世界

 光に包まれて、体が溶けて、なくなって。


 気付いたらここ。


 何かポワポワした世界。


 とにかくアイを探さないと。



 変な街。


 逆さまの家があるし、道はぐにゃぐにゃに曲がってる。


 昼だか夜だか分かんない暗さだし、人っ子1人いない。


 アイは怖がりだから、やっぱり泣いてそう。


 早く行ってあげなきゃ。



「ひっぐ、すんっ…… ふぇっ、うぇぇぇ……」


 ……アイ?


「ひぇっ?!」


 アイ、だよね?


「〜〜〜っ、はぁっ! エイ……? どうして?」


 会いたくて、来ちゃった。


「何それ、もう」



「あ〜あ、何ですぐこっちに来るのかなぁ? アイの頑張りがムダじゃんねぇ」


 ごめんね。エイがこうしたかったの。


「寂しがりなんだから。それで、これからどうする?」


 東に行かない? 今度こそ。


「東ってどっち?」


 こっち、多分。


「テキト〜 まぁいいけど」


 うん、じゃあ行こう。



『エイ、アイ』


 え?


「誰?」


『大きくなったのね』


 「誰、この人たち……?」


 分かんない、けど、あれ? 知らない人じゃない……?


『2人とも、本当にごめんなさい』


 「もしかして、パパ、ママ……?」


 顔も見たことないけど、それなのに……


「なんでか、パパとママとしか思えない……」


『つらかったろう、これからは家族4人、ずっと一緒だよ』


 どうして、何で……


「パパ、ママ、本物……?」


『えぇ、アイ、いらっしゃい』


「うっ、うぁぁぁ〜ん! パパ、ママァ〜!」


 アイ、行っちゃう。


 そうだよね、パパとママ。


 夢にまで見た、ずっと無かったもの。


 手を繋ぐ親子、自然と目で追っちゃうもんね。


 もしいたらどんなだろう、『ご主人様』とどう違うのかって話したもんね。


 よかったよね、アイ。



 うっ、ぐっ、うぇぇぇ……


 だから、さ。


 ふざけんな。



『がはっ……』


『あぅ……』


「エ、エイ? 何してるの……?」


 何してるか、だって? こっちのセリフだよ……


「どうして撃ったの? パパとママだよ?」


 どうして、どうして?!

 分かんないの?!

 こいつらのせいだよ、エイとアイがこんなになったのは!

 こいつらがいなかったら、こんなにキズつかなかった!

 こいつらがセックスしなかったら、こんなに苦しくなかった!

 こいつらが捨てなかったら、こんなに泣かなかった!


 こいつらが、こいつらがぁ……

 いっちばん、エイとアイをバカにしてんだよぉ!


「エイ……」


 なのに、さ、行かないでよ。こいつらの方が大事?

 ずっとアイのために頑張ってきたのに、アイがいるから何だってできたのに。


「……」


 じゃないとエイは、何のため……?



「エイ、さぁ……」


 うっ……


「あ〜あ〜あ〜あ、もうやっちゃった。それにしても下手だね、どっちも生きてるじゃん」


 う、えぇ?


「『感動の再会』ってのを味わってみたかったのにさ、どうせ撃つ前に」


 撃つ、え、アイも?


「当然。覚えてもないパパとママなんて、今さら必要無いでしょ」


 じゃ、じゃあ、エイは……


「こんなより1億倍大事なんじゃん、言わせないで」


 あ、あ…… アイ〜!


「ちょっ、抱きつかないで!」



「ピストル貸して、アイが撃つ番」


 うん。


「これ、オキニじゃん。やりぃ」


 なんか出ちゃった。


「見ててね」


『エイ、アイ……?』


 「そういうワケだから、ごめんね」


『私たちは、あなたたちが……』


「あ〜 知らない知らない。エイとアイはね、銃に股開いて弾丸む売女になっちゃったの。アンタらの想像とは違うから」


『お、お願い……』


「Shut up! 来世は淑女に生まれるから、ね? ごめんあそばせ?」


 バン、バーン。



「撃っちゃったね、生みの親まで」


 育ててくれなかったからお相子でしょ。


「確かに。で、東に行くんだっけ?」


 うん、ゆっくり行こう、はい。


「え、何その手」


 繋いで行こ?


「うぇ〜?」


 さっきは握ってあげたじゃん。


「あれはその場の空気というか…… まぁいいけどさ、こんなの」


 ありがとう。



「こんなふうに歩くの、久しぶり」


 いつも外で撃ってばかりだったもんね。のんびりしていい気持ち。


「でもこの世界、不気味だよ。何が出てくるか分からないもん」


 大丈夫、全部撃つから。


「そういや吐けるようになったもんね。ならいっか。」


 そうそう…… うっ、うぇぇぇ……


「あ、オキニ。もう1個あったんだ」


 エイも持ちたくなっちゃった。


「名前も分からないのに、何かしっくりくるよね」


 エイとアイのためにあるみたい。


「そうかもね、この子らと一緒ならどこまでも行けるよ」


 うん、誰も彼も何もかも、この銃弾で壊してあげる。


「後悔しても遅いから。この弾見たら逃げるがいいよ」


 撃っとく?


「撃っとく、せ〜の」


 バン


「バーン」



◇◇◇



こうして世界に降り立った2丁拳銃アキンボは、あまたを撃ち抜き狩り尽くして、小さな覇者になりました。


おしまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Bullet Bitches @kamulo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画