1日目

 まずはどんな世界観にするかから決めようと思う。

 資料を見る限り現存している異世界は全部で三十二。うち二十が中世ヨーロッパがモデルとなっているいわゆるナーロッパ系で、七が現代系、三が近未来系で、二がポスト・アポカリプス系。あるんだポスト・アポカリプス系……。けどそこから徐々に復興している設定みたいだから過酷すぎる環境ってわけじゃないみたい。


あとは三十二の世界のほとんどが魔法要素を取り入れているっぽい。魔法のない世界は六つ。現代系の二つが魔法ではなく超能力を取り入れていて、近未来系はどこも科学が発展した世界なので魔法なし。ポスト・アポカリプス系も一つは科学の発展から滅亡って設定なので魔法なしみたい。


 うーん、悩むとこだけど魔法は取り入れたいかも。だって異世界転生で期待することって魔法があることだよねって彼氏も力説してたし。あとは世界観も需要ありそうだからナーロッパ系かなあ。自分の好みってなると現代系なんだけど、顧客、いわゆる転生者の需要を考えるとありふれたものになっちゃうんだよねえ。現にキャパオーバーになってる異世界はどこもナーロッパ系だし。


 とりあえず企画書の世界観設定に魔法のあるナーロッパ系と書き込む。魔物の類とかもきっとあったほうがいい。なんかアニメ見てると大体いるし。とはいえ魔王とか魔族を倒すってのはちょっとなぁ、人種差別感あって気がひける。なのでその辺りはなしにしよう。


 それからどの程度中世ヨーロッパに設定を寄せるかだけど、現代を生きた人が糞尿が窓の外から降ってくるような世界観に耐えられるとは思わない。衛生観は出来るだけ現代に寄せよう。流石に水洗トイレとかが中世ヨーロッパにあるのはおかしいけど、ポットン式で肥溜めから肥料を作る感じにすればいけるんじゃなかろうか。風呂は各家庭にはないけど公衆浴場がある設定にしよう。まぁ、衛生状況に関してのおおまかな設定としてはこれぐらいかな、現代知識でチートしたいタイプの人も多分いるからあまり作り込みすぎるのもよくないだろうし。


 あとはスキル制、職業制を採用するかどうかだけど、正直職業制は採用したくない。こっちがあなたはこの職業がいいですよー、ってしちゃうと、やりたい仕事もできなくなっちゃうもんね。やるならスキル制だけど、スキルも出来れば自分がやったことがスキルとして生えてくる感じがいい。個人の努力次第でスキルがいくつでも増えるほうが好きだ。だって怠惰な人に有能なスキルが生えてるとムカつくし。


 企画書にその辺をまとめて、一応突っ込まれた時のためにきっちりと理由も記載しておく。想定問答も考えといたほうがいいかな。仕事で鍛えたプレゼン力が火を吹く機会はあるんだろうか。ないといいなぁと思いながらその日の業務は終了した。

 

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