第6話 舞姫

 わらわは好いとる人がおる。その人は、、、とっても笑顔がまぶしくて、わらわを一番に考えてくれる。出逢いは突然だった。いつものように城を抜け出し、、森を探索してると、そやつはいた。


「こらっ!ここで寝ると風邪引くぞえ」


 年は20位、顔は私好みだが、体は傷だらけ、、、

声をかけても返事もしない、、、死んどるのか?胸に顔を近づけてみると、かすかな鼓動は感じる。

しかたなく、ここで見て見ぬ振りをしては後味が悪いので、城に連れて帰ることにした。


 それから3日が過ぎ、、ようやく、そやつが目を覚ました。


「はぁっ!ここはどこだ!」

 細長の目を見開き、わらわに問いかける。

「ようやく起きたかえ」

「あのまま、ほっといたら、そなた死ぬところじゃ

 たぞ」

「誰が助けてくれと言った!」

 敵対心むき出しで、その男は声を荒げていた。

「死ぬのは勝手だが、わらわが生かしたことにケチ

 をつけるねではない!命を軽じるな!」

 それ以降そやつは、黙りこんでしもうた。

 これが、そやつとの出逢いである。


 それから2年がたち、行くあてもなさそうだったので、わらわの世話係としてそばに置いてやった。

名前も新しくつけてやった。島次森で見つけたから「しまじろう」我ながら良い名を与えた物だ。


 「しまじろう」は単純すぎると笑っていた。

わらわは、「しまじろう」の笑った顔が好きだ。

このまま、この日常が永遠に続けば良いと思っていた。


 だが、、、そんな日常は長く続かなかった、、、


 わらわの嫁入り先が決まった。「しまじろう」と離れとうはない、、隣国の殿様は嫉妬深く、何人もおなごを囲っていると噂でよく聞く、これは政略結婚。家の為とは言え、もう「しまじろう」と逢えないのは辛い。


 日に日に思いは溢れ出る、「しまじろう」が

優しくすればするほど胸が張り裂けそうだ、、


 嫁入りが近づいたある日、「しまじろう」と

言い合いになった。こんなことを言いとうわない、

想いと言葉が逆になる。


 こんなわらわが嫌で「しまじろう」の腕を振り払い城を抜け出した。


 どこまで歩いてきたんだろう、気がついたら、

「しまじろう」に初めて出会った場所にきていた。

バカなわらわじゃ、「しまじろう」がいるはずもないのに、、、


 もう夜も遅い、、涙ぐんだ目を着物の袖でふき

いつものおてんばのわらわに戻ろうと気持ちを切り替えた。


 そして、戻ろうとした時、、、カサカサカサ、カサカサカサ何かの気配を感じた。もしかして「しまじろう」が探してきてくれたんかえ、、わらわの口角が少しあがる。


「がるぅーがるぅー」


 違った、、目の前には野犬の群れ野犬は飛びかかってきた、必死に逃げた。でも、、どこに逃げる四方に野犬に囲まれて逃げる場所なんてない。


 腕を噛まれ足を噛まれ、立ってるのも辛い。

なんとか短刀で一匹を刺し、なんとか逃げ道を

見いだした。でもそこまでだった、、足はもつれ、急な下り坂で転げ落ちた。野犬からは逃げきれたが、もう立つことすらできない。無意識に「しまじろう」と叫んでいた。


 気付いた時には誰かが、わらわを抱きしめて

くれていた。

「姫様、ここは危険です」

 わらわが愛するひと、、、来てくれたんかえ

「わらわは、しまじろうが見つけてくれると

 信じていた」

「なんて、バカなことを、、、」

「わらわは、しまじろうと離れとうはない」

「姫様、しっかりしてくだせい」

「わらわは、しまじろうと共に生きた時間が幸せ

 だった、わらわはもうだめじゃ」

「なにを弱気なことを今、助けを呼びますので」

「行くな、しまじろう」

「最後はしまじろうに抱かれて死にたい」


 わらわの愛しい人、そんな悲しい目をするな

もう一度、まぶしい笑顔をわらわに見せてくれんか

こんなところで死にとうない、ずっと一緒にいたかった。


「しまじろう、次の来世があるとすれば、身分なんて関係ない夫婦になってくれるか?」

「あっしで良ければ、何度生まれ変わっても姫を

 見つけてみせます」

「ありがとう」


 その言葉で夢は終わる。叶わぬ恋、せつない恋、悲しい恋。最後の「ありがとう」が頭になんども響くだからでしょうか?「ありがとう」って言葉が

凄く大切な言葉だと思うのは、、、


続く






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