ポイント談義

「荷物の整理が済んだら連絡をくれ」

 生徒会の二人は、そういって帰ってあった。

「CPと引き換えに、うちの者が引き取りに来るから」

「そっちはそっちで忙しそうですもんね」

 彼方は、頷いて見送った。

 会話の合間に確認したところ、生徒会保有のCPは「全生徒が獲得したCPと同額」だそうた。

 生徒たちが活躍してCPを稼げば稼ぐほど、生徒会も潤う、という構図であり。

「そりゃ、生徒会としても生徒たちを支援するしかないし、そのためにはばら撒きとか還元をするわな」

 遥は、そう感想を述べる。

「そもそも、CPってなんなんでしょうね?」

 生徒会の二人が去ってから、仙崎が疑問を口にした。

「PPは、わかるんです。

 スキルを買ったりジョブを変えたりするのに必要で、そういうのは、ゲームなんかでもありがちだから」

 システムのヘルプによると、PPは「personal point」の略、CPは「community point」の略、とあるだけであり、それ以上に詳細な説明がなかった。

「コミュニティ。

 確か、共同体とかいう意味だったと思うけど」

 彼方が、首を傾げる。

「漠然としているよね。

 具体的には、なにを指すんだろう?」

「ポイントの増え方から考えると」

 恭介が意見を述べる。

「転移してきた生徒たち全員、ということではないかなあ。

 全員に有益な行為をしたとシステムが判断すれば、ポイントが発生する」

「それが通貨代わりになっている、ってか」

 奥村が軽く顔をしかめた。

「誰かのために行動すれば自動的に儲かるってんなら、犯罪者ほど損をしていくことになるな」

「モンスターを倒すとCPが貰えるのは、それがコミュニティ、つまり、生徒たち全員の利益になるから」

 仙崎が、続ける。

「ただし、個人がスキルなんかをつけるためには、別基準のポイントが必要となる」

「ゲームっぽい部分もいっぱいあるけど、そうでもない部分もある」

 赤瀬がいった。

「要は、自分のことだけやってちゃ駄目って、そういうシステムなんでしょ?」

「そのシステムによってわたしらの行動を規定されているようで、正直、気に食わない部分もあるけど」

 今度は遥が意見を述べる。

「みんな仲良く、って指針自体は反対できないしなあ。

 ま、現状、この線に沿って動くしかないっしょ」

「なにより、CPで購入できるものが魅力」

 平坦な口調で、緑川が結論した。

「食糧、衣服、日常雑貨、それに、武器。

 買えないものが、ほとんどない」

「値段も、まあこんなもんか、って感じ出しなあ」

 彼方がいった。

「物によって多少変わってくるけど、だいたい1CPが日本円で1円相当。

 になると、思うけど」

「武器、特に銃器は高めに感じたな」

 恭介が経験から得た実感を口にした。

「銃一丁、ン十万単位だし。

 銃も高いが、弾丸も高い。

 撃ちまくっていると、あっという間にン十万単位が飛ぶ」

「そんなに高いのか?」

「散弾銃用の弾丸はそんなにでもないけど、徹甲弾とHEAT弾は単価が高い。

 それに、連発できるアサルトライフルとかは、消費がマガジン単位だし」

 トライデントの場合、罠師である彼方が際限なくCPを稼いでくれ、なおかつパーティの資産を共有にしていたので、容赦なく消費したわけだが。

 もしもそうした条件がなかったとしたら、恭介も別の手段を採用したはずだ。

「現代兵器って、お金がかかるんですね」

 仙崎が深々と頷いた。

「その点、魔法使いは、経済的。

 事実上タダみたいなもんですから」

 実際には魔石を消耗するのだが、その魔石も、モンスターを倒せば獲得出来る。

 経済的、ではあるだろう。

「そういや、魔法少女隊、資産管理どうやってるの?

 うちは、資産もCPもパーティ全体共有してプール、なんだけどさ」

「うちらは、資材は共有、CP折半ですね。

 半分パーティに入れて、残りは好きに使うって感じで」

「普通のパーティは、そんな感じになるんじゃないかな。

 高価な装備品とかアイテムってあるから、そういうのはパーティ共有の財布から出した方がいいだろうし」

「そういえば、錬金術のレベルをあげると、杖のアップデートも出来るようになるんですよ!

 魔法の増幅効果が大きくなるっていう」

「杖、新調したのかと思っていた。

 長くなって、余計な装飾がゴテゴテとついてるし」

「なんか、魔石の属性によって、杖の育ち方も違うみたいですね」

「それ、アップデートするの、PP消費?」

「アップデートするときに、PPと魔石、それに、CPも持っていきます。

 それに、魔法を使用時の魔石の消費量も、格段に増えます」

「大食らいってわけか。

 でも、威力を考えると……」

「火力が、段違いになりますからね。

 つぎ込んだ分は、活躍してくれる形になります」

「コスパはともかく、ケチってもいいことはない、か」

 魔法少女隊四人の属性魔法は、割合融通が利く魔法であるらしい。

 使用者のイメージ通りに、出力や形状を変えることが可能。

 ただ、杖の性能は最大出力に直結する。

 今のように、どんな敵が出て来るかのか判然としない状況だと、下手にケチったおかげで命取りにもなりかねない。

 その大出力のおかげで、恭介が苦戦していた超大型も一撃で屠れたわけであり。

 余裕は、あるに越したことはないのだった。

 魔法少女隊は、杖の他に、お揃いのローブを入手していた。

 魔力耐性と物理耐性に優れた、魔法職のみに着用が許されるローブで、ご多分に漏れずかなり高価だった。

 ただ、魔法職が着用可能な防具類は極端に少なく、今の時点では、実質的に他に選択肢がないのだ、という。

「あ、その剣かっこいい!

 おれが買うから取っといて!」

「これ、マーケットの査定でも二千万CP以上するんですが。

 今の岡崎先輩に、支払い能力あります?」

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