第2話 ミカ軍曹と神官
海岸近くから参道の石段がある「だいわ神社」。宣伝などもせず話題作りなど無縁の神社。むしろ目立ちたくないです!という意志を感じる。御朱印だってごくごく普通。が、歴史を感じる重厚な拝殿と大きな本殿。本殿には日本の最初の神々
「転移したようね」低い天井を見つめながらミカはそういった。左手はまだカエデの髪を握っていた。
部屋の壁全体が淡く光って暗闇が明るくなってくる。大きな部屋だとわかる。天井は低いが百人は入れそうな部屋に二人はいた。足元の方の壁に登り階段が見える。汗が急激に冷える。転移の影響で気持ちが悪い。突然大きな不安に襲われる。健康な身体でこうなのだ。カエデは大丈夫なのか?!
血の匂い。カエデの出血は止まっていないし顔は青白い。カエデの体力は相当奪われている。
「階段を登ろう。」呼びかけにもカエデは動かない。
「カエデ血の気多いね」何を言ってるんだか。でもしゃべっていないと不安だった。転移の悪寒も止まらない。階段は天井まで続いている。出口らしき扉がある。ミカが近づくと自然に扉が消えて外が見えた。ミカは顔を出す。そこは薄暗い大きな儀式を行う様な部屋だった。躊躇せずカエデを背負って乗り出す。二人が出てきたのは円状の石。それは石に開いた穴だった。二人が石の中からでると穴が閉じた。薄暗い周りを見渡してギョッとする。目を凝らすと高さ1メートルほどの龍のような蛇のような彫り物六体に囲まれていた。
これが転移門か。本国へ転移するとき以外は、いったん石の中にある部屋へ転移する。突然現れて
足音がする。ミカは石を囲んでいる像の1つに隠れた。
朝6時。神職の為、宮司の
「本殿ですね。」 ムスビはそういうと社務所を抜け本殿へ向かう。「訪問でしょうか」妻も続く。とすれば20年ぶりであろう。社務所から拝殿へ。そこから本殿への通路を抜け本殿扉を開く。だいわ神社の本殿は特殊。その神座は直径5メートルあろうかという円柱の巨石だった。 本殿は、
目を凝らすと、石の中心あたりから、本当に小さな赤い点が1つの龍まで続いていた。
「血痕?」。
隠れていたミカは意を決した。このままではカエデは死ぬ。カエデを床に下ろした。
転移門周辺は結界がない。私たちは丸見え。いるのがヤマトの神官なのか確認しないと。でも血痕がある。すぐに見つかるだろう。確認なんかしてられない。カエデが死んじゃう!。
ミカは像から飛び出す。目の前に二人の人間がいた。ムスビとコノハだ。
【我はヤマト王国スクナビコナ族の第一王女ミカ。
神官だ。ミカはほっとした。
【仔細はあとで。重症の怪我人がいる。助けてほしい。】ミカはテレパシーを送ると像の後ろに向かう。
カエデを確認したコノハは絹張りの扇子を懐からだして開き、カエデを両手でそっと扇子に載せた。
カエデ、ミカは身長5センチメートルあまり。小さな神スクナビコナの
もともと日本列島は、
結界は、葦原中津国の人間からスクナビコナ族が見えないようにできる空間で、列島を
朝7時
晴れ渡った水平線から登った太陽は神社の石段を強く照らし、ダイワ神社拝殿にも強い陽が差し込んでいる。カエデはムスビの自宅の居間で寝かされていた。意識は取り戻さないが出血は止まり、体を羽毛の薄がけで温められていた。
「ミカ殿 簡単な食事を用意しました。」コノハがカエデのそばを離れない王女に声をかけた。スクナビコナ族への対応を知っている。
スクナビコナ族は、量は少ないが日本人と同じ食事をする。 その代わり1日6回は食べる。小さいがゆえの体温維持のためだ。
数口白米の米粒をたべ、水を飲み転移の後遺症の悪寒も消えた。とすればカエデの転移後遺症はまだ相当残っていると思った。心配を紛らわせたく、ミカは二人に転移の
【第1分隊員が転移をすれば必ずここに来るだろう。そして二人。分隊は全滅したと考えるしかない。近くにいた第2分隊のメンバーはどうしただろう。彼らも緊急転移したはず。】ミカが独り言ちる。コノハとムスビは思いつく。
「確証はありませんが・・・・・この神社の神体山だいわ山の奥の院にも転移門があるのです。」
【!】ミカが目で訪ねる。コノハはムスビと目を合わせてから、ケータイで電話を掛ける。10回以上鳴らしただろうか、息子です。とコノハがミカに伝える。
「モリヒコ?奥の院にいるのよね?」「そうですけど、小人に捕まってます。体が重くて動かない。夢ではないと思うんだけど。どう思う?」なんかぽわーんと彼女の息子は答えた。
「あなた、そのまま捕まってなさい。今から行きます。」コノハがいう。
コノハはミカを見る。ミカは悩んでいる。
ムスビがいう。「私と行きましょう。奥の院にいるのは我が息子モリヒコといいます。ですがスクナビコナ神とその王国のことはまだ話しておりません。」
「カエデ様は私が見ます。」コノハ。
カエデが一番心配だけれど、こういう時はとにかく動いて道を探すしかない。カエデだったらそうするだろう。とミカは思った。
「よろしく頼みます」ミカが答えた。
ムスビはケータイを取り出した。
「早朝にすまんが、私は今から奥の院の社務所に行ってくる。あとを頼みたい。それからコノハ
「行きましょう。おそらくミカ様の部隊がいるのでしょう。」とムスビが言った。
いやあたしの部隊でなくカエデのだけれど。そう思いつつミカは首を縦に振った。
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