第2話 頑張りすぎてしまう心
統合失調症とともに生きる日々は、「頑張ること」との戦いでもあります。私はいつも、「普通に見られたい」「迷惑をかけたくない」という気持ちが強すぎて、自分を必要以上に追い込んでしまいます。その結果、頑張りすぎたあとに心も体もボロボロになり、何もできなくなる日がやってくるのです。
ある日、幻聴がひどくてほとんど眠れないまま仕事に行ったことがありました。耳元で「お前は失敗する」「やめたほうがいい」と繰り返される声に苛まれながら、なんとか普通を装おうとしました。でも、その日は些細なことで上司に注意され、その言葉に自分が完全に崩れてしまいました。
注意された内容はごく当たり前のことだったのに、私の頭の中では「やっぱり自分はダメな人間だ」という思いに変換されます。そしてそれを取り繕おうと、さらに頑張ろうとするのです。けれど、頑張れば頑張るほど、心はどんどん苦しくなっていきます。
そんな状態が続くと、やがて体が拒否反応を示すようになりました。起き上がるのも難しく、布団から出ることすらできない日が増えたのです。それでも、周囲の「なんでこんなに休むの?」という視線を気にしてしまい、自分をさらに責めてしまう悪循環が続きました。
「もっと力を抜いていいんだよ」
そんな言葉をかけてもらえたとき、私は涙が止まりませんでした。その言葉が心に届いたのは、きっと私自身が「頑張らなくてはならない」という固定観念に囚われていたからです。
頑張ることは決して悪いことではありません。でも、統合失調症を抱える私たちにとって、それは心をすり減らす危険な行為にもなり得ます。大切なのは、自分の限界を知り、無理をしないことを自分に許すことです。
統合失調症を抱える人が「怠けている」と思われがちなのは、本当に辛いことです。実際には、何倍ものエネルギーを使って日常を乗り越えているのです。私も含め、多くの当事者が「普通」に近づこうとして必死に頑張っていることを、少しでも知ってもらえたらと思います。
次回は、「幻聴のささやき」が私たちの生活にどのような影響を与えるのかをお話しします。見えない音に支配される日々、その現実を知ってほしいと思います。
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