5話 大事なのは心、ってわけ
「THE ギルド」
「うむ」
RPGで定番の施設、ギルド。
と言ってもただの『ギルド』だと、いろいろあると思う。
こういった冒険者が集まるような公的なギルドは、大きな組織である『冒険者ギルド』。
冒険者登録をした者たち同士が結成したチームが『クラン』で、その上位組織が『冒険者ギルド』というわけだ。
プレイヤー同士で結成するクランには独自の名前を設定したり、俗称として『チーム』と言ったりするようだ。(※インフォより)
初心者の手引き的なインフォで、まずは冒険者登録をしよう! とあった。
ので、道行くイケメンNPCを捕まえて冒険者ギルドの場所を聞き出し現場へとやってきた。
さすがに人目が多かったのでイケメンNPCに壁ドンはできなかった。無念。
「でかー」
「こう、VRとして実際の縮尺で見ると、本当に大きい施設なんだなって改めて思うわ。見下ろし型じゃ中々分かんなかったよな」
「じゃあ、こっからはちゃんと
「おうよ」
私は『エルフのイケメン騎士~ヒーラーの姿~』役。
ちょっぴりクール(?)、ちょっぴりオレ様な話し方が特徴。
ヤナは『美女夜人~ダメージソースを添えて~』。
上品なお姉さん系プレイヤーを目指しているらしい。
それぞれ言葉遣いからしっかりとなりきっていく。
なりきれているかは関係ない。
なりきろうとすることが大切なのだ。
決意を新たに冒険者ギルドの中に入ると、中は人、人、人!
オンゲのオープン日だから当然といえば当然だが、面白い光景だ。
「クエストボード的なやつにー」
「食堂的なやーつ」
《……》
ヤナとあちこち見ながら発見したものを報告し合う。
今日全部を見て回ると人酔いしそうだ。
とりあえずざっと目視で場所の確認。
「並ぶのおもろいな」
「そうですわね、お姉さま」
冒険者になるための受付窓口はいくつかあり、その内の一つの列に並ぶ。
通常のMMOだと、NPC一人に対して同時進行でいろんなプレイヤーのイベントが進行する。こうして一人のNPCに対して、一人のプレイヤーにしか反応しないというのはVRMMOならでは。リアルと錯覚してしまうのも無理はない。
十中八九、チュートリアルを受けた状態だとここが別次元になり、一々並ばずに冒険者登録できたと思う。まぁいいさ。気長にやるんだ。
列に並んでいるプレイヤーは、チュートリアルをすっ飛ばしたお仲間ってわけ。
謎の連帯感が生まれているのか、列を乱す者は皆無。
仮にここで功を焦れば、「おい、見ろよアイツ。チュートだけならまだしも、列にも並べないなんてとんだせっかちさんDAZE☆」の烙印を全プレイヤーから押されることになるのだ。
さすがにゲームスタート初日なので、見た目が派手……もとい、強そうな装備の者はいない──かと思われたが、稀に紛れている。
おそらくNPCだろう。
冒険者にもNPCって存在するんだ。理解。
「ねぇお姉さま」
「なんだ、魔女よ」
「誰が魔女だよ」
「どうした、柳丸よ」
「このゲームって、
「さてな」
「やっぱりここからリスタートとかでしょうか」
「んじゃ、一回逝っとく?」
「いいや、生きる!」
良い感じにキャラ立ちしたかと思えば、ちょーっと軽口叩き合うとすぐにボロがでる。
まぁ他の誰かと組むわけじゃないし、いいのだ。
なりきれているかは関係ない。
なりきろうとすることが大切なのだ。
大事なことなのでセルフリマインド。
「──次の方、どうぞー」
「我らの出番だぞ、魔女よ」
「はいはい」
列は意外とサクサク進み、あっという間に自分たちの番に。
水霊族の受付のお姉さんに冒険者登録の旨を伝えると、これまたサクサクと説明に進んでくれた。
話が早い。非常に助かる。
「冒険者登録の説明をお聞きになりますか?」
「? ああ、頼む」
言って気付いた。チュートリアルと同じく、この説明も任意というわけだ。
あとでインフォでも確認ができるだろう。
「かしこまりました。登録は無料で承っております。まずはランクのご説明をいたしますね。冒険者ランクはレベルと同じように、一定の依頼をこなしていただくと徐々に数字が上がっていきます」
「「ほうほう」」
「現在お二人は《見習い》ですので、まずは《初級》にあたるランク【10】を目指すのを目標にしてはいかがでしょう」
「じゃあ今は俺たち、冒険者ランク【1】ってことか?」
「はい。そのとおりです」
「なるほどね」
冒険者ランクは数字で表され、大まかな強さの指標として見習い、初級、中級……みたいにランク層があるわけか。1~9が見習いってことは、10~20辺りが初級だろう。
「依頼はあちらの依頼ボードから、ランクに応じた依頼を受けることができます」
「「うむ」」
「一定数依頼を達成すると冒険者ランクが上がり、ランク【9】に到達してまた依頼をこなしていただくと昇級試験を受けることができます」
「なる。試験を突破しないとランクが上がらなくなるってわけ」
「そのとおりです」
その辺はなんとなく他ゲーと同じ感覚。
要はたくさん依頼を受けて、お金を稼ぎつつ装備を充実。さらに試験を突破し、上を目指そう! というわけだ。
「まずは《見習い》の方が受けることのできる依頼を、いくつかこなしていってくださいね」
そういうと受付のお姉さんはどうやって情報を得たのか等お構いなしに、いつの間にやら二人分のギルドカードを渡してくれた。
VRMMOでなくとも実生活で体験できる『必要書類の記入』を省いてくれるのは、大変助かる。
その他施設内のことをいくつか説明してくれて、依頼を達成したら報酬を渡すのでまた来てくれと言われお姉さんと別れた。
やはりというか、インフォには冒険者の手引きなるものが追加されたのでいつでも確認可能だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます