第8話 カエデ少尉の情報収集

5日目 モリヒコはある提案をした。ムスビ、コノハとカエデ、フミカのいる朝食時。「今日、国立動物園に行ってきます。侵略的外来生物の展示企画を開催しています。今後もスクナビコナの人が侵略的外来生物に遭遇する事があるかもしれない。僕も何か手助けができないかと思います。まず実物を見てみたいと思います。グリーンアノールがいるかはわからないけれど。」そうモリヒコは話した。

 【あんな危険なものを展示しているのか。】とカエデ。「展示会ですから。」とモリヒコは笑う。【私も行く】とカエデが言う。【情報が欲しい。】「でもまだ治療中なればモリヒコに任せては?」とムスビ。【私の部隊は壊滅した。今後の為に情報が欲しい。もしそいつがいるなら、観察できる良い機会だ。】【しかし体調は完全ではありません。】フミカ曹長が答えた。

 そうそう。とモリヒコは思った。【私がついていきます。】え?「でも、まだ5日前の出来事ですよ。無理でしょう」モリヒコがストレートに言う。【身体なら大丈夫だ。それに王国はいかなる戦いにおいても、お互いが助け合うことで生き抜いてきた。同時にその仲間の死も見てきている。見たくはないけれど無理してでも見ておく必要があると思う。】「どうしてもいかれますか?」コノハが聴き返すと【行く!】カエデが答えた。「ではモリヒコ、彼女たちができるだけ楽に移動できるよう準備なさい。」コノハが言う。誤算だった。

 

 「これを!……あれ?」30分後にモリヒコが戻ってきたとき、二人は結界のドールハウスの中で見えなかった。

 モリヒコが持ってきたのは、10ℓクラスのビジネスリュック。二人は見えないがまあ聴いてるだろうとモリヒコが説明を始める。この外についているケータイ入れポケットに入ってもらいます。立ってちょうどよい位の深さでお二人が一緒に入れる様サイズ調整しました。立っているのは少し辛いですが、展示会場内の1時間位でしょうから。ポケットの底に結界石を入れるスペースを作ってます。眼のあたりにスリットを作りました。

 説明きいているのだろうか。

 【コノハ、良い!】カエデがテレパシー。【素敵です。肌触りもよくて、とても楽です♪】とフミカ。

 コノハが作っていた服ができたようで着替えていたらしい。二人が出てきた。アイボリーの絹のスラックスと多分絹の白いシャツ。下着も新しく作ったらしい。

 モリヒコが咳払いすると、【大丈夫。聞いていたぞ】とカエデが答えた。モリヒコはリュックのポケットを開けた。カエデがポケットに入りフミカも続く。コノハが、ジュエリーボックスからもう一つ勾玉まがたまの結界石をだして唱えた。二人の姿は消えた。結界石をリュックのポケットに入れる。モリヒコはリュックを前に背負って立ち上がって歩いてみる。【おーゆれるなー。ゆっくりゆっくり。】と声が聞こえた。【では行ってみましょう 】モリヒコが言う。「慎重にね。目的がすんだらすぐ戻るのですよ」とコノハがいった。【カエデさん、フミカさん、靴下と靴は間に合わなくてごめんなさい】コノハが言う。【今日はポケットの中だから素足でいいし気持ちいいです。】フミカ。【モリヒコ、くれぐれもよろしく頼みますよ。】コノハがオープンチャネルでテレパシーする。【頼むぞ。モリヒコ!】カエデが言う。冷静なカエデにしては妙に明るい。あなた怪我人ですよね?と思ったけど、気持ちがリラックスするのは大切!と思い直した。

 軽自動車の中では、助手席のチャイルドシートへ固定したミニベンチに乗ってもらっていた。

 シートベルトも彼女版サイズで作ってある。もちろんベンチの真ん中は結界石がおいてある。

 動物園の駐車場につくと、リュックのポケットに二人が移動する。「いよいよです。」前リュックしたモリヒコは、動物園に入場し展示室に入っていく。

「侵略的外来種てこんなにいるのか?」思わず声に出る。生息環境も再現された展示場に入るや驚きの連続だった。

 入り口を入るとすぐに侵略的外来種の植物群の実物。被子植物、哺乳類、鳥類、魚類、昆虫、両生類そして爬虫類 最後の爬虫類のコーナーに、グリーンアノールはいた。【説明書きを読んでもらえないだろうか】カエデがテレパシーしてきた。今は冷静に穢れに対処しようとしているカエデとフミカの感じが伝わる。二人とも強い。とモリヒコは思った。「エッ?今?」小声でモリヒコが言った。【見ながら聞きたい】カエデがテレパスしてくる。えー恥ずかしいと思いながらも、やってしまうのがモリヒコだった。独り言のように説明を読み始める。【声小さいんだが……】とフミカ。

 からかってないだろうな?と思いつつ、声を少し大きくする。なんとなく他の入場者が、遠回りに流れていく気がしたが、まーいいか。

 【なるほど。ありがとう。その隣の蛇の説明も読んでくれないか?】「えー」思わず声が出てしまった。「恥ずかしいんですけど……」【何を言う。展示物にどう接しようがいいではないか。他人がどう思おうがそれは他人の問題であろう。】「ハー。わかりました。」

 開き直ったモリヒコは、普通の声で説明を読み始めた。 結局、なんか結構な数の説明を声を上げて読まされていた。幸い会場は見学者の会話でざわついていて、警備員に注意されることはなかった。

 カエデの様子を気にしながら、そして(多分)独り言のおかしな人に思われながらモリヒコは会場を回った。

 カタログを購入して会場を出た。 

 「体調はどうですか?」モリヒコは尋ねた。【少し傷が痛むくらいかな】カエデが言う。【でも少し疲れているようです。そろそろ会場を出て座った方がいいです。それにおなかが減りました。】とフミカのテレパス。「そうだ。1日6食でしたね。母が作ったお弁当を車で食べましょう」モリヒコはそういうと車に戻り、コノハの作った二人のミニミニランチと自分用のサンドイッチを食べた。

 新鮮な情報で頭は活性化していた。なんとなくだが、もし戦うなら……というアイデアがあった。

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