行く先

「飽きた」


 飽きた?


「毎日こんな弱っちい人撃つだけ、つまんない」


 お仕事だもん、仕方ないよ。だったらロケットランチャーハナビ吐こうか?


「いい、ボスのおじじ、それですっごく怒ったじゃん」


 前に『誰が死んだか分からん!』って言われちゃったね。ならスナイパーライフルヒッキーで遊ぶ?


「いい、遠くからチュンチュンしても楽しくない」


 じゃあ他にしたいことある?


「……パフェ食べたい」


 パ、パフェ? あのデザートの?


「それ以外何があるの、行くよ」


 あ、ちょっと。



「トロピカルフルーツボンバイエチョコアソートマジカルミラクルアイスクリンウルトラバーストクリームエキストラクリティカルソースデラックスアダマンタイトパフェ、2つ」


 エイはチョコパフェでいい、普通の。


「遠慮なんかしないで」


 この口じゃ食べづらいから、ね。


「つまんないの」



「ん〜 おいしい! 仕事終わりは甘いものだね」


 だね。


「ひと口欲しい?」


 う〜ん……


「いらない……?」


 いる、ちょうだい。


「仕方ないんだから、はい、あ〜ん」


 あ〜んっ、ぷぅっ…… 甘っ…… おいしいよ。


「でしょ? 次はコレ頼んでよね」


 考えとく。



「お腹いっぱい。眠くなってきちゃった」


 エイも、早く帰ろう。


「帰りたいけど、さぁ……」


「あぁ、尾けきてるね…… 5人かな」


「はぁ〜 せっかく気分よかったのに、空気読めないヤツ大っ嫌い」


 うぼぇぇぇ…… さっさとやろう、はい。


「今はツインバレルショットガンドンドンの気分かな。そっちはエイが使って」


 もう、ぎゅっ、ごっ、おぇぇぇ……


「よいしょっと。じゃあ即鏖スピードランね、いい?」


 アイアイサー。



「ねぇ〜! 服が真っ赤っ赤になっちゃったぁ〜!」


 ドンドン撃ったもん、そうなるよ。


「クリーニング! 出しといて!」


 はいはい。



「今日も疲れたね、お休み」


 ねぇ、アイ。


「ん?」


 お金、結構貯まったよね。


「それが?」


 どこか行かない?


「旅行? いいよ」


 まぁ、あの、旅行でもいいんだけど。


「何、ハッキリして」


 引っ越さない……? 殺し屋ヒットマン辞めちゃってさ。


「本気……?」


 わりと。


「はぁ〜 やっぱりイヤだったんじゃん」


 違う。もう危ないことしなくていいなら、しない方がよくない?


「楽しいけどね」


 でもいつどうなるか分からないもん。たまにケガしちゃうでしょ? 死んじゃったらどうするの?


「心配しすぎだって」


 アイと離れ離れになっちゃう可能性、ちょっとでも下げたいの。


「えぇ〜?」


 アイはエイと離れても平気?


「ない。絶対、何があっても離れない」


 でしょ。だったらさ、ちょっとのんびりしようよ。


「う〜ん」


 遠いところで見たことないスイーツ食べよう。ね、お願い。


「う〜ん、う〜んうんうんうん…… あぁぁぁ〜〜〜!」


 うぇっ? びっくりした。


「も〜うもう、分かった分かった、分かったちゃんだよ」


 いいの? いいんだね?


「どうせイヤって言ったら『もう吐かない』って言うんでしょ?」


 バレた? エイのこと分かってるね。


「あったりまえ。あ〜 卑怯だよ〜 ヒマな人生になっちゃうなぁ」


 ヒマかどうか、行ってみないと分かんないよ。


「いつ行く?」


 次のお仕事終わったら、すぐ。


「急〜」


 ダメ?


「いいよもう、何でも。場所のアテは?」


 とりあえず東の国に。


「東?」


 おじじの知り合いがいるんだって。その国、人が多いし土地も広いから、身を隠すのにピッタリ。


「ふ〜ん、平和そう」


 でも軍隊はあるし、戦争もちょいちょいしてるみたい。


「いざってときはお仕事できるんだ、いいんじゃない?」


 うん、じゃあ起きたら準備しようね。


「はいは〜い」


 お休み。


「ねぇ……」


 うん?


「どこでもいいけど、エイの銃、撃たせてよ? 好きなんだから」


 もちろん、動物とか撃ちたいね。


「ホッキョクグマがいい」


 極はキツいかな……。

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