【カ】 外国人の方がいらっしゃったら……

【美香】 百海ちゃんの働いていたお店って、外国人の方がいらっしゃることはあったの?


【百海】 うん。駅前だし、小さいけど観光地も近くにあるところだったからね。そんなにたくさんいらっしゃったわけではないけど。


【美香】 そっかぁ。じゃあ、そういう時は接客はやっぱり英語で?


【百海】 うん。と言っても難しいことが言えるわけじゃないから、最低限の英語での接客だったけどね。


【美香】 そうかぁ。内容的にはどんなことをお客さんとやりとりしたの?


【百海】 そうねぇ。メインは注文をお訊(き)きしたり、会計での会話だったりだわね。この辺はほとんどが決まり文句だから、接客英会話の本を買って少し勉強してたの。会計のあとに

 Have a nice day!(よい一日を!)

 とか添えて差し上げると、とても喜んでもらえたわね。


【美香】 ああ、そういうセリフって英語独特で、しかもコミュニケーションを円滑(えんかつ)にするには欠かせないものだものね。難しい会話をしなければならないシチュエーションってなかったの?


【百海】 うーん、たまにはあったわね。

 こんなことがあってね。外国人の若いお客さん5名くらいで来られて、テイクアウトの注文をお訊きして、商品をご用意したら、いきなり注文を変更されて。

 英語がわかる同僚が少ないからあたしが対応したんだけど、問題は、会計をすでにクレジットカードで済まされててね。そのキャンセル処理をわかる人間がいなくて。で、お客さんには待っていていただいたんだけど、間が持たなくて、いろいろあたしが時々声をかけに行ったの。例えば

「ご注文は○○と△△で間違いないでしょうか?」

 とか

「今、クレジットカードのキャンセル処理をしていますので、もうしばらくお待ちください。」

 とかね。こんな長い英語、普段なら出てこないけど、これもあたしの脳の作用なのかな、この時はなぜかすらすらとできてね。

 ともかくそうやって間を持たせてるうちに、同僚がキャンセル処理できて、会計し直しができて、無事お客さんにお帰りりいただいた、ってことがあったの。


【美香】 そうなんだぁ。よくやったわね。でも、いくら脳の作用でとっさの対応がしやすくなっていたとはいえ、百海ちゃん、なんでそんなに英語知ってるの?


【百海】 実はね、あたし、高校の時に、BBKのラジオ英語番組を毎日聴いていて、夢中になっていたの。その時に覚えたフレーズの組み合わせがぱっと出てきた感じだったわ。


【美香】 そうなのね。大昔の勉強であっても、楽しんでやっていたことは、のちのち活きてくるものなのね。


【百海】 そうみたいね。ホント、昔頑張っといてよかったわ。それプラス、働いているときの接客英会話の勉強で、外国人のお客様への対応はだいたい何とかなったわ。


【美香】 そっかぁ。私も英語、勉強しておいたほうがいいかなぁ。イタリア語は幸い話せるようになったけど、ほかの国の人たちと、ラジオパーソナリティとしてお話しする機会も、正直かなりあるからね。今は完全に通訳に頼ってしまってるけど、将来的には簡単な会話くらいはできるようにしたいわね。


【百海】 うん。イタリア語がこんなにぺらぺらなんだから、英語だってその気になればできるわよ。


【美香】 そうね。INKにもラジオ英語番組あるから、私もやってみようかしら。


【百海】 うん。ふたりでやってもいいわね。あたしも今もレストランで英語必要なこと多いしね。


【美香】 いいわね。じゃあこの番組終わったらテキスト買いにいこうか。


【百海】 うん! 賛成!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る