第4話

 ユリウスと組むことになって、まずは装備や道具を揃えようという話になった。回復役といえど、彼女自身の防具や魔道具が必要だし、俺も旅の用品がまだ足りない。


「レンさま、私、道具屋の場所はだいたいわかりますわ。ご一緒してくださる?」


「もちろん。俺も街をあちこち見て回りたいし、よろしくな」


 さっそく大通りを歩いていくと、露店がずらりと並んでいて、面白そうな品が山ほどある。ユリウスが目を輝かせながら店先を覗いて回るので、俺はつい微笑ましくなった。


「この魔道具、どんな効果かしら……?」


「ちょっと貸してみ。俺の虚無理論で解析できるかもしれないから」


 その道具は、簡易的な火起こし機のようなものだったが、魔力を注ぎ込むと多少火力が増す程度の代物だった。俺が大げさに「何だこれ、しょぼいな~」と言うと、店主が苦笑いしている。


「まあ、実用性はあるが珍しさはないね。もし買うならかなり勉強するよ」


「だったらもうちょっと安く……って、ユリウス、値切りとかできる?」


「おほほ、実は得意なんですの。お店の方、これを○○コインまでお安くしていただけません?」


 優雅なお嬢様口調で交渉するユリウスに、店主は最初目をぱちくりさせていたが、いつの間にか笑顔で値引きに応じてくれた。


「さすがユリウス! お嬢様の説得力、侮れねえな」


「ふふ、ありがとうございますわ。これで出費が少し抑えられましたわね」


 そんなやり取りをしていると、街の人たちの視線をやたら感じる。そりゃあ俺みたいな軽装鎧の青年が、美少女神官を連れて歩いていたら目立つのも当然だろう。


「レンさま、何だか人がたくさんこちらを見てますけど……」


「そりゃ、ユリウスみたいに可愛い子を連れてたらさ、興味もわくってもんだろ。……ん? 待てよ、何か怪しい連中もいないか?」


 ちらっと周囲を見ると、何やら小太りの男――グローマ伯爵の配下らしき者が、こちらを伺っているように見えた。あの伯爵ってのは街でも有力者らしいが、悪い噂が絶えない。


「レンさま、あちらの方たち、何だか怖い表情ですわね」


「だよな。近々、俺たちに何か仕掛けてくるかも……ま、先手を打つに越したことはない」


「先手、ですか?」


「ああ。どうせなら、こっちから動いてやろうぜ! 破滅フラグを折るのが俺のモットーだ」


「よくわかりませんが、レンさまがそうおっしゃるなら」


 ユリウスは少し不思議そうな顔をしつつも、笑顔で頷いてくれた。俺は自分のゲーム知識と、この“虚無理論”を最大限に使って、嫌なイベントを先回りして攻略してやる。そう意気込む気持ちが、今の俺を奮い立たせていた。


 買い物を終えた俺たちは、早速ギルドで何か動ける依頼がないか調べるつもりだ。なるべく戦力アップも図りたいし、仲間を増やすチャンスがあれば逃したくない。いよいよ物語が動き出しそうな予感がする。

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