第3話 しまじろうの記憶
意識か薄れていく中、その晩、夢を見た。
とてもリアルで遠い記憶のような気がする。
「しまじろう」「しまじろう」
「姫様、堪忍してください」
「わらわは嫁に行きとうない」
「親方様にしかられます」
ただをこねる、姫様はおんとし15歳、3日後に
隣国のお殿様に嫁がれる身分の方であります。
あっしは、姫様の世話係、行き倒れのところ
姫様に救っていただいた、ご恩があります。
姫様には、本当に幸せになってほしい。
「しまじろう、なんでわらわの気持ち、何もわかってくれない、、、もう知らない」
姫様は癇癪を起こされ、その場をあとにされました。実のところ、姫様の気持ちは気付いていました。でも、あっしに何ができようか、、好きな人に好きと言えない、この時代、自分の気持ちを殺して生きていくしかない。
ただ一つ、姫様の幸せを願って。
姫様が出ていかれ、夕暮れ時あっしは、お腹がすいたら帰ってくると思い気楽に考えていたが、まだ戻ってこない、、、一瞬嫌な予感が頭をかすめ、私は気付いたら走っていた。
「姫様、姫様」
声を張り上げて、呼びかける
御屋敷の周辺は探した。でもいない、まさか、あの森に迷いこんだんじゃなかろうか、、、
あそこは野犬の住処、かわよいおなごが生きてかえれる場所じゃない。
どれ位、暗い森を彷徨っただろうか、、
あっしの名前を呼ぶ、か細い声が聞こえる
「しまじろう、しまじろう」
とっさにあっしは、姫様を抱きしめる
「姫様、ここは危険です」
「わらわは、しまじろうが見つけてくれると
信じてた」
「なんて、バカなことを、、、」
「わらわは、しまじろうと離れとうはない」
冷静になって姫様を見てみると、着物ははだけ
体のあちこちに野犬に噛まれた後がある
こんな小さい体で命からがら逃げてきたのだろう
「姫様、しっかりしてくだせい」
「わらわは、しまじろうと共に生きた時間が
幸せだった、わらわはもうだめじゃ」
「なにを弱気なことを今、助けを呼びますので」
「行くな、しまじろう」
「最後はしまじろうに抱かれて死にたい」
あっしは力強く姫を抱きしめていた、もう前なんか見えない大粒の涙がこぼれ落ちる。
だんだん弱くなる姫の鼓動。
「しまじろう、次の来世があるとすれば、身分なんて関係ない夫婦になってくれるか?」
「あっしで良ければ、何度生まれ変わっても
姫を見つけてみせます」
「ありがとう」それが姫の最後の言葉だった、、、
続く
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