流の大宴会となり、日本人の面々はそれぞれの得意分野の出し物を披露した。中でも遼の様々なトリックを織り混ぜたリフティングと、klrara⭐︎の歌、村1番の馬とフレイムスターの競走、村の子供達の合唱、トンチキクルーの物ボケが大きく場を盛り上げて、大盛況のパーティーとなった。
「こんな素敵な歓迎を受けるなんて、俺たちも頑張らないとだな、明日は宝探しの旅本番だからな」と宇宙がふとつぶやくと、他の皆も頷き、各々旅への決意を新たにするのだった。
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