第3話 幻聴のささやき
幻聴――それは統合失調症を象徴する症状のひとつです。しかし、この「聞こえる声」がどれほど日常生活に影響を及ぼすかを理解している人は少ないかもしれません。幻聴はただの音ではなく、心の深い部分を揺さぶる存在なのです。
私の場合、幻聴は突然始まります。特に一人で静かにしているときや、気分が落ち込んでいるときに強くなることが多いです。部屋の中で本を読んでいたり、食事をしていたりする平穏な瞬間に、誰かが耳元でささやくような声が聞こえるのです。
「失敗するに決まっている」
「誰もお前を必要としていない」
「やめてしまえ」
こうした声は、まるで私自身の弱い部分を引き出し、攻撃するかのようです。それが幻聴だと頭ではわかっていても、心がそれに抗うことは難しい。時には「自分の内なる声」だと思い込んでしまい、自分自身を否定する材料にしてしまうことさえあります。
さらに厄介なのは、声がただ聞こえるだけでなく、現実に影響を及ぼすことです。例えば、道を歩いていても、知らない誰かが私を嘲笑っているように感じたり、通りすがりの人の声が私への悪口に聞こえたりします。そのせいで、外出するのが怖くなり、家に引きこもってしまうこともあります。
幻聴は生活を一変させます。それはただ「聞こえる」だけではなく、心を侵食し、自信を失わせ、孤独感を強めていくのです。そして、その孤独感がさらに幻聴を強めるという悪循環に陥ります。
でも、そんな中で助けになったのは、信頼できる人に「幻聴が聞こえる」と打ち明けられたことです。最初は勇気がいりましたが、「それは本当に大変だね」と共感してくれる人がいることで、少しずつ幻聴との距離を取ることができるようになりました。
幻聴は完全には消えません。それでも、それに圧倒されず、どう向き合っていくかを少しずつ学んでいます。幻聴は私の一部であり、完全に否定することはできませんが、受け入れることで心の負担を軽くすることができるのです。
次回は、「傷つきやすい心の内側」についてお話しします。小さな言葉や出来事で深く傷ついてしまう私たちの心、その繊細さとどう向き合っていくかを考えていきたいと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます