第3話

 俺は冒険者ギルドに駆け込み、真っ先に受付へと向かった。そこに立っていたのは痩せ型で灰色の髪をオールバックにまとめた男――リュカ・バニング。見た目はクールそうだが、結構仕事は迅速らしい。


「……用件は? 冒険者登録か? それとも依頼か?」


「まずは登録で。ついでに強い仲間が欲しいんだわ。特に回復系が得意な人ってどこかにいない?」


「回復職か。だが優秀なヒーラーは引っ張りだこだ。高額の報酬を提示できるなら別だが……」


 リュカは皮肉屋っぽい口調で淡々と伝えてくる。まあ、その通りだよなと納得しかけたところ、リュカが何か思い出したように声を低めた。


「街外れの教会に、ユリウス・エリュシオンという神官がいる。まだ若いが、腕前は一流らしい。あまり金銭を求めないことで有名だし、当たってみてもいいんじゃないか」


「お、マジ? それはありがたい!」


「まあ、噂だからな。実際に行って確かめろよ。俺はあまり口出ししない主義だ」


 そう言い残すと、リュカは別の用事に取りかかった。どうやら無愛想だが仕事はできるタイプのようだ。とにかく情報を手に入れたし、すぐにその教会とやらに向かおう。


 街外れに建つ小さな教会は、白亜の壁にステンドグラスが施された清楚な外観だった。扉を開けると中は厳かな空気で、祭壇の近くで金髪の美少女が祈りを捧げている。


「あれが……ユリウス……? 女性……? いや、名前的にはどっちでもアリか。とにかく声かけるか」


「すみません、そちらのユリウス・エリュシオンさん、いらっしゃいますか?」


 美少女はすっと振り返り、純白のローブがふわりと揺れた。サラサラの金髪ロングを編み込んだ姿は神々しくさえ見える。


「あら……私がユリウス・エリュシオンですわ。あなたは冒険者の方ですの?」


 驚くほど上品な口調に、俺は思わず目を見張った。こりゃあ、いかにも高貴なお嬢様って感じだ。


「そうなんだ。俺はレンっていう冒険者。回復魔法が得意な人を探してて……いや、まさかこんな可憐な方がとは思わなかった」


「あら、可憐だなんて……恥ずかしいですわ。でもお力になれるなら、喜んで」


 どうもこのユリウス、貴族出身らしいけど、街の病人を無料で治療して回るほどのお人好しだと聞いていた。実際、さっきも教会の一角で病人の看病をしていた様子を見かけたし、その優しさは本物のようだ。


「ぶっちゃけ、依頼料はあまり高くは出せないんだけど……俺と一緒に冒険に出る気はない?」


「もちろんですわ。私、もっと多くの人を救いたいと思っていて……あなたのような方なら、安心してお任せできますわ」


「よっしゃ! 一緒に来てくれるのか!? 助かるぜ!」


 正直、こんなに簡単に仲間になってもらっていいんだろうか……と少々心配になったが、ユリウスは柔らかい笑顔で「私こそあなたに興味があるんですの」と言ってくれた。どうやら俺の“虚無理論”にも関心があるらしい。


「それに、先ほどから不思議な魔力の波動を感じますわ。レンさま、もしかして特別な力をお持ちでは?」


「え、まあ、実はちょいとチートっぽいスキルがあって……」


「お話、ぜひ聞かせてくださいませ。私、わくわくしますわ」


 こうして、俺は頼もしいヒーラーの仲間を手に入れた。ユリウスの明るい笑顔と、少しでも俺の力を理解してくれそうな視線が心強い。

 早速二人でギルドに戻り、パーティの手続きを進めることにした。まさかこんな短期間で美少女の神官が仲間に加わるとは……やっぱりこの世界も捨てたもんじゃないな!

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