第5話

僕らはあの時からまだ会っていない。人族の国とは一進一退の攻防を続けている。今のところ僕達が優勢ではあるが、そろそろ勇者が出てくるはずだ。僕は彼女に殺されても構わない。それが僕の人生だったんだから。


「魔王様!!一つの砦が勇者によって落ちたとの報告が!!」

ついにきたか。僕は皆に命令を出す。


「皆に命令だ」

「「「「・・・」」」」


「皆、亡命しろ。勇者には勝てない。僕が勇者を引き止めている間に、絶対見つからないところに隠れて」

「「「「な!?」」」」


僕がこんな事言うのが心外だという顔をしている。

「いけません魔王様!!」

「しょうがないんだ。これは僕と勇者の決闘だからね。皆は早く逃げてね。街の皆にはそう知らせておいて」


「魔王様!!私もここに残ります!!」

「私も!!」

「オラも!!」

「私も!!」

「俺も!!」


「駄目だ!!」

僕は彼女達が残ることを拒否した。

「僕は皆には生きてほしいんだ。これが僕の切実な願いだ」

「「「「・・・」」」」

皆泣いている。僕も泣きそうだ。


「よろしく頼むよ」

「「「「・・・はい!!」」」」

こうして、街の魔族亡命が始まった。あるものは流浪し、あるものは人族に化け、あるものは魔族の受け入れができるところに移住した。残るは僕と最初に会った彼女だ。


「君も早く逃げな」

僕はそう言った。

「嫌です!私も一緒についていきます!!」

彼女は頷きもしなかった。


「はあ、必ず生きてよね?」


「・・・もちろんです…」

その間が怖いな、と思いながら、彼女と話した。


(そろそろ勇者が来るかな?)

僕は心の何処かで勇者が来たことがわかった。

僕は彼女と向き合った。


「魔王様?」

「・・・すまない」

「えっ・・・」


僕は彼女の意識を刈り取った。僕は彼女を影の人物に預けた。

「君も早く逃げてね?」

「ハッ」

そう言っていなくなる彼女と影。


勇者が魔族の国、ジャヒルドに入ってどれくらいしただろうか。

そう思ってたら、門が開いた。魔王城の門外開いたのだ。


僕は彼女がきたのだとわかった。


彼女と会うのも最後になるなと思いながら、彼女がここに来るのを待った。

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