第2話

番組序盤の収録が一通り終わると、豪華なディナーパーティーが船上で始まった。国内の一流料理人たちが手がけた料理がテーブルにずらりと並び、フレンチ、和食、中華など、どれもが目を引く逸品ばかりだ。煌びやかな照明の下、メンバーやスタッフたちは互いに杯を交わし、収録の緊張から解き放たれていた。


実はこの「未知なる国ガレファルド」というのは、視聴者向けの演出だった。実際には日本と国交の深い中東の小国「シャルハム王国」で、王様をはじめとした政府高官たちが国のPRのために今回の旅番組に資金提供し、全面協力を約束している。だが「冒険企画」の体裁を保つため、メンバーたちには番組スタッフからまだ詳細な説明はされていない。


「こんな時代に一体いくら金かかってるんだろうな?この企画…。しかも未知の国ガレファルド…って、何つーか、凄いざっくりした設定だよね。」星野宇宙が苦笑しながらグラスを持ち上げる。


「でも、その緩さが面白いんじゃないか!?まるでゲームの中に入ったみたいで!」大地光は満面の笑みを浮かべ、すでにテンションが高い。


「確かに、こういうドキドキ感は悪くないね!」遼はそう言いながら、目の前の料理に箸を伸ばしている。


この旅企画の趣向は、参加者たちが「冒険家」として様々なコスチュームをまとい、宝探しに挑むというものだ。遼は忍者、翔一は侍、颯太は神主、Kirara⭐︎は舞妓、宇宙と大地は落語家という姿で、フレイムスターには勇ましい軍馬の装いが施されることになった。


「僕が忍者ってことは、やっぱりこっそり動き回るのが役目ってことですかね?屋根に登ったり、水に潜ったり大変そうですよね。怪我したらヤバいんだけど。」遼が冗談めかして言うと、周囲が笑いに包まれる。


「いや、颯太さんの神主も気になるでしょ。将棋盤持って神社で礼儀正しく構えてたりするの?あ、神社はないか。」宇宙が茶化し気味に話しかけると、颯太は微かに笑みを浮かべる。


「それはそれで面白いかもですね。将棋の棋譜でも呟きながら、将棋盤持って儀式っぽいことをやってみますか。」颯太もノリを合わせて答えた。


「みんなの特技を使ってどうやって現地の人たちと交流するかも考えどころだなあ」大地が意見を出すと、宇宙も頷く。


「確かに通訳なしでどうするかってのは大きな課題だけど、それが面白い所でもあるよね。言葉が通じなくても、身振り手振りで乗り切ろう!」と翔一は意気込んでいる。


「じゃあ、私は歌で勝負ですね!異国の人たちにも心を動かすパフォーマンスをお届けしちゃいます!」Kirara⭐︎は笑顔で、やる気満々だ。


「とりあえず、こう言う場なんで一曲歌ってもいいですか?」


Kirara⭐︎は自身のyoutube3億回再生の代表曲「ルビラビ⭐︎」を踊りながら熱唱する。誰もがこれからの旅企画の楽しさを予感させるような素晴らしい歌声に感動し、パーティーの盛り上がりは最高潮に達した。


その後、皆がそれぞれの役割について意見を出し合い楽しげに話が弾む中、遠くから、いつもより美味しいカイバを貰ったフレイムスターがヒヒーンと勢いよく鳴き、再び場の雰囲気を和ませた。


船は明日ガレファルドに到着する。

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