【オ】 電車が止まったら……

【美香】 百海ちゃんが働いていたお店って、確か駅前にあったのよね。電車が止まったりしたら、お客さんすごかったんじゃない?


【百海】 そうね。しかも帰りのラッシュの時間帯に当たるから、もし電車が止まってしまったらとんでもないことになってたわ。客席は一瞬で満席になってしまうし、うちはテイクアウトもある程度はやってるから、お持ち帰りで並ぶお客さんもたくさんおられたわね。


【美香】 そうかぁ。でもそんなとき、百海ちゃん、大丈夫だったの? 症状とか出てしまわなかった?


【百海】 それが、そういう時は不思議と大丈夫でね。むしろそういう時は、なんかワクワクして元気でてきてね。とっても楽しい気分になるから症状なんてかけらも出てこないのよ。


【美香】 そうなんだぁ。それはすごいわね。でも業務の方はどうだったの? ものすごい忙しさになるでしょ?


【百海】 うん。でもそのとてつもない忙しさがかえってあたしには合ってるみたいで。普段の何倍力も力が出てきて、てきぱき業務をこなすことができるのよ。問題が出てくるとしたら、同僚のみんなはてんぱってるから、あたしにかなりの無理難題を吹っかけてくることかしら。


【美香】 そうよね。普通の人はそうなるわよね。そんな中、百海ちゃんはどう対処してたの?


【百海】 そうねぇ。無茶苦茶言うなぁ、って思いながらも、自分の業務とみんなの言うことをなんとかぎりぎり両立させながらこなしていたわ。


【美香】 そうかぁ。それで電車が動き出すまで持ちこたえることはできてたの? 場合によっては結構長い間、電車って止まってるわよね?


【百海】 うん。けっこうきついシチュエーションの時も多かったけど、何しろなぜかとっても楽しい気分になるから、苦にならず乗り切ることができてたわ。あたし、脳の病だから、ひょっとしたら脳から変な物質が出てくるのかもしれないわね。


【美香】 はは(笑)。もしそれが本当だとしたら、病気も悪い面ばかりではないってことよね。


【百海】 そうかもね。

「何かメリットがあるからそういう病気になってる」

 っていう説もあるしね。

 それはともかく、あたしは忙しければ忙しいほど本領を発揮するタイプなのかもしれないわね。


【美香】 そうかぁ。それは仕事においてはとても大きな武器になるわね。そんな百海ちゃんなら、たとえ病気を抱えていようとも、どんなシチュエーションでも乗り越えられるのかもしれないわね。



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