混濁

「バンバン…… 今日のも楽勝そう。はぁ〜 東行きかぁ〜」


 楽しみじゃない?


「じゃないことはないけど、何だかなぁ」


 もしかして不安? 知らない場所に行くの。


「何、舐めてる? 不安も何も無い、全部撃ってやるから」


 そう、お願いね。


「ふん」



 それで標的ターゲットだけど……


「全然いなくない?」


 建物全部探したのに。


「おじじ、ガセネタ掴まされたんじゃないの? 何やってんのさ」


 珍しいね、こんなの。


「もうここ吹っ飛ばそうよ。ロケットランチャーハナビ準備〜」


 アレ吐くの大変なんだから、待ってよ。うっ、うぐっ……


「む……? 外…… あっ?! エイ!」


 ごぇ?



 アイ…… アイ!


「ん……」


 アイ、聞こえる?! ねぇ!


「聞こえてるよ、うるさいなぁ」


 よかった、よかった……!


「そんな、ことより、さぁ……! エイとアイが吹っ飛ばされてんじゃん! どういうこと?!」


 ど、どうなんだろう?


「外、外の様子! どうなってる?!」


 外? 外なんて、さっきは何も…… あ?


「は?」


 え、これ、全部敵? こんなにいっぱい、向こう側まで埋まってる…… どこから……?


「多すぎでしょ、なんで……」


 おじじ、聞いてないよ……


「あぁ…… そういうことかぁ。はいはい、分かりました分かりましたっと」


 何が分かったの?


「分かんないの?! おじじに売られたの、エイとアイ! あんのクソジジイがぁ!」


 う、売られた? おじじに? 何で?


「知らない! けどこんな状況、それしかない! ハメられたの! 殺されるの、アイツらに!」


 ハメられた、殺される……? ちゃんとお仕事してたんだよ? 頑張ってたんだよ? なのに……?


「立って、突破するよ!」


 また、また……


「しっかりしてよ! 死にたいの?!」


 それは、イヤ……



「がぁっ! どんだけいるの、ヒマなの?! エイ、弾幕足りてない!」


 走りながら後ろに撃つの、しんどい……


「しんどくてもやるの!」


 分かった、分かったから……


「ぎぃっ! お替りもどんどん吐いて! おっつかない!」



 何でこうなったの?


 どうしてこのタイミングなの?


 せっかく行こうとしてたのに。


 これも神様?


 ひどいよ、こんななら、いらなかったよ。



「ふぅ〜っ、はぁ〜っ」


 アイ、大丈夫?


「いいから、吐いて撃って走って! 」


 うっ、うぎっ…… え? あ、あれ?


「何してんの?! 早く!」


 やってる、やってるよ。でも……


「吐いてよ! もう、じれったい!」


 あ、両手、おっ、おごぇぇぇ……


「は……? 何で、何も?」


 吐けなく、なっちゃった……


「『弾切れ』……?」


 かも……


「は……? は? は? かもじゃない、かもじゃないよぉ?! まだまだ敵いるよ?! なのにピストル2丁しかないよ?! どうすんの、ど〜すんのさぁ、これぇぇぇ!」


 分かんない、分かんないよぉ!



 昔のエイに戻された?


 いや、そういうときが来るかもとは思ってたよ。


 でもさぁ、どうして今なの、最悪だよ?


 与えて、奪って、何考えてるの、神様。


 バカにしてる?



「あ〜 もう! 逃げるしかないじゃん、どうにか! アイが頑張らなきゃ、アイが……!」


 ごめん、ごめん……


「行くよ! ここももう保たないから、次は……」


 ア


「エ」

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