7話 今回の餌食
「ぎゃあああーー!! お顔がよすぎるううう!! てえええええええ!!」
「てぇの限界突破で
冒険者ギルドで“依頼を受ける”を選択してマップに示された、依頼者の位置へとやってきた。
街の入り口から遠目に見えていた、公的機関が多そうなエリア。
神殿だったり、家というよりは施設的な建物が多い。
エリア周辺には割と警備もいて、どうやら冒険者登録してギルドカードを入手しないと入れない……という設定だったようだ。
そしてそして、我がイケメンセンサーは絶好調!
現地に到着すると、つい歓喜の舞を踊りたくなった。
地図のガイドが示すそのお人は、水霊族の神官風美青年。
謎の触覚や、蛇っぽい眼というのか……眼の感じが人外さを醸しつつ、青肌のスラッとした体躯。
整った顔立ちからの憂いを帯びた表情。
銀の長髪が顔にはらりと掛かり、さらに憂いを加速させる。
神官服でゆったりとした服装だが、イケメンセンサーで見た限りやや筋肉質な体つき。戦闘もこなせると見た。
袖からちらりと見える手の甲には若干の鱗。それすらもセクスィー。
もう、ビジュアルが大優勝!! 天才!!
このままログアウトしても今日の収穫はバッチリである。
「我がブラヴェ人生に一片の悔いなし」
「悟るには早すぎですわ」
遠目からオルドフォンスさんを拝みつつ、依頼をきちんと受けるには話し掛けねばならない。
高鳴る胸の鼓動をなだめながら美形水霊族を視界に捉えると、さらに悶絶しそうになった。
「……?」
「(てぇ……ムリ、ビジュが良すぎる……。っ、キレそう……)」
「(お姉さま、しっかり!)」
夢女子的妄想だと、イケメンのことは『見上げる』ことが多い。
だが、今はどうだろう?
年齢不詳な、私を
この、角度っっっっ!!
推しカプでいうところの攻めの特権ってやつ!?
彼らはいつもこんな角度から見ているというのか。
こんな喜び、発見……このゲームと出会わなければ味わえなかった!!
壁だ、今すぐ壁が必要だ!
壁を背に迫られ顔を赤らめる彼の顔が見たい……!
誰かー! この辺にお手隙の壁はいませんかー!?
「(も……マジムリ……、好き……)」
「(落ちるの早すぎですわ、お姉さま!)」
どこかに飛んでいきそうな思考を引き戻すため、ヤナが私の足をヒールで踏みつける。
『痛み』。
それは普段であれば決して相いれないものであるが、時としてこれほどまでに己を奮い立たせるのかと驚いた。
──そうだ。
私は腐女子であり、
攻めの視点を味わいつつも、夢成分も補給せねばならない。
攻めるだけではなく、攻めてもらわねばならないのだ!
とにもかくにもフラグという名の好意を打ち立てなければ──
「っ! あ、あなたがっ、オルドフォンス殿かな?」
「? いかにも」
あ~~~~~~お声もイイですねぇ~~~~!!!!
厳格そうな低い声は、ドS。あるいは真面目一途で表には出さないが実は嫉妬深いかのどちらかと予想する! いや、所望する!! そうであってくれ、頼む!
そして私がヘマをした時に「やれやれ」と言いつつ助けに来たかと思いきや、「心配で夜も眠れなかったぞ……」なーんて顎クイされて言われた日には、ブラヴェ運営に信仰値MAXだね!
妄想はかどる~~~~。感謝。
ありがとう、ブラエ・ヴェルト。
「わたくしたち、冒険者ギルドで依頼を拝見しましたの」
「! ああ、冒険者だったか」
まさかの冒険者認定されていなかった私たち。
「(なぜだ……?)」
「(お姉さまが挙動不審過ぎたからに決まっているでしょう)」
呆然としながらも依頼について聞くことに。
「依頼を引き受けてくれて感謝する」
「んっっ」
「(いちいち興奮しないでくださいな)」
「さっそくだが、君たちには魔物の討伐を依頼したい」
「討伐?」
「依頼の説明に書いてありましたわよ」
なんでも、水の神に仕える神官であるオルドフォンスは、あの湖面にぶっ刺さった神器──グオ=ラ・クリマというらしい──周辺の治安維持を担当しているらしい。
冒険者たちはもちろん、神殿騎士のような治安維持組織もいるらしく、関係各所との連携を担う高位神官のようだ。
顔がいいだけではなく、権威もあると。
スパダリ属性である。
推せる。
ブラエ・ヴェルト内の推しキャラランキング、暫定一位に浮上!!
いや、まだ一人にしか出会っていないんだけども。
あ、道行くイケメンには一人会ったか。
「近頃魔物が多くてな。よろしく頼む」
「貴方のためなら、一肌でも二肌でも脱ぎま」
「はいはい、行きましょうねお姉さま」
「?」
ざっと説明を聞くと、依頼の情報が追加された。
それを選択すればマップ上に大体の該当エリアが記される。
「ほな」
「行きましょか」
冒険者登録後初の依頼。
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