君の頭からつま先まで
ゆずリンゴ
愛おしい人
高校生で身長は160cm弱、体重は48kgだった。
純粋で、綺麗な容姿に性格を持った彼女はいつの間にか変わってしまった。
親から貰い受けた純黒で艶のあった髪色はどこに行ってしまったのか、今では濃い茶髪に染まったそれはボサボサだ。
それに行為をする時に何度も引っ張ったのか、はたまた……とにかく髪が傷んでいる。
顔だってそう。
一重でキリとしていた顔立ち、しかしそれは二重に整形され涙袋のオマケまで着いている。丁寧に化粧で隠されていたが目の下のクマも凄い。
肌も荒れている。無視かはなかったニキビ……だが、年齢が上がるにつれこういった物は増えていく。これも成長した証だ。
鼻、これもまた顔を引き立たせる物であるが整形され、元の可愛らしい丸みはなく、スラリと整った。
口は、何度も噛んだ跡がある、血が滲んでいる。どうやら……力強く、噛んでいたらしい。
首には至る所に汚された跡が残っている。
身体は、悲しいほどに細い。元から細かったが…これも彼が起こした心理的変化の1つだろうか。太れば、それもまた変化……彼女は変化を恐れたのだ。
もうとっくに、原型が無くなる程の変化をしているが、それに彼女が気づくことは無いだろう。
あぁ、腕にはいくつも傷が入っている。
まだ出来たばかりのもあれば、そうで無いものも多く残ったリストカット痕……それはそれは綺麗だった腕だったのに、勿体ない事をしたものだと思う。
手、手は相変わらず白いままだ。
―――しかしキラキラと光る爪は違う。足の指もそうだが、爪にまでおめかしする……
それは自分が満足するためか、誰かに見てもらう為なのか。
そうだ、彼女は靴を脱ぎ、
昔からは考えられないような、いけない子だ。
そして下半身は、それはそれは変化している。既に、何度も使われたのだ。
こうして見ると、体の全体その全てが余すとこなく、変化を起こしている。
それは人間の生理的な変化ではない変化。
最早、純真であった彼女とは別の人間だ。
かの有名なテセウスの船に、「ある物体の構成パーツを全て置き換えた時、過去のそれと同一であるか」というパラドックス問題があるが、正に彼女がそれだ。
これは白菫木香という名前の、そうでない何かと言っても過言ではない。
……それまでに、頭からそのつま先まで彼女は変化したのだ。
しかし、変わってしまった君も僕は受け入れよう。たとえ内面まで変わってしまったとしても。僕は今の君の全てさえ愛そう。
君が小さな頃から今に至るまでの幾重もの変化を見届け、その全てを愛した僕だから。
それに、こんなにも変化する君であれば昔のよう戻ることも、また可能だろう?
ほら、実際にさっきまではあんなにも暴れ、唇から血が出るほどに強く噛んでいたのに、もう既にそれをやめて僕に身を任せる程おとなしくなるまでに変化したのだから。
待っていて、次に君を変えた元凶をどうにかするから。
破天荒で、サッカー部のイケメン君。
彼の誰にでも優しく、引っ張ってくれる所に君は惹かれたんだ。
なら、彼もまた変化させよう。
内気で、人間を誰1人信用できなくなるように。
そうしたら、今度は僕が君を一から、作り替えてみせる。
―――そう、頭からつま先まで、昔の純真な君に。
君の頭からつま先まで ゆずリンゴ @katuhimemisawa
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