願い事
風馬
第1話
私は常日頃から「悪魔に遭遇したい!」と思っていた。どこかで悪魔と手を取り合ってランチでもしながら、ちょっとした会話を楽しむのが夢だった。
そんな思いが、次第に「どうしても会いたい」という欲望に変わり、そのうち「悪魔って、もしかして自分から呼べるのでは?」という大胆な考えに発展した。
そんなある日、骨董屋で見かけた本に目が止まった。古ぼけていて、ページをめくるたびに「ボロボロ…」と音が鳴る本。でも、何故かその本からは、微かに「悪魔」の香りが漂っていた。いや、香りではなくて…ただの埃かもしれないけど、どうしても「悪魔の香り」に感じられたのだ。
即座にその本を買い、家に帰ると、わくわくしながらページを開いた。私の直感は正しかった。どうやらこの本、悪魔を召還できる本らしい。
それからというもの、私は仕事を辞めて、完全に悪魔召還に没頭することに決めた。最初は家で試してみたけど、隣の家から「またあんたが変な煙を出してる!」と苦情が来るのが目に見えていたので、近くの山の洞窟に場所を移すことにした。
「これで万事OK!」と意気込んだものの、最初の数ヶ月は全く何も起こらなかった。ただ煙が出るだけで、それすら悪魔とは思えない、ただの湿気だった。でも私は諦めなかった。
そして、ある日、ついに煙の先に何かが現れた。…いや、正確には「物」が現れた。「これが悪魔か?」と思ったが、それはただの古びたカゴに入った小動物だった。しかも、その動物はものすごくかわいらしくて、どう見ても悪魔とは思えなかった。
その後も、動物たちは次々に召還され、どんどん変化していった。最初は小さなウサギやネコ、だんだんと毒々しい色のサソリやカエルが現れ、最終的には巨大なカバのような怪物が私の前に現れるようになった。それらの怪物たちは、どういうわけか私を見てニコニコと微笑んでいるのだ。
ある日、私はふと気づいた。こいつら、私に懐いてる!?おかしい、悪魔召還のはずが…いつの間にかペットのようになっているではないか。
そして数十年後、悪魔は一向に現れないままだった。代わりに、目の前にはまるでペットのように怪物たちがウロウロしているだけ。しかし、私はその姿にどこか「愛着」を感じてしまっていた。
このままでは怪物たちが「家族」になってしまいそうだ。でも、心のどこかで、悪魔が現れるのを待ち続けている自分がいる。それがどんな結果を招こうと、私は悪魔を呼ぶという使命を放棄できないのだ。
結局、悪魔はまだ現れない。ただし、怪物たちとは毎日楽しく過ごしている。それが私の幸せなのか、しばらく考え込むこともあった。でも、そんなことよりも、「悪魔召還」って結構面倒だな、ということを思い出すたびに、少しだけ笑ってしまうのだった。
この話、ハッピーエンドかどうかはあなたの気持ち一つ次第。でも、怪物たちと一緒に過ごすのも悪くないかもしれない…いや、むしろ結構楽しいかも?
願い事 風馬 @pervect0731
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