決意

 う…… うん。


 ここ、は?


 上、穴空いてる。


 そっか、爆弾来て、床抜けちゃったんだ。



 アイ、アイ? どこ、アイ?!


「……エイ」


 いた、いた! ごめんね! もう大丈夫だから、吐けなくても撃つから、走るから! 早く行こう!


「エイ、あのさ」


 立って、立って!


「エイってば」


 何してるの? 早く、行か、ない、と……


「待ってよ。右足、この下」


 この瓦礫の、下敷き……? 今どかす! うぅ〜ん!


「エイの力じゃ無理」


 じゃあ撃って削る!


「ピストルで? 無理だって」


 でも、どうにかしないと……!


「貸して」


 ピストル? ど、どうするの?


「こっち撃つしかないよ」


 え? な、何で右足に?


「手、握ってて」


 ウソ、そんな……


「〜〜〜っ、ああああああ! ヴァッ、ヴアアアアアア! ぎいいいっ! あっ、あっ、あああははは!」


 え、あ、そんな、そんなそんなそんな、やだ、やだぁぁぁ! やめてよぉ、ねぇぇぇ! アイィィィ!



「ひゅ〜っ、ふしゅ〜っ、肩、借りるね」


 アイ、足、血……


「撃って焼いたからヘーキ。行くよ」


 うん、うん……



「ちゃんと当ててね。アイも撃つけど、エイが頼りなんだから」


 頑張る、当てる。だから、アイは無理しないで。



「聞こえた? 『バレットビッチーズを殺せ!』だって。その呼び方、やめてほしかったな」


 うん、うん。何だっけ、キュアーズ?


「キュア…… 忘れちゃった。まぁいいよ、今さらだもん」


 後で思い出してね、みんなにそう呼んでもらうから。


「できたら、ね」



「ぶっ、ぐぅぉっ?!」


 アイ?! 当たった?!


「かすっただけ、撃ち返して……」


 うぁぁぁ! ふざっけんなぁぁぁ! これ以上、何するってんだよぉぉぉ!



 はぁ、はぁ〜 ダメ、あっちもこっちもふさがれてる、どうしよう……


「ねぇ、どうしようね。あれ? エイ、いる?」


 いるよ! エイはここ! ずっと一緒!


「いたぁ。でも、どうしようもないね。エイが何吐いてもダメだったよ、これ。エイは悪くないね……」


 うぅん、エイのせい!

 肝心なところで吐けない役立たず!

 この口が、腹が悪いの!

 クソッ、吐けよ、吐け、吐け吐け吐け吐け吐け吐け吐け吐け、1番強いの、吐けぇぇぇ!


「エイ……」


 けっ…… あっ? うっ、おっ、おぶぇぇぇ……


「吐いた……? 何、コレ? おっきい、メカみたい」


 コレ、コレ…… 超電磁砲レールガン……


「へぇ、いいじゃん、撃ってみたい! エイ、時間稼ぎして」


 う、うん。



「キュイキュイキュイ〜ン! チャージ完了! エイ、どいて!」


 はい、はい!


「お返しさぁ…… ぶっ飛べぇぇぇ!」


 うぁっ?!



「すっごいね…… 真っ平らになっちゃった。ぶはっ、げはっ、ふしゅっ、ふしゅぅ〜」


 アイ?! 体、焼けちゃってる!


「モーマンタイ、もう1発くらい耐えられる……」


 やめてよ、ホントにぃ!


「アイがやりたいの、やらせてよ」


 やだぁ〜! もう、やめようよぉ〜!


「邪魔、抱きつかないで」


 離れ離れになっちゃうよ、いいの?!


「いいよ…… 別に」


 え……? 何、え?


「邪魔だって! 前からさぁ、エイのそういうとこ大っ嫌いだった! アイと同じ顔のくせしてウジウジしてるし、弱いし! ホントウザい!」


 エ、ウ、ア……?


「一緒にいるのはここまで。ふんっ」


 あ、痛い……


「そこで一生尻もちついてれば? バイバイ」


 ……



「さぁ、アイと一緒に地獄行きね、キッショいおじさんたち」


「東ね…… 行きたかったよ」



 がっ…… げぼっ、がふっ、ぷぁ。


 アイ……


 これ、レールガン…… じゃあ、そばのこの黒いのが……



 アイ、優しいもん。


 あのときのお返しで、今度はアイを守ってくれたんだよね。


 エイは分かってるから。


 で、1人で逃げればいいんだよね。今なら行ける、1人、1人で……


 ……


 ……


 あっ……


 あああ、ああああああ? あああああああああああああ!


 無理だよおおお!

 エイ1人でなんて生きたくないよおおお!

 アイがいない世界なんて、イヤ、イヤアアアアアア!

 アイのバカバカ、バカアアア!

 1人に、しないでよおおおおおお!


 

 ぐすっ、ひぐっ…… ダメ、動けないよ……


 一緒にいてよ、ねぇ……



 ぐうっ、うっ、うっぷ、ぶぇぇぇ……


 今さら、何……?


 ん……?


 ちっちゃいのに、おっきい。ちっちゃいのに、恐い。


 あぁ、何だぁ、1番強いの、これなんじゃん。


 こんなのもあったんだぁ。


 ほら、恥ずかしがらないで、出ておいで。


 お願いね、エイをアイのところに。


 寂しくて泣いてるかもだから。


 ピカッと光って、ドンと爆ぜて。

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